万引き家族(2018)

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1988巣鴨置き去り事件を題材にした 「誰も知らない」(2004)

1971年赤ちゃん取り替え事件を題材にした そして父になる(2013)


そして「万引き家族

 

2014年、大阪府吹田市の釣具店で両親が店員に質問攻めにしている最中

中学生の長男(14)と小学生の次男(12)と長女(9)が

釣り具セットを店外に持ち出していたことが

防犯カメラの映像により発覚し両親を窃盗容疑で逮捕

防水工の父親(36)と母親(33)は子どもたちの万引きが見つかるたび

「うちの子がご迷惑をかけてすみません」と謝罪し

警察への通報を免れていた家族と

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2010年東京都足立区の民家で戸籍上「111歳」の男性の遺体が見つかり

長女(81)と孫(53)が男性が生存しているように装い

遺族共済年金915万円を不正に受給していたとして詐欺容疑で逮捕された

ふたつの事件がモデル

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ここに登場する大人たちは、どいつもこいつもロクなもんじゃない

犯罪者で自分勝手で自分の都合のいいようにだけ解釈して言い訳する

だけどそんな”ずるい大人たちを、是枝 裕和(これえだ ひろかず)は

ファンタジーの世界のように描く


放浪の末、窃盗団にスリを仕込まれる「オリバー・ツイスト」か

貧しいから盗むしかなかった「レ・ミゼラブル」か

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物語はスーパーで万引きをするシーンから始まります

中年の男、治(リリー・フランキー)が店員から見えないよう死角を作り

その隙に息子・祥太が手早くリュックに食料品を詰める

帰り道、揚げたてのコロッケ(は代金を払う)を頬張っていると

男は寒い中、明らかに親からの虐待を受け

お腹を空かせてベランダでうずくまっている少女を見つけて

自分たちの住む古い一軒家に連れて帰ります

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家には治と祥太のほかに、家の持ち主であるおばあちゃん(樹木希林

妻の信代(安藤サクラ)、小姑の亜紀(松岡茉優)が暮らしていました

そして”ゆり”と名乗る少女を新しい家族として受け入れるのです


戦後の戸籍がわけわかんなくなった時代ならともかく

いくら人助けのつもりでも、これは明かな誘拐

でも治も信代も、万引きにしても誘拐にしても何の罪悪感も持っていない

それでゆりも含め、家族が幸せになれればいいと思ってる

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しかし治が工事現場で怪我をしてしまったうえ、日雇いで労災が下りず

おまけに信代が人件費削減で職場のクリーニング店をリストラされてしまう

亜紀は”JK見学店”という風俗でバイトしているもののアテにならず

(とはいえ恋した男が”4番さん”なのは、治と同じく同情が愛情になるタイプ)

収入はおばあちゃんの年金(と元夫と後妻の家族からの心付け)のみ

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そのおばあちゃんが突然死んでしまい

家族は庭に遺体を埋め、その後も年金だけは受け取っていました

そんなある日、いつも通りスーパーに万引きに行った祥太

しかしりん(ゆり)が祥太のまねをしてチョコレートをポケットに入れてしまう

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祥太はゆりをかばうように、玉ねぎを盗んで走り出し店員の目を引きます

だけど逃げる途中で脚を骨折してしまい捕まってしまう

それを知った治と信代は祥太を置き去りにして逃げようとしますが

あえなく捜査員に見つかってしまいます

そしてこの偽りの家族の正体が明かされていくのです

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それでもこの家族で暮らした間は幸せだった

散らかった着替え、万年布団

汚れた台所、ジャンクフード、カビだらけの風呂場

打ち上げの音だけの見えない花火

海水浴

ゆきだるま・・

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駄菓子屋の親父(柄本明 は棒ゼリーを2本くれた

「妹にはやらせるなよ」と

ずっと知っていて見逃してくれていたんだ

その親父も死んだ

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何年かあと、大人になった祥太は誰を探し

誰に会いに行くのだろう

誰の生き方から人間の価値観を学ぶのだろう


ラスト、ベランダでひとり遊びをしていて何かに気付くりん

そこには幼い彼女が虐待されてないことを祈る見守りが

きっとあったのだと思います



 

【解説】KINENOTEより

「三度目の殺人」の是枝裕和監督長編14作目。東京の下町で、犯罪で生計を立てている貧しい一家。ある日、父・治と息子・祥太は万引きの帰り道、凍えている幼い女の子を見つけ、連れて帰る。体じゅうの傷から境遇を察した妻・信代は、家族として受け入れる。出演は、「美しい星」のリリー・フランキー、「DESTINY 鎌倉ものがたり」の安藤サクラ、「ちはやふる」シリーズの松岡茉優、「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」の池松壮亮、「64 ロクヨン」前後編の緒方直人、「ちょっと今から仕事やめてくる」森口瑤子、「あゝ、荒野」前後篇の山田裕貴、「谷崎潤一郎原案/TANIZAKI TRIBUTE『富美子の足』」の片山萌美、「今夜、ロマンス劇場で」の柄本明、「彼女の人生は間違いじゃない」の高良健吾、「怒り」の池脇千鶴、「海よりもまだ深く」の樹木希林。第71回(2018年)カンヌ国際映画祭にてパルムドール受賞。2018年 第92キネマ旬報ベスト・テン日本映画第1位、読者選出日本映画第1位、読者選出日本映画監督賞受賞。

再開発が進む東京の下町のなか、ポツンと残された古い住宅街に暮らす一家。日雇い労働者の父・治(リリー・フランキー)と息子の祥太(城桧吏)は、生活のために“親子”ならではの連係プレーで万引きに励んでいた。その帰り、団地の廊下で凍えている幼い女の子を見つける。思わず家に連れて帰ってきた治に、妻・信代(安藤サクラ)は腹を立てるが、ゆり(佐々木みゆ)の体が傷だらけなことから境遇を察し、面倒を見ることにする。祖母・初枝(樹木希林)の年金を頼りに暮らす一家は、JK見学店でバイトをしている信代の妹・亜紀(松岡茉優)、新しい家族のゆりも加わり、貧しいながらも幸せに暮らしていたが……。