21グラム(2001)




タイトルの「21グラム」とは、20世紀初期のアメリカの医師
ダンカン・マクドゥーガルが行った
魂の重量の計測しようとした実験に由来するウィキペディアより


この作品は人間の魂の救済はどこにあるのか、許しは得られるのか
許しの先には何があるのかということをを
心臓移植、家族の死、悪意のない犯罪
そして信仰をテーマに描いているのだと思います

生と死を隔てたときには
たった21グラムの差しか、ない


時系列をシャッフルする作り方が最近は多いですね
でも手持ちカメラのブレは、ザラザラとした感じで
登場人物の落ち着かない心理をあらわすようでよかったです
不必要に情景描写に時間を割かないのもいい

臓器移植問題についても考えさせられます
アメリカで手術する日本人の移植を受ける割合は
ほかの移植を待つ患者より高く、諸外国からの非難にもなってるそうです
移植を受けるための費用が莫大なうえ
さらに年々高額になっているというのも理由かも知れません
提供者がいたからと、誰でも受けれる手術ではないのです





ポール(ショーン・ペン)は数学を教える大学教授
心臓を患い、余命1ヶ月を宣告されています
妻のメアリー(シャルロット・ゲンズブール)は
体外受精で彼の子を儲けようとします

クリスティーナ(ナオミ・ワッツ)の夫とふたりの娘がひき逃げされ
娘は死に、夫は植物状態
クリスティーナは夫の心臓を提供する書類にサインします

ひき逃げ犯であるジャック( ベニチオ・デル・トロ)は自首しますが
事故をおこしたことで、自分の信仰に疑問を抱くようになります





ポールは心臓移植を受け、退院し妻との生活に戻ります
そして探偵を雇い提供者を探し出しクリスティーナに会うのです
心臓を提供したものには提供者の心や特技が宿るときもあるそうです
ポールはクリスティーナを好きになってしまう
クリスティーナはポールにジャックを殺してと頼むのです

しかしポールには殺せなかった
(自殺願望で)殺してくれと頼むジャックも殺せなかった
代わりに自分の心臓を撃ってしまいます


それは、クリスティーナを殺人犯にしたくなかったからでしょうか
拒絶反応を起こしている心臓でもがき苦しみたくなかったのかも知れない
すべてはこの心臓が元凶だと皮肉るポール


ポールの行為はどんな理由であれ、家族の臓器を提供した人や
移植手術の関係者が見たら、これは虚しくなることでしょう
私は移植手術賛成論者ではありませんが、反対もしません
これは残酷なシーンに感じました





ここでの「救い」の答えは「子どもの」存在だと思います
刑務所を出たジャックは妻は無視しますが、子どもたちは抱きしめます
そして「お土産は?」の言葉に救われるのです

クリスティーナの身体には新しい命が芽生えます
メアリーもポールの死後、体外受精をし
シングルマザーになるかも知れません
子どもは人を強くする可能性を持っているのです


皆、素晴らしい演技をしていましたが
中でもベニチオ・デル・トロがよかったです
本当はやさしいだろうに、不運で犯罪者になってしまい
そして神からも裏切られた、みじめな男がにじみ出ていました




【解説】allcinemaより
人は死んだ時、21グラムだけ軽くなるという。そんな“魂の重さ”をモチーフに、「アモーレス・ペロス」のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督が、ひとつの心臓を巡って交錯する3人の男女の運命を描いた衝撃の人間ドラマ。「ミスティック・リバー」のショーン・ペン、「トラフィック」のベニチオ・デル・トロ、「マルホランド・ドライブ」のナオミ・ワッツがリアリティ溢れる迫真の演技を展開。
 余命一ヶ月と宣告され、心臓移植を待ちわびる大学教授のポール。それを知った妻は、彼が死ぬ前に子供が欲しいと申し出てくる。昔はヤクザな生活をしていた前科者のジャック。今は改心し信仰に篤く、クジで当たったトラックも神からの授かり物と信じ、貧しくも懸命に働きながら妻と2人の娘を養っている。かつてドラッグに溺れていたクリスティーナ。今ではその依存も絶ち、優しい夫と2人の娘と共に幸せに暮らしていた。そんな出会うはずのない3人の運命が、ある事故をきっかけに交わり、思いもよらぬ結末へと導かれていくのだった…。