- 山崎豊子原作による日本映画史上に残る社会派ドラマ
- オープニングと、作中のいくつかの開腹手術シーンは
- 実際の映像を使用したもの
- 前半は国立大学付属病院の外科教授の選挙戦を巡るもので
- 終盤は亡くなった患者の誤診裁判が行われるというもの
- 主人公は医学部外科助教授、財前五郎(田宮二郎)と
- 内科助教授の里見脩二(田村高廣)のふたり
- とにかく秀逸なのが橋本忍による脚色
- これだけの内容を150分にまとめた手腕は驚くべきもの(笑)
- しかも全くストーリーが崩壊せず、だれることもなく
- 最後までいっきに見れます
- 浪速大学(モデルは大阪大学)付属病院医学部第一外科教授の
- 東(東野英治郎)が定年退職をむかえるにあたり
- 次期教授を選ぶ選挙が行われることになります
- 最有力とされているのは多くのがん患者を救い
- 自他ともに認める(食道専攻)外科の名医、財前でした
- しかし「胃がんの若き権威」と呼ばれ、マスコミに取り上げられ
- 強い上昇志向を持っている財前を東は気に入っていません
- 彼のしごとぶりに何かとケチをつけ
- 自派閥を大きくしようと画策している鵜飼医学部長(小沢栄太郎)に相談
- 東都大学(東大のことだろう)の船尾教授(滝沢修)の推薦で
- 心臓外科の第一人者で金沢大学の菊川教授(船越英二)を
- 教授候補として出馬させます
- さらに東は人柄も評判も良い、男やもめの菊川を
- 娘の佐枝子(藤村志保)と結婚させようとします
- しかし佐枝子が好意を抱いていたのは妻子ある里見でした
- さらに財前を嫌う整形外科教授の野坂(加藤武)は
- 皮膚科教授の乾(北原義郎)、小児科教授の河合(夏木章)と共謀して
- 財前の前任で、現在は徳島大学で教授をしている葛西を擁立します
- 財前は義父で産婦人科医院を営み、医師会副会長でもある
- 財前又一(石山健二郎)に支援を求めます
- 又一は友人で医師会会長の岩田(見明凡太朗)に頼み
- 浪速大学の教授や医局長に様々な買収を仕掛けます
- 特に医学部長の鵜飼には高級な絵画、より重要なポスト
- 政府からの研究資金をちらつかせます
- 財前の愛人でバー「アラジン」のホステス
- ケイ子(小川真由美)は、店に来る医学部の客から
- 選挙戦の情報を収集します、それも愛のためじゃない
- 財前と寝るのも金のためというわかりやすさ(笑)
- でもこの悪女な小川真由美が、なぜかいい
- そんな中、里見は自分の患者である佐々木庸平に
- 胃がんの可能性があるのではないかと財前に意見を求めると
- 財前はすぐ手術すれば完治すると
- 患者は内科から外科に移されることになります
- そこで里見が結核の痕だと思うが肺に気になる影があるので
- 手術前に断層撮影検査をするよう財前に頼みます
- しかし、選挙の票集めに忙しい財前は
- それどころでありませんでした
- 里見の進言を無視し手術を行い、手術は成功しますが
- 手術後、佐々木庸平の容体が悪化
- 財前はろくに診察もせず術後肺炎と診断すると
- 外科医局員の柳原医師に
- 抗生物質「クロラムフェニコール」を投与するよう指示します
- 里見は胸部X線写真をとるべきだと言いますが
- 財前が佐々木庸平を診察することはありませんでした
- 投票当日になり、開票の結果は財前12票、菊川11票、葛西7票
- 財前、菊川とも過半数ならず
- 鵜飼は大河内教授(加藤嘉)の「即時決選投票」提案を退け
- 1週間後に決選投票を行うことにします
- その間、葛西に投票した7票を巡り
- 又一が大河内に賄賂を持っていくと、大河内は激怒
- さらに医務局(財前派)のメンバーが
- 「立候補を辞退せよ、さもなくば医局員一同いっさい協力しない」と
- 菊川を脅迫するも、菊川が動じることはありませんでした
- 決選投票の結果、財前は菊川に2票差で勝ち、次期教授に選ばれ
- 早期退職した東は近畿労災病院の院長に就任します
- 華々しい教授生活をスタートさせた財前でしたが
- 佐々木庸平が死亡し、里見は遺族に遺体を病理解剖させます
- 大河内の解剖により、佐々木庸平の死因は
- 肺がん(癌性肋膜炎)であったことが判明
- 遺族は(診察を怠った不誠実な態度に)財前を民事訴訟します
- おまけにケイ子に「岡山の母親のところに帰れ」と
- 別れを切り出され、彼女を何度もビンタする財前
- 財前は鵜飼に頼み大阪弁護士会会長の河野(清水将夫)を代理人に立てますが
- 遺族側は正義感が強いことで有名な関口弁護士(鈴木瑞穂)を雇い
- 鑑定人として選ばれた大河内教授が、がんが肺に転移していたことを認めます
- 里見が断層写真を撮ることを何度も勧めたが断られたと
- 財前に追い打ちをかけます
- しかし財前側が用意した証人で医務局の柳原医師が
- 「術後肺炎と診断したとは自分」と偽証したことにより
- 財前が有利に立ちます
- そしてもうひとりの鑑定人として選ばれたのが東都大学の船尾教授
- 財前の敗訴を確信した東は、裁判を傍聴しに行くことにします
- ここからがクライマックス
- 焦点は断層撮影検査をしたとして
- 肺がんを見抜けたか、見抜けなかったか
- 船尾は断層写真を撮るべきだったとしたうえで
- 断層写真を見ても、肺がんかどうか分からなかっただろう
- 術後の肺炎は誤診であるが、結果は同じだろう (患者は助からなかった)
- 財前はこれからは傲慢不遜な態度を改め
- 教授にふさわしい人間になるべきだと
- 財前を裁判に勝たせるための証言します
- そこに大学や派閥は関係ない
- 国立大学医学部を救うため、日本の医学会全体のため
- ひとりの患者のために、優秀な医師を辞めさせるわけにはいかないということ
- (結局滝沢修が全部いいところを持っていった 笑)
- 「財前教授の総回診です」は有名なセリフ(笑)
- 大学に戻った財前は、多くの医師と看護師を引き連れて廊下を歩き
- 鵜飼から山陰大学の教授職をあてがわれた里見は
- 人事を受け入れることが出来ず
- 辞表を出すと浪花大学を去っていったのでした
- そもそも東が財前を妬んで、教授になるのを阻止しなきゃ
- 財前が選挙に夢中になることも
- ここまで歪んだ男にはならなかったのでしょうね
- (冒頭では医務局のスタッフへの思いやりなども描かれている)
- 派閥とカネというものは、なんと人間をダメにすることか
- それは今でも変わらない
- この後、財前五郎が乗り移ったかのように
- 壮絶な人生を送ることになる田宮二郎
- 1978年のテレビドラマ版「白い巨塔」放映中に散弾銃で胸部を撃ち自殺
- 幸子夫人は 「「白い巨塔」をやっていなければ
- 田宮はあのような形で死ぬことはなかったと思います」と
- 語っていたそうです
- 【解説】allcinemaより
- 山崎豊子の同名小説を、橋本忍が脚色し山本薩夫が監督。主役の田宮二郎はこの作品で人気を得、後にテレビシリーズでも同じ役を演じた。原作が完結する前に制作が開始されたため、ラストは映画オリジナルとなっている。浪速大学医学部の東教授が来年退官となるため、そのポスト争いが水面下で激化していた。東の教え子である財前五郎は最有力候補と言われていたが、傲慢な態度ゆえ東教授に疎まれており、様々な工作を進めていた。ある日、同期の里見から頼まれ、財前は胃癌患者の手術を執刀する。術後に患者は苦しむが、選挙戦に忙しい財前はその原因を探ろうとせず、患者は間もなく亡くなってしまう。財前は選挙戦を勝ち抜き晴れて教授となるが、そんな矢先、死亡した患者の遺族が財前と病院を相手取り、医療訴訟を起こした。