邦画・名作/傑作

にっぽん昆虫記(1963)

自分の描きたいテーマを徹底的に調べぬくことから 「調査魔」とまであだ名された今村昌平が 本作の映画化のため当時の日活の専務を出張先まで追いかけていき 風呂場で背中を流してまで、企画を口説き落としたという力作 ちなみにこのころ今村の奥さんが、近…

愛のコリーダ(1976)

原題は「L'Empire des sens」 センスとは感覚”五感”のこと、エンパイアとはの帝国・領域のこと つまり「感覚の領域」とは性器のことを表していると思います 大島渚監督によってフランス資本により製作 日本に逆輸入されセンセーショナルな風評を呼び話題にな…

キューポラのある街(1962)

「貧しいから弱くなるのか、弱いから貧しくなるのか」 舞台は鋳物の工場が立ち並ぶ埼玉県川口市 キューポラ(cupola furnace)とは、鋳物を作る溶解炉のことで 独特の形をした煙突が特徴 かっては戦争で需要があった鋳物工場は経営困難に陥り 大企業に買収さ…

家族ゲーム(1983)

公開された年の映画賞を総なめ 今でも名作だとか、森田芳光監督の最高傑作と称えられている怪作 ストーリーそのものは成績の振るわない中学三年生の息子のため 両親が大学生の家庭教師を雇い、見事進学校に合格するという単純なもの ですが、サクセス感は全…

日本沈没(1973)

単なるパニック映画ではなく 何故、日本列島が沈むのかという最大の疑問にどう答えるか 素人にもわかるよう「地球を半熟のゆで卵」に例えた 学術的な説明にかなりのウェイトを割いているのでわかりやすい 説明する学者は演技をする風もなく 本物の学者ではな…

復讐するは我にあり(1979)

「なぜ人を殺す? あんたは本当に殺したい人間を殺していないね 私は本当に殺したい人間を殺したから悔いはないよ」実際の事件を題材にした佐木隆三の同名長編小説の映画化「復讐するは我にあり」とは新約聖書(ローマ人への書第12章第19節)「主いい給…

少年(1969)

「行ったよ。北海道には行ったよ」1966年8月に報じられた「子供を使った当たり屋」事件大島渚はこの事件に衝撃を受け報道の十日後には同志と構想を練ったといいますしかしメジャー会社はどこも映画化には乗り出してくれずATG(日本アート・シアター・ギルド …

羅生門(1950)

「てめえ勝手なやつばっかりだ」「そういうてめえは違うとでも?」戦後、敗戦にうちひしがれた日本人そんな敗戦5年後、国内では不評だったものの日本初の国際映画祭グランプリを受賞した本作それは物凄い衝撃的な出来事で「羅生門のおかげで世界に胸が張れる…

トラック野郎 御意見無用(1975)

「緊急!自動車がぁ〜とおりま〜す!」いやあ、強烈でしたコメディを超越した、もうアナーキーですおバカと人情と喧嘩と下品「緊急自動車」と偽り、渋滞を切り抜ける「一番星」の星桃次郎(菅原文太)と「やもめのジョナサン」松下金造(愛川欽也)(嫁さん…

麻雀放浪記(1984)

「あいつは俺の女だ この世でたった一人の俺の女だ だからあいつは 俺のために生きなくちゃならねえ 俺は死んだって てめえっちに甘ったれたりはしねえが あいつだけには違うんだ」私は麻雀を全くしませんがする人で、リアルタイムで見た人は今でも、卓を囲…

仁義なき戦い 完結篇(1974)

「お前とは飲まん」シリーズ5作目にして、一応の完結作今までのシリーズが広能昌三(文太兄ぃ)と山守親分(金子信雄)の対立が背景にあり、そのことで感情移入できたのですが「完結編」で落とし前がつくわけでなく、完全に無視されています天政会2代目会長…

仁義なき戦い 頂上作戦(1974)

「ほおか ほいじゃあ言うとったるがの 広島極道はイモかもしれんが、旅の風下に立ったことはいっぺんもないんで 神戸のもんゆうたら猫一匹通せんけえ、おどれらよう覚えとけや!」原作においての事実上の最終作が、この「頂上作戦」ということです暴力団とい…

仁義なき戦い 代理戦争(1973)

村岡組と合併した新生山守組 VS 打本組打本と兄弟盃した神戸明石組と山守と手を組んだ神和会の代理戦争が勃発呉と広島におけるヤクザ抗争が紆余曲折を経て一つの抗争にまとまるまでの過程を描いているそうです1作目2作目よりさらに背景が複雑なうえやくざ社…

仁義なき戦い 広島死闘篇(1973)

「わりゃ、何の肉じゃ?こりゃ! オドレラ、何の肉買うてきたんなら?」金に困った子分たちから、野良犬の肉を食わされる文太兄ぃ日本でも昔は犬の肉を食べていて特に赤犬(茶色い毛の犬)の肉が美味しいと聞いたことがありますが今なら動物愛護団体から非難…

仁義なき戦い(1973)

「馬の小便か?こりゃ、ビールならもっと冷やいの持ってこいや!!」「わりゃあ、馬の小便が嫌なら、わしの小便飲ませたろかぁっ!」 「オウ! 飲ましてみいや!」すごい映画でしたこの映画を邦画ベスト1に推す人もかなりいるということですが頷けます実話ベ…

銀座の恋の物語(1962)

デュエット曲のスタンダードナンバーの最高位「銀恋」この功績を永く後世に伝えるためゆかりの地銀座(4丁目数奇屋橋公園)には歌碑も建立されているそうです今でもおじ様たちに愛され続けている名曲です当時の銀座はまだ若者が住めるようなボロアパートや町…

嵐を呼ぶ男(1957)

ドラムバトルが有名な映画ですね手にけがをしたドラマーが即興の歌で観客を酔わすそして大スターになるものの芸能界の裏の駆け引きによって再び落ちぶれてしまうというものしかし、この映画の本当のドラマは母と息子の葛藤にありました正一と英次は音楽を愛…

狂った果実(1956)

「要するに退屈なのよ、現代ってのは」「目を見張るすばらしさ」とトリュフォーが賛辞したというこの作品「狂った果実」という、タイトルもいい若者の享楽、女性の性の解放理性のきかない欲望、その果ての 破滅小説だけではなく、脚本も手掛けた若き日の石原…

青い山脈(1949)

♪若く明るい歌声に~♪という主題歌とともに公開当時は大ヒットしたという有名な作品私もこの歌は聞いたことがありますしかし、爽やかな青春かと思ったらちょっとドロドロとした「いじめ」ものでしたそれを戦前の封建的な考えからくるものだと古い体制には断…

血槍富士(1955)

内田吐夢の戦後復帰第一作品のため伊藤大輔、小津安二郎、清水宏、溝口健二が参画したという時代劇そんな逸話を聞くだけでもうれしくなります(笑)東海道を江戸へと向かう旅人たち酒癖は悪いけれど心優しい若様それにお供する従来と槍持ち宿なしの少年、旅芸…

兄とその妹(1939)

戦前の作品ですけれど、ずいぶんとお洒落ですね兄は紳士的ですし、妹はスタイリッシュで見事な美脚そして、新婚夫婦と旦那方の妹が一緒に仲良く暮らすという不思議な物語紅茶とバタートーストの朝食銀座ではアイスクリームを買うとドライアイスがついてきて…

本日休診(1952)

まだ空襲の焼け跡が残る、戦後まもない東京舟暮らしに電車住宅、当時の暮らしがわかります普通の人に、金持ち警察官、泥棒、商売女戦争のため精神がおかしくなってしまった青年いろいろな人間が入り混じって生活していますそんな人々を相手にしている老町医…

おとうと(1960)

市川崑監督+宮川一夫カメラの代表作とのこと「銀残し」と呼ばれる、褪せた色調が大正時代らしいレトロな雰囲気を生み出しています女学生のげんと、高校生の弟碧郎(へきろう)いかにこの姉弟が仲がいいのかがわかるように物語は始まります碧郎にとって、姉…

にあんちゃん(1959)

10歳の女の子の書いた日記が原作だなんて驚きです作中でも、にあんちゃんとその妹がとても素晴らしい「オレ、人に頼るのやめたんや!」昭和28年、九州佐賀の炭鉱町日本人と朝鮮人鉱夫が共同生活していますそこで親に先立たれた兄妹4人どこの家も他人を助ける…

恍惚の人(1973)

今見ても全く古くない。誰が見ても考えさせられてしまうテーマでしょう。私の個人的な判断なのですがこれを見たとき男性は自分がボケたときの恐怖を逆に女性は認知症になった老人を介護する苦労という全く逆の立場で鑑賞するような気がします。私はあまり記…

野火(1959)

第二次大戦末期のフィリピン戦線での日本兵たちの末路。兵士たちは暑さと空腹のためただダラダラと過ごしています。敵の銃弾から逃げるだけで戦う気力などまったくないようです。そして襲う極限の飢えそれは理性を失い狂気を生み出すのでしょう。彼らは戦友…

鴛鴦(おしどり)歌合戦(1939)

「ほーれほれほれ、この茶碗~」このメロディが頭から離れません。笑お正月映画用として撮影されたオペレッタ時代劇。アメリカやドイツのシネオペレッタの影響をうけて作られたそうですが出来では「会議が躍る」にも決して引けは取らない。傘屋の娘のお春は…

日本のいちばん長い日(1967)

「あと、2000万!後2000万特攻に出せば必ず勝てます!あと、2000万! 日本男子半分を特攻に出す覚悟で戦えば! 必ず!必ず!」すごい映画でした。息をつく暇もないくらい2時間40分という長尺な作品でしたがラストまで飽きることなく見れました。1945年7…

河内山宗俊(1936)

三本しか現存していないという山中貞雄監督作品のなかのひとつ。三本しかない作品のなかでは一番評価が低いようですが。笑それでも物語がはじまってすぐ、名作の香りがプンプンとします。甘酒屋を営む娘、お浪。彼女はやくざの世界に足を踏み入れている弟の…

黒部の太陽【完全版】(1968)

幻の大作と謳われていた名作ですね。1956年、戦後の高度経済成長の夜明け関西電力の黒部川上流の第四発電所建設に向け行われたトンネル彫りに挑む作業員たちの苦労を描いています。狭く暗い地下での作業いつ岩盤が崩れ下敷きになってしまうのかあふれ出…