原題の「SUFFRAGETTE」(サフラジェット)とは
19世紀末から20世紀初頭にかけて女性参政権を求める活動家のこと
イギリスといえば紳士の国レディ・ファーストの国という
イメージがありますが
実際には99%が労働者階級か、中流階級
しかもおよそ100年前までは、労働者階級の女性は
男性より格下、平等な人間ではないと見なされ
失業者やホームレス、教育を受けていない貧しい人々といった
下層階級の人々と同じ扱いを受け、差別されていたというのです
労働時間は男性より長く、賃金は安く、その給料も夫に渡します
子育てに家事、パワハラ、セクハラ、DV
そんな彼女らが、わずかな権利を訴えるのはあたりまえのこと
しかしそんな労働者階級以下の女性が投票権を持ち
政治に影響力を及ぼせば、社会秩序を覆すような
危険な思想をもたらしかねないと世の男性や政治家たちは考え
女性たちの意見は却下されてきました
そこで1903年から、婦人参政権活動家であるパンクハースト夫人は
婦人社会政治連合(Women's Social and Political Union, WSPU)を結成し
女性たちに参政権を求める闘争するように訴えます
それはある意味”革命”(テロ)でした
注目すべき点は、パンクハースト夫人のような有名人を据えたのでなく
名もない普通の主婦が、家族を棄て、命までかけて
どうして身を投じるようになったかということ
「サフラジェット」の戦いは、後のIRAやイスラムテロにも
引き継がれたような気がします
1912年ロンドン、モード・ワッツ(キャリー・マリガン)は
夫(ベン・ウィショー)と同じ洗濯工場で働いていました
ある日、洗濯物を届ける途中に洋品店のショーウィンドウに
石を投げ込むWSPUの過激行動に出くわしたのをきっかけに
婦人参政権運動に巻き込まれていきます
下院の公聴会で証言するはずだった職場の同僚
バイオレット(アンヌ=マリー・ダフ)が夫から暴力を受けてしまい
代わりにモードが工場での待遇や、身の上を語ることになりました
そこでモードは、もしかしたら自分は
”違う生き方”を望んでいるのではないかと気が付くのです
しかし、夫も世間の目も婦人参政権運動に冷たい
デモを起こせば逮捕されてしまう
ついにモードは夫によって家を追い出され
最愛の息子は養子に出されてしまうのです
参政権どころか、母親なのに親権のかけらさえない
息子を失ったモードは、心のストッパーが外れてしまいます
過激なテロ行為、刑務所でのハンガーストライキ
そして婦人参政運動の「殉教者」(自爆テロ)
エミリー・デイヴィソンの葬儀で終わります
エンドクレジットでは各国の女性参政権が
認められた年が列記されていきますが、日本の国名はなし
理由は、日本では1947年の憲法記念日から
基本的人権の尊重(自由と平等)によって女性参政権が認められていますが
それもGHQの指令によるもので、立法府の発布でなかったからだそうです
どちらにしても、今の私たちの生活は
過去の犠牲の上に成り立っているということ
そしてこのような差別された弱い立場の人間の
”忘れられた革命”こそ当然議論されるべきで
もしかしたら今起こっているテロ活動を止める
糸口が掴めるかもしれません
純粋な人間ほど、迷いもなく命を棄ててしまう(自殺)
テロリストになってしまうのだから
【解説】allcinemaより
100年前の英国で女性の参政権を獲得するために立ち上がった名も無き女性たちの勇気ある行動を「17歳の肖像」「華麗なるギャツビー」のキャリー・マリガン主演で映画化した社会派ドラマ。それまで社会に対して無頓着だった一人の若い女性労働者が、“サフラジェット”と呼ばれるラジカルな運動を展開した女性闘士たちとの出会いを通じて政治に目覚め、過激な女性参政権運動へと身を投じていくさまを描く。共演はヘレナ・ボナム・カーター、メリル・ストリープ。監督は長編劇映画2作目となる女性監督のセーラ・ガヴロン。
1912年、ロンドン。夫と同じ洗濯工場で働く24歳の女性モード。幼い息子を抱え、劣悪な環境の中、男性よりも安い賃金でより長時間の労働を強いられる過酷な仕事にもかかわらず、この職場しか知らない彼女にとっては、それが
当たり前のことだった。そんなある日、街で女性の参政権を求めるWSPU(女性社会政治同盟)の過激な抗議活動に遭遇する。この“サフラジェット”との出会いが、のちに自分の運命を大きく変えることになるとは、この時はまだ思いもしなかったモードだったが…