わが母の記(2011)




作家、井上靖さんの自伝的小説の映画化。

しろばんば」の少年は大人になり
売れっ子小説家として成功しています。

お手伝いさんに運転手、ゴルフにビリヤード
ホテルで食事、豪華客船
当時としてはかなりの裕福な生活。

それでも主人公の洪作の気持ちは満たされていません。
幼いころ自分だけ家族と離れて祖母と暮らしたことが
母親の八重に捨てられたからだと思っているのです。

その母親が老い、次第にもの忘れが激しくなってきます。
同じことを繰り返し話す
毒を吐く
しつこくこだわりをもつ
やがて家族を、息子を、わからなくなってしまいます。

樹木希林さん、すごいですね。
終盤のボケてしまった姿は演技とは思えないほど。
本当に認知症のおばあちゃんって
ああいう表情しています。

ちいさく、ちいさく、ちいさくなっていく・・
いつもモゴモゴとしている口。

八重が洪作が少年のころ書いた文章を読むシーンは感動的でした。
きちんと折りたたまれた、今はもう色褪せぼろぼろになった紙。
何度も何度も読んだのでしょう。
大切に大切にしまっておいたのでしょう。

こんなにも愛されていたんだと
洪作ははじめて知るのです。

八重が亡くなったとき
洪作は八重の介護をしていた妹に「ご苦労様」といいます。
電話の前で泣き崩れる妹。
どれほど苦労をしたことでしょう
やっと終わりがきたのです。

中学生を演じた宮崎あおいちゃんもスゴイですね。
さすがの万年少女です。

そしてラストのクレジットの
「クールなダンプ男」が笑えました。

75歳オーバーの母親やおばあちゃんと暮らしたことのある方なら
共感したり感動できる作品ではないでしょうか。
まずまずの秀作だと思います。



【解説】allcinemaより
昭和の文豪・井上靖の自伝的同名小説を役所広司樹木希林の主演で映画化した家族ドラマ。子どもの頃に母に捨てられた記憶がトラウマとして残り、母とのわだかまりを抱えたままの主人公が、年老いていく母と向き合った日々を丁寧な筆致で描いていく。共演に宮崎あおい南果歩キムラ緑子ミムラ三國連太郎。監督は「クライマーズ・ハイ」の原田眞人
 ベストセラー作家の伊上洪作は、幼少期に自分だけが両親と離れて育てられた経験を持ち、“母に捨てられた”との気持ちが拭えないまま今もなお深い心の傷となっていた。そのせいか、自分の娘たちには必要以上に干渉してしまい、反抗期の三女・琴子は洪作への反発を強めていた。一方、母・八重は父の死後、洪作の妹たちが面倒を見ていたが、次第に物忘れがひどくなっていく。やがて、そんな八重を洪作が引き取ることになるのだが…。