「女、つかいませんでした?」
これも凄い映画でした
イキナリ薬師丸ひろ子の処女喪失シーンとか
三田佳子の愛人がホテルで腹上死とか(笑)
でも私が見た角川映画の中では、もちろんツッコミどころはありますが(笑)
筋は通っているほうだと思います
記者会見のリポーターも本物が登場するというリアリティ
原作はサスペンス劇場の巨匠、夏木静子
大雑把なストーリーは
偶然大物女優の部屋を訪ねた劇団研究員が
心臓発作で死んだ愛人の始末を頼まれ、舞台の代役と成功を約束されます
スキャンダルの身代わりになり、約束通りスターの階段を登っていく
というもの
腹上死はともかく(笑)
こういう世界では、女優の卵が大物男性の愛人になり援助を受ける
と、いうのは大昔からある風習でしょう
ただいくらコネがあっても、2世でも、政治家と違い芸能界は実力の世界
才能なり美貌がなければ続かないし、「#MeToo」 問題
まあ今では不倫どころか、コロナ自粛の最中に飲みに行っただけでも
ネットや週刊文春で叩かれる、芸能人にとっては厳しい時代
ちょっとした出来心で、芸能界から追放されてしまう可能性さえあります
そう思うと、昔が良かったかどうかわかりませんが(笑)
薬師丸は同じ劇団の看板男優三田村邦彦が好きですが
三田村は誰がどう見ても、大勢の若い女を食べている遊び人
世良公則は役者志望でしたが挫折して不動産会社に勤めています
薬師丸が好きで支えようとしますが、彼女の気持ちはイマイチ
世良公則はかっこいい昭和のストーカー(笑)
嘘をつかず、自分を隠さない
でもヒロインは貧乏だけど堅気で真面目に仕事もしている世良より
腐っていても輝いて見える芸能界にしか目がいかない
「成功したら花束を持って祝福して、それを別れの挨拶にしよう」
ラスト、世良が一緒に住もうと提案したアパートに薬師丸は向かいます
そこには世良がいて、アパートは他の誰かが契約した後でした
もしアパートが誰にも借りられていなかったら
彼女は男の胸に飛び込んだかも知れない
でも男が暮らそうと言ったアパートはもうない
彼女が再び女優を目指すかどうかはわかりません
ただそのことは、誰にも頼らず自分ひとりの力で生きていく
そんな決意をしたのだと思います
誰かに甘えては、夢は叶えられない
意外と良かったのは薬師丸にヒロインの座を奪われる高木美保
美人だし、新人演技もいいし、声もいい
なんで女優より、農業とかバラエティ行ったんだろ(笑)
そして風呂もない銭湯通いの、昭和のひとり暮らしの住まい
汚れたガスコンロや流し台、万年布団、紐のぶら下がった裸電球
昭和のフォークソングみたいな「神田川」的貧乏暮らしにちょっと憧れます
若くて独身だったらですけど(笑)
【解説とあらすじ】KINENOTEより
女優をめざす若い劇団の研究生が、ある事件に巻き込まれて主役を演じ、本当の女優になっていく姿を描く。夏樹静子原作の同名小説を、本篇の中の舞台劇におりこみ、「湯殿山麓呪い村」の荒井晴彦と「野菊の墓」の澤井信一郎が共同で脚本を執筆。監督は澤井信一郎、撮影は「愛情物語」の仙元誠三がそれぞれ担当。
劇団「海」の研究生・三田静香は、女優としての幅を広げるため、先輩の五代淳と一晩過ごした。翌朝彼女は、不動産屋に勤める森口昭夫という青年と知り合う。「海」の次回作公演が、本格的なミステリーに加え、女性であるがゆえの悲劇を描いた『Wの悲劇』と決定した。キャストに、羽鳥翔、五代淳と劇団の二枚看板を揃え、演出は鬼才で知られる安部幸雄である。そして、事件全体の鍵を握る女子大生・和辻摩子役は、劇団の研究生の中からオーディションによって選ぶことになった。オーディション当日、静香の親友・宮下君子は、芝居の最中に流産しかかり病院にかつぎ込まれた。子供を産むと決心した彼女を見て、静香は自分の生き方は違うと思う。摩子役は、菊地かおりに決定した。静香には、セリフが一言しかない女中役と、プロンプターの役割が与えられた。意気消沈して帰宅した彼女のもとに花束を抱えて昭夫がやって来た。静香がオーディションに受かるものと信じて祝福に来たのだ。彼の楽観さにヒステリーを起こす静香だったが、結局、二人は飲みに行き、その晩、静香は昭夫の部屋に泊まった。翌朝から、彼女は気分を切り変え、全員の台詞を頭に入れ、かおりの稽古を手伝うなど積極的に動く。一方、昭夫はある空家に静香を連れてくると、ここで一緒に住もう、結婚しようと申し込むが、静香は女優への夢を捨てる気になれなかった。大阪公演の初日の幕があがった。舞台がはねた後、誰もいない舞台で摩子を演じている静香を見た翔は、声をかけ小遣いを渡す。彼女にも静香と同じ時期があったのだ。その夜、お礼に翔の部屋を訪ねた静香は、ショッキングな事件に巻きこまれる。翔の十数年来のパトロン・堂原良造が、彼女の部屋で突然死んでしまったというのである。このスキャンダルで自分の女優生命も終わりかと絶望的になっていた翔は、静香に自分の身代りになってくれ、もし引き受けてくれたら摩子の役をあげると言い出す。最初は首を横に振っていた静香だったが、「舞台に立ちたくないの!」という一言で、引き受けてしまった。執拗なマスコミの追求も、静香はパトロンを失った劇団研究生という役を演じて乗り切った。翔は、かおりとの芝居の呼吸が合わない、と強引に彼女を降ろし、東京公演から静香に摩子役を与えた。静香の前に、事件のことを知った昭夫が現われた。「説明しろ」と詰めよる彼に静香は一言もなかった。東京公演。舞台袖で震えていた静香に、翔の叱咤が飛ぶ。静香の初舞台は、大成功をおさめた。幕が降りた後も鳴りやまぬ拍手と、何度も繰り返されるカーテン・コールが女優誕生を祝していた。客席の最後列では、精一杯拍手を送る昭夫の姿もあった。劇場を出た静香は、レポーターに囲まれるが、昭夫の姿を見つけ駆けよろうとする。そこに、事件の真相を知ったかおりがナイフを手に現われ、静香めがけて飛びこんできた。静香をかばい刺された昭夫は、救急車で運ばれた。数日後、引越しをするためアパートを出た静香は、昭夫に連れられてきた空家に立ち寄る。そこには、空家を他の契約者に譲った昭夫がいた。もう一度二人でやり直そうという彼に、静香は、そうしたいけど今のボロボロの私が、昭夫に甘えてもっと駄目になってしまうと言う。そして、芝居を続け、ちゃんと自分の人生を生きていくために一人でやり直すからと、涙をこぼしながら微笑んで去って行った。昭夫はその背中に大きな拍手を送るのだった。