傑作
原題も「ALL ABOUT EVE」
今見ると、大げさに見えるところもあるけれど
これが「映画だ」といわんばかりの、脚本、演出、構成、演技
「女」の野心と性(さが)を見事に描いている
ゴダールが事あるごとに「イヴの総て」を引用する理由が
解ったような気がします(笑)
もしかしたらあなたの傍にも、男たちからは好かれるけど
女同士から憎まれる、汚い手口(親友の彼氏を奪う)を使う
女友達や同僚がいるのではないでしょうか
物語は演劇界の由緒ある賞の授賞式から始まります
受賞したのは新鋭女優イヴ(アン・バクスター)
それを見つめる売れっ子脚本家の妻カレン(セレステ・ホルム)と
熟年女優のマーゴ(ベティ・ディヴィス)
そしてナレーションは「イヴの総て」を語ります
前半は、主演する舞台をすべて成功させる女優マーゴの物語
しかし彼女は実力派で人気があるにもかかわらず
自分の年齢や容姿をとても気にしているんですね
演出家で8歳年下恋人のビルにコンプレックスを抱き
新作の20代女性のヒロインを演じることを悩む
それが無意識のうちに、酒に酔って周囲の人間に無作法になったり
舞台を遅刻するという弊害になっていました
そんなマーゴをいつの間にかフォローしていたのが
マーゴのファンを名乗り、マーゴの付き人になったイヴでした
清純な見た目と真摯さでマーゴの取り巻きを自分の味方に付け
カレンに頼み込みマーゴの代役を手に入れます
カレンはイヴが(遅刻魔の)マーゴの代役することを
マーゴも笑って許してくれると思ったのです
だけど、だんだんとイヴの魔性が剥がれだし
カレンは彼女を嫌い、畏れるようになります
(付き人のおばちゃんだけが最初からイヴの本性を見抜いていたんだな)
後半はイヴの物語
マーゴの代役で成功したイヴは(マーゴと喧嘩中の)ビルを口説きますが
「マーゴを愛している」とあっけなくフラれると
高名な批評家のドゥイットとつるむようになります
が、新作の稽古が始まると、今度はカレンの夫で脚本家のロイドに取り入る
ロイドを真夜中に呼び出し、結婚の約束をしたとドゥイットに告げます
一流の脚本家と結婚し、専属になれば女優としての将来が約束されるはず
しかしドゥイットは最初からイヴの嘘をすべてお見通しだったのです
俺を誰だと思ってる、俺を甘く見るな、お前は俺のものだ・・
ドゥイットは最低の男だけど
こんな小娘の勝手な枕営業で、演劇界を滅茶苦茶にされるのは防いだのでしょう
売れっ子女優になりたいなら、まずは実力者の懐の中で飼われること
それが芸能界のシステム
このドブネズミのような男が、なぜか一番マトモに見える(笑)
「芝居なんてできないわ」と泣き崩れておきまがら
舞台を演じ切り、賞を受賞するイヴ
そしてカレンやマーゴに対する白々しいスピーチ
しかもタクシーにトロフィーを忘れる(笑)なんて女だ
ラストは皮肉でしたね
イヴが表舞台から消えるのは、意外と早いかも知れない
突然現れた女子高生に、ドゥイットは全てを悟るのです
見ごたえのあるアン・バクスターの清純な小悪魔ぶり
無名時代のマリリン・モンローも出演
チョイ役でもマリリンの輝きだけは隠せない(笑)
ですがやはり、ここはベティ・ディヴィスの存在感を称えたい
エキセントリックさ、老醜の中にも
どこか女性らしい可愛らしさが見え隠れしている
カレンじゃないけど、女友達になるならアンよりベティを選ぶ(笑)
恋人役のゲイリー・メリルとは本当に結婚したそうです
(しかも前夫と離婚したわずか3週間後 笑)
さすが映画界の隅から隅まで知り尽くした、ジョーゼフ・L・マンキーウィッツ
いかにも現実にありそうな、納得の面白さ
「お気に入り」を献上させていただきます
【解説】allcinema より
ある日、新進女優イヴ・ハリントンはアメリカ演劇界の栄えある賞に輝いた。だが、彼女がここまで上り詰めるには、一部の関係者たちしか知り得ない紆余曲折の経緯があった。8ヶ月前、田舎からニューヨークへ出てきたイヴは、ひょんなことから憧れの舞台女優マーゴの住み込み秘書となった。するとイヴはこれを皮切りに、劇作家や有名批評家に巧く取り入り、マーゴまでも踏み台にしてスター女優へのし上がっていく…。
監督マンキウィッツ自身による見事な脚本と、名優たちの火花散らす熱演とが融合し、その年のアカデミー賞をほぼ独占する形となった、バックステージものの最高作。田舎からニューヨークへ出、大女優(B・デイヴィス)の付き人となったのを皮切りに、有名批評家に取り入って大女優の代役から一躍、ブロードウェイの寵児にのし上がるヒロインを、A・バクスターがまさに一世一代の体当たり芝居で演じきる。批評家のG・サンダースも、いつになく繊細な役柄を的確に表現し、オスカー助演賞を得た。まだ無名の頃のモンローが顔を出している。