おやすみなさいを言いたくて(2013)




「私以上に、私の母を必要としてる子供がたくさんいる」


女性が仕事に生きるとは
こういう事


イスラムの女性が集まり、お葬式のシーン
しかし墓穴の女性は生きていました
身体を清め、たくさんの爆弾の仕掛けられたベストを着る
女性は自爆テロでした
先にお葬式をするのです

監督自身が元報道写真家ということで、リアルな造りに納得です
「自己責任論」「真実を伝える使命感」と「家族」の間で
前線に立つ人間の揺れ動く気持ちも、伝わりました





レベッカジュリエット・ビノシュ)はアイルランド在住の報道写真家
カブールで自爆テロに巻き込まれて重体になってしまいます
夫のマーカス(ニコライ・コスター=ワルドー)は彼女の仕事を理解し
ふたりの娘の面倒を見ていましたが、限界も感じていました

長女のステフは13歳
多感な思春期で、母親を失う恐怖に怯えながらも
母親の仕事を理解したいという気持ちを持っています
7歳のリサは純真無垢で、リサの明るさで家族は救われています





夫に別れを切り出され、戦場カメラマンを辞める決意をしたレベッカ
しかし学校でアフリカ・プロジェクトに参加しているステフを
ケニアの中では安全とされるカクマ難民キャンプの取材に
レベッカは連れていきます

そのキャンプに武装集団が現れたとき
なんとレベッカは泣き叫ぶステラを置いて
写真を撮るために銃撃戦の中に戻ってしまったのです

やがて、そのことは夫に知られ
「死臭がする」と家を追い出されてしまいます


レベッカがステラになぜ写真を撮るのかを聞かれ
怒り(anger)と答えるシーンがあります
最初ステラにはその意味がわかりませんでした

普通の人間は、よその国で他人が殺されても、怒りを感じません
赤の他人に愛を向けることはないからです

でもレベッカは違いました、戦場に住む人間を愛し
世界から忘れさせないという使命に火がついてしまうのです
ステラがそのことに気が付いたことは、母親にはせめてもの救いでした





再び撮影のため、カブールに戻ったレベッカ
しかし、ステラと同じ年頃の少女が自爆装置をつけられた姿に
シャッターを切ることはできませんでした

家族が崩壊して初めて、母親の自我に気が付いたのです
だけどそこにあるのは「怒り」ではなく「絶望」でした


働く女性なら、多かれ少なかれ共感すると思います
仕事が大変な時ほど支えてほしいのに、家族(恋人)の気持ちは離れていく
仕事が認めらても、成功しても、家族は認めてくれない
やがて孤立し孤独になっていくのです

それが危険が伴う仕事をする女性ならなおのことでしょう
ミャンマーの国家顧問であるアウンサンスーチーさんや
日本人女性初の宇宙飛行士の向井千秋さんの夫のような
理解ある男性と巡り合うのは奇跡なのです

どっしりとした重圧が残る作品
男はいいな、と思います



【解説】allcinemaより
「ショコラ」「トスカーナの贋作」のジュリエット・ビノシュが危険な紛争地帯で活動する女性報道写真家を演じ、愛する家族と社会的使命の狭間で葛藤する姿を描いたドラマ。共演は「ヘッドハンター」「オブリビオン」のニコライ・コスター=ワルドー。監督は自身も報道写真家として活躍した経験を持つエリック・ポッペ。
 アフガニスタンの首都カブール。報道写真家として命がけの取材を続けていたレベッカは、自爆テロに巻き込まれて本当に命を落としかける。文字通り九死に一生を得て家族の待つアイルランドへと帰国したレベッカ。理解ある夫のマーカスからも、2人の娘は母の死に怯えながら暮らしており、これ以上は耐えられないと辛い胸の内を明かされる。実際、長女のステフはすっかり心を閉ざしてしまい、母を受け入れてくれなくなっていた。そんな家族の気持ちを考え、戦場には戻らないとマーカスに約束するレベッカだったが…。