市子(2023)

杉咲花演じるファム・ファタールもの

大絶賛です、杉咲花ちゃんがとにかくヨカッタ

 

これが是枝裕和なら社会に取り残された「可哀そうな若者」の

ファンタジーにしてしまうのでしょうが(笑)

脚本は上村奈帆、素晴らしいですね

どんな事情があろうとも、無用な同情などバッサリ斬って

毒女はどこまでいっても毒女、女性らしいリアルさがハンパない

私にも、ファム・ファタールな知人がいるんですよ

ひとりは父親から殴られるなどの虐待を受け

ひとりは兄妹と養護施設で育った女性

生い立ちを理由に同情されることを得意としながら(天才といっていい)

他人の苦しみにはひとつも同情しない

本当に市子も、市子に振り回される男性もそのもので

昔を思い出しました(笑)

3年間同棲している恋人、長谷川(若葉竜也)からのプロポーズを受けた翌日

突然姿を消してしまった川辺市子(杉咲花)

テレビでは山中で発見された白骨死体が「川辺月子」という女性と

判明したニュースが流れていました

途方に暮れていた⻑谷川の前に

市子の写真を持って現れた刑事、後藤(宇野祥平

彼は「川辺月子」の死体遺棄事件の捜査をしていて

⻑谷川に「川辺市子」という人間は存在しない

「この女性は誰なのでしょうか」と訪ねます

⻑谷川と後藤刑事は、市子の幼馴染や高校時代の同級生と会い

市子はかって東大阪にある団地に住み、「月子」と名乗り

父親はなく母親はスナックで働いていたことを突きとめます

さらに市子が残したバックの底から、「月子」という名の保険証と

古い家族写真を見つけた⻑谷川は

写真の裏に書かれた住所、母親のなつみ(中村ゆり)を訪ねると

なつみは21歳で市子を出産したものの、DVだった夫が失踪

出生届を出さないままスナックで働くようになり

翌年、資産家の男性と再婚

市子が3歳のとき妹の月子が産まれたことを打ち明けます

しかし月子が難病(筋ジストロフィー)にかかり

バブル崩壊借金に陥った夫と離婚

再びスナックに務めると、なつみに思いを寄せる

市役所の職員でソーシャルワーカーの小泉(渡辺大)が

月子への福祉支援を惜しみなくしてくれたのです

戸籍のない市子が「月子」の名前で学校に通えたのも

彼が書類をうまく捏造してくれたおかげかも知れません

そのうえ働いている母親の代わりに

難病の月子を介護していたのは市子だったんですね(ヤングケアラー)

高校生になり自我が芽生えた市子は、月子の呼吸器を外し殺してしまいます

そのことを知ったなつみは「ありがとう」とだけ呟くのでした

そのころ市子と親しくなったのが同級生の森永悠希

売店で「ガリガリ君」を食べている北に

ガリガリ君」を買った市子が「同じだね」と声かけるのです

(これ、ちゃんと計算している行動だから)

しかもあの関西弁はズルい(笑)

花火大会で花火を見ている人が好きという市子を

花火大会に誘おうと彼女の家に向う北

そこで(役所をクビになった)小泉が市子を襲おうとして

市子が包丁で刺殺してしまう現場に遭遇してしまう(それも計算)

より一層、彼女を救いたいという思いが強くなる北

北は市子とともに小泉の遺体を線路に置き去りにし

警察は小泉の死を自殺とみなしました

でもそこまでは許せる範囲(いや、人殺してるから 笑)

問題はそれを複数の男性に同時に出来てしまうこと

そして都合のいいほうの男性と、どこかに消えてしまうこと

(ちょうどいい男がいない場合は、女友達のときもある)

「運命の女」という名の魑魅魍魎(ちみもうりょう)

ガリガリ君」1本で、殺人の共犯者にまで仕上げる

危険な「わらしべ長者

そうすると捨てられた男たちが、私のところにやってくるわけですよ

「何処に行ったか、あてを知らないか?」と

他に男が出来たから、諦めたほうが身のためよと言っても

魔法が強すぎて解けやしない

ホント、この映画と同じ

高校卒業後、北は失踪した市子の働くケーキショップ探し出し

今度は長谷川が市子を探し、北のアパートにたどり着きますが

すでに市子は姿を消したあとでした

さらに北のもとに市子に会いに来たと

保険証と引き換えに、北見冬子という自殺志願者の女性が現れます

そこに市子から電話があり、北と冬子は車で市子が指示した埠頭に向かいます

 

翌日、海に落ちた車の中から男女の遺体が見つかり

ふたりは心中と思われ、所持品から北と

「川辺月子」の身分証を持った市子であったことが判明します

この日から市子は北見冬子として生き

「川辺月子」死体遺棄事件は未解決のまま終わるのでした

 

 

【解説】映画.COMより

「僕たちは変わらない朝を迎える」「名前」などの戸田彬弘監督が、自身の主宰する劇団チーズtheaterの旗揚げ公演として上演した舞台「川辺市子のために」を、杉咲花を主演に迎えて映画化した人間ドラマ。
川辺市子は3年間一緒に暮らしてきた恋人・長谷川義則からプロポーズを受けるが、その翌日にこつ然と姿を消してしまう。途方に暮れる長谷川の前に、市子を捜しているという刑事・後藤が現れ、彼女について信じがたい話を告げる。市子の行方を追う長谷川は、昔の友人や幼なじみ、高校時代の同級生など彼女と関わりのあった人々から話を聞くうちに、かつて市子が違う名前を名乗っていたことを知る。やがて長谷川は部屋の中で1枚の写真を発見し、その裏に書かれていた住所を訪れるが……。
過酷な境遇に翻弄されて生きてきた市子を杉咲が熱演し、彼女の行方を追う恋人・長谷川を「街の上で」「愛にイナズマ」の若葉竜也が演じる。

2023年製作/126分/G/日本
配給:ハピネットファントム・スタジオ