「コンスタンティノープル」
「マダガスカル」
「きっとなれるわ 私も呪文なしであなたを手に入れたもの」
原題は「The Curse of the Jade Scorpion」 (翡翠蠍の呪い)
1930~40年代のハリウッド映画黄金時代の
スクリューボール・コメディのオマージュ
「スピンがかかりどこに落ちるか予測がつかないボール」 のこと
転じて、つぎつぎに事件が起きて波乱にとんだ映画のことで
テンポのよい洒落た会話が特徴
そしてウディは「ボギー!俺も男だ」(1972)で(監督はハーバート・ロス)
ハンフリー・ボガートに憑りつかれた男を演じたくらいの
ボギーファン(だと思う)
本作でもレイモンド・チャンドラーよろしくボギー風なファッション
さらにハードボイルドの世界からそのまま飛び出してきたような
「ファム・ファタール」を演じたのがシャリーズ・セロン
端役ながら(当時25歳)セロン姐さんを抜擢したウディはやっぱり天才だな
(鍵を口移しのシーンはいくら監督でもズルすぎだろ 笑)
こんなセロン姐さん、他の映画でももっと見たかった
舞台は1940年のニューヨーク
保険会社で働くCW・ブリッグス(ウディ・アレン)は
腕利きの保険調査員で防犯対策の専門家
合理化のため社内改革にやってきた女性重役
ベティ・アン・フィッツジェラルド(ヘレン・ハント)のやり方が気に食わない
ふたりは顔をあわせるたび口喧嘩
屁理屈ゴネゴネ毒舌のCWに、ベティ・アンも負けじと言い返します
「麻薬やってんのか?」
「ゴキブリ眼鏡」「抜け毛のひどい」
「それ以上近寄ると、去勢するわよ」
セクハラ、モラハラ、自虐ネタもここまでお互い対等に言い合えば
なんだか気持ちいい(笑)
そんなふたりが、同僚のジョージの誕生パーティーの余興で
催眠術師のヴォルタンに相思相愛になる催眠術をかけられます
CWとベティ・アンが社内で敵対していることは皆の知るところ
そのふたりが「コンスタンティノープル」「マダガスカル」の呪文で
「ダーリン」「ハニー」と見つめあい、愛を語り合うのに会場は大盛り上がり
それを神妙な顔で見つめるグルーダー社長(ダン・エイクロイド)
ベティ・アンはグルーダー社長の不倫相手で
グルーダ社長は「妻と離婚する」を口実に
彼女と関係を続けていたのです
部屋に帰宅したCWが電話を取ると
受話器の向こうから催眠術師のヴォルタンの「コンスタンティノープル」という声
呪文をかけられたCWはケンジントン家から宝石を盗むよう命じられます
ケンジントン家の防犯システムはCWが取り付けたもの
CWはいともたやすく宝石を盗み出し、しかも翌朝には全く記憶がない
防犯システムを破られたケンジントン家の調査に行ったCWは
ケンジントン家のご令嬢、ローラ(シャリーズ・セロン)と出会います
「ローラ・ケンジントンだろ?」
「太ももにあるイチゴ形のアザが証拠よ 見たい?」
「全身を見てからね」
(いかにもボギー風なかけあい 笑)
効率化のため(ベティ・アンの提案で)調査には探偵を雇うと言う社長と
探偵はいらない、内部犯行に違いないと確信したCWは
ホームレスに聞き込み調査をし、深夜会社に資料を調べるため戻ると
ひとりで残業していたという(実は社長と一緒)ベティ・アンに
追い払われ不審に思います
CWがアパート帰宅すると、素肌にトレンチコート片手にはウォッカの
ローラが待ちぶせしていて、CWをベッドに誘います
そこへ再び「コンスタンティノープル」の電話
CWは体よくローラを追い払い、ティルズワース邸に盗みに出かけます
またもや自分が防犯対策をした屋敷で盗難が起こり
自分の資料を持って行ったベティ・アンが犯人ではないかと疑うCW
CWはベティ・アンのデスクから家の鍵を探し出し、合鍵を作ると
彼女の家に忍び込みます
そこには社長もいて「妻とは離婚はしない」という別れ話の最中
社長が帰ると、酒を飲み窓から飛び降りようとするベティ・アン
彼女の自殺を必死で食い止めたCWは
酔いつぶれて寝てしまったベティ・アンが再び自殺しないよう
彼女を見守り一夜を過ごします
翌朝CWが会社に行くと、探偵が現場の指紋や遺留品が
すべてCWのものと一致していたと伝えます
さらに2度目の事件の夜、彼が夜中に出て行ったとローラが証言していました
彼女がいたなら、あんな美人を置いて出て行くわけがないと
(そりゃそうだ 笑)無実を訴えるCW
ベティ・アンは自分の命を救ってくれたC・Wを信じたい気持ちで
C・Wの話を聞くため彼のアパートに行きますが
「まるでネズミの巣みたいに汚い部屋ね」
「巣をイメージしたインテリアなんだ」 (笑)
しかも女もののストッキングに、隠してあった大量の宝石まで発見
CWが身に覚えがないと言い訳すると、またも電話がかかってきて
「コンスタンティノープル」「宝石を空きロッカーまで移動させること」
ベティ・アンを口説いて追い出そうとするCW
ベティ・アンの「“愛”が“好き”に変わって今度は“尊敬”?」は名言だな(笑)
警察に逮捕されたCWは、署内でローラを発見
手錠の鍵が引き出しにあるから助けてくれと頼みます
素直に言うことを聞くところが、マリリン・モンローみたいで可愛い
警察を逃げ出したCWはベティ・アンのアパートに逃げ込みます
(敵対するベティ・アンの部屋なら誰も探しに来ない)
疲れてソファーで寝込んでしまったCWを見て
通報するのをやめるベティ・アン
そこに電話がかかって来て「マダガスカル」
「ケンジントン邸で宝石を盗んでこい」
盗みから帰ったベティ・アンは、CWに愛を囁きながら眠ってしまいます
もちろん翌朝には何も覚えていない
翌朝CWが出社すると(脱走犯なのに 笑)
同僚のジョージとアルにベティ・アンが変だと愚痴ります
ジョージはパーティでふたりが催眠術にかかった時と同じだと笑い
その時の説明をし「コンスタンティノープル」と唱えると
CWは催眠状態に陥ってしまいます
CWの催眠が解けていないことに気が付いたジョージは
CWに暗示をかけ、指パッチン
「トリガーワード」(きっかえになる言葉)が解かれたCWは記憶を取り戻し
犯人は催眠術師のヴォルタンだとわかります
急いでベティ・アンのアパートに向かうと、催眠術にかかった彼女が
宝石に届けに行くところでした
ヴォルタンは警察に現行犯逮捕され
催眠状態のベティ・アンがCWに愛してると言うと
CWは彼女にキスをします
しかし仕事に戻ったCWは、社長の離婚が決まり(まだ離婚はしていない)
社長とベティ・アンがパリに休暇旅行に行くことを知らされます
退職を決意したCWに社長は(CWとベティ・アンが犬猿の仲だと思ってる)
ベティ・アンと結婚したら、彼女には仕事を辞めてもらうつもりなので
もし留まるならば昇給すると約束します
CWがベティ・アンのオフィスへ行き、彼女と別れの乾杯をすると
ベティ・アンは社長とパリに向かうため社を出て行きます
アルはCWが辞めるなら俺も辞めると言いだし
CWにベティ・アンを愛しているなら彼女を追いかけろとけしかけます
催眠術にかかると普段できないことが出来ると説明するジョージ
CWはベティ・アンを追い、彼女に向かって「マダガスカル」(笑)
愛を告白し、プロポーズすると
ベティ・アンは「出会った瞬間から恋に落ちた」と答え
CWと結婚すると社長に告げます
パリ行きも、妻との離婚もやめることにした社長
(ある意味社長もハッピーエンド)
CWとベティ・アンは彼女のアパートで幸せに結ばれます
だけどおかしいな
ベティ・アンの「トリガーワード」も解いたのにと言うジョージ
ベティ・アンは催眠術にかかったふりをしていただけ
なんだかんだでCWは泥棒だったのね(笑)
ウディは「ジャック・ニコルソンかトム・クルーズに頼めばよかった」と
嘆いたそうですが
(ジャック・ニコルソン(当時64歳)とトム・クルーズの共通点はいかに 笑)
なんちゃってボギーを演じれるのは、やっぱりウディしかいない
そして、ヘレン・ハントの「目がハート♡」とはまさしくこのこと
可愛い、可愛い
こんなふうに見つめられたら、堕ちない男はいないわよね(笑)
【解説】映画.COMより
40年代のニューヨーク。昔かたぎの保険調査員ブリッグスと、徹底的な合理主義者の女性重役フィッツジェラルドは犬猿の仲。ところが、ある夜、インチキ魔術師のマジックショーで催眠術をかけられ、ある単語を聞くと、お互いに恋に落ちてしまうようになる。女性重役には「恋愛小説家」のオスカー女優ヘレン・ハント。ハワード・ホークスやビンセント・ミネリらの、ハリウッド黄金期の作品へのオマージュも多数散りばめられている。
2001年製作/101分/アメリカ
原題:The Curse of the Jade Scorpion
配給:ギャガ・コミュニケーションズ