グランド・マスター(2013)


評価はわかれているようですが
私は好きです

いつものウォン・カーウェイの映画

 

映画は美しくないと映画でない

ノスタルジーに誘う色彩マジック

女性の顔が最も美しく見える角度を知り尽くしている

 

手遅れになるまで思いをじっと閉じ込めてしまう

決して交わらない主人公たち

心に切なさの破片が刺さります

 

詠春拳(えいしゅんけん)を世界に広めたブルース・リーの師

葉問(イップマン)の物語

 

1936年、中国

北の宗師(グランド・マスター)ゴン・パオセンは引退を決意

一番弟子のマーサン(マックス・チャン)を跡継ぎにしようとしますが

野望を抱くマーサンに怒り、佛山から追い出します

そして武術界の未来を担えるのは南の宗師イップ・マン(トニー・レオン)

適任だと自分の引退試合の相手に指名します


それを不服に思った奥義六十四手をただ一人受け継ぐ

ゴンの娘ルオメイ(チャン・ツィイー)

イップ・マンを金楼に呼び出し勝負するのです

 

同じ高みを目指すふたり

熾烈な闘いで交わす視線

重なりそうな唇、感じる呼吸

 

イップ・マンに勝ち東北に旅立つルオメイ

しかしその時の戦いは、いつまでも甘く切なく甦るのでした

 

日中戦争が勃発し、日本軍が佛山に侵攻

イップ・マンは貧窮に苦しむようになり

愛娘の餓死という悲劇に襲われます

やがて香港に渡り道場を開くことになります

 

マーサンは日本側につき
マーサンの人格を問題視したゴンは彼を破門します

しかしそれによって逆上したマーサンによって殺害されてしまうのです

 

その日からルオメイは結婚を捨て、女であることを捨て

父の復讐のためだけに生きるようになります

 

途中日本軍に追われる八極拳の宗師
カミソリ(チャン・チェン モデルは劉雲樵)

助けるところでルオメイといい感じになるのかな

と思ったらそうでもなく()
 

バトルシーンもかなりかっこいいけど

ストーリーには関係ない()
 

しかしこのカミソリ役のチャン・チェンは相当な修練をしたらしく

実際の八極拳の大会では優勝までしたそうです

 

ここでのイップ・マンはヒーローではありません

ルオメイへの思いは歴史に翻弄され時期を逸い

家族さえ守れず、故郷に置いてきて失ってしまう

そんな挫折した人間なのです

 

ルオメイもそうです

マーサンへの復讐も、イップ・マンへの告白も

すでに失ってしまったものに対するもの

彼女の中には虚しさしか残らなかったのです

 

ついにはアヘンに逃避するしかありませんでした

すべてが見果てぬ夢となることを願っているかのように

 

運命の人と結ばれることができなかったとき

破滅にしか向かえない人間の弱さ

 

ウォン・カーウェイ作品が好きな人なら満足できると思います

 


【解説】allcinemaより

花様年華」「2046」のウォン・カーウァイ監督が、ブルース・リーの師匠としても知られる伝説の武術家・葉問(イップ・マン)の波瀾の人生を圧倒的な映像美とともに描く歴史カンフー・アクション大作。それぞれの流派を極めた長“宗師(グランド・マスター)”たちが、中国拳法の南北統一を巡って繰り広げる激しい抗争の行方と、そんな彼らが戦争という大きな時代の波に翻弄されていく愛と宿命の物語を壮大なスケールで描き出す。主演は「ラスト、コーション」「レッドクリフ」のトニー・レオン、共演にチャン・ツィイーチャン・チェン、マックス・チャン。
 1930年代の中国。北の八卦掌の宗師、宮宝森(ゴン・パオセン)は引退を決意し、生涯をかけた南北統一の使命を託す後継者を探す。第一候補は一番弟子の馬三(マーサン)。一方、パオセンの娘で奥義六十四手をただ一人受け継ぐ宮若梅(ゴン・ルオメイ)も、父の反対を押して後継争いに名乗りを上げる。そんな中、パオセンが指名したのは、南の詠春拳の宗師で人格的にも優れた葉問(イップ・マン)だった。納得のいかないマーサンは、師であるパオセンへの恨みを募らせる。一方、諦めきれないルオメイも、イップ・マンを秘かに呼び出し、みごと八卦掌奥義六十四手で勝利を収めるのだったが…。