ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ(1942)



父からお礼を、母からお礼を、妹からお礼を

 そして私からお礼を申し上げます


ヤンキードゥドゥル」はアメリカの民謡で独立戦争時の愛国歌
日本でもアルプス一万尺」でお馴染みのメロディー

その作曲者であり、ブロードウェイミュージカルを世界に広めた実力者

アメリ愛国心の象徴、ジョージ・M・コーハンの伝記的作品


タイムズスクエアの真ん中にたつコーハン氏の銅像

今でも観光客の人気スポットとなっているそうです




もともと主役に予定されていたのはアステアだったそうですが

右寄りの戦意高揚作品であるため断られたそうです

でもキャグニーで正解だったと思います

コーハン本人もキャグニーのほうが

自分に似ているという理由で気に入ったそうです


そしてギャグニーの歌と踊りのうまさには驚きます

アステアやジーン・ケリーに決して引けをとりません

ただ顔は怖い()


アカデミーでは主演男優賞、ミュージカル映画音楽賞、録音賞を受賞

1993年にはアメリカ国立フィルム登録簿に登録された名作




1937年、ルーズベルト大統領を演じた

ホンモノの大統領からホワイトハウスへの招待状が届きます

そこでコーハンは大統領に自分が歩んだ道を語ることになります


父(ウォルター・ヒューストン)と母(ローズマリー・デ・キャンプ)

妹(ジーン・キャグニー)のコーハン4人組は

歌と踊りを舞台で披露して生計を立てていました

とくに長男のジョージ・M・コーハン(キャグニー)には

天性の才能がありました

しかしコーハンの自信家で傲慢な性格が災いし

劇場主と喧嘩して仕事を失ってしまうのがほとんどでした




作詞作曲をしても買ってくれる相手もいない、そんな時

同じく仕事にあぶれた舞台作家、サム(リチャード・ウォーフ)と出会い

共同製作者として上演した「リトゥル・ジョニー・ジョーンズ」が大ヒット

その2年後の「ブロードウェイから45分」も成功し

ブロードウェイにコーハンの時代がやってきます


次世界大戦では前線慰問を行い

オーヴァー・ゼア(かなたへ)」は戦場の兵士たちに愛され歌われ

コーハンの絶頂期がやってきます




しかし、両親も妹も死に、コーハンは引退

妻と(ジョーン・レスリー)と農場でひっそり暮らしていましたが

元相棒のサムから再び舞台の主役の話が来るのです

それがルーズベルト大統領役でした


そして議会から二つの歌によりアメリカに貢献したことを認められ

名誉勲章を授けられるのです


ミュージカル映画ですが

成功ばかりではなく、失敗や挫折、家族愛といった

ドラマのなかに歌や踊りが自然に組み込まれていたり

舞台の一部だったりするので違和感がありません


コーハンの父が息を引き取る時のキャグニーの演技は感動的ですし

階段を降りるときのタップダンス

ラストも行進もいいですね




ただ、個々には好きなシーンがたくさんあるものの

あまりのアメリカ万歳のプロパガンダ

古き良きアメリカの神格化は、やはりいただけない

途中でトランプ氏の顔まで浮かんできます()


愛国心も平和な時にはいいけれど

敵が現れたとたんに強烈な敵意と自己犠牲に変わってしまう

無責任な戦意高揚は危険であると考えさせられます




【解説】allcinemaより

 ブロードウェイの父と呼ばれたジョージ・M・コーハンの生涯を通してアメリカ賛歌を描いた大作。ギャング映画で名を馳せたJ・キャグニーがヴォードビリアン出身の真価を発揮して、製作者であり作曲家であり役者であったコーハンを見事に演じる。ふんだんにフィーチャーされた歌と踊りのシーンも素晴らしいが、丁寧に作られたドラマ部分がこの映画を忘れ難い物としている。この傑作は長い間日本では上映されず劇場初公開は半世紀近く経った'86年の冬であった。ビデオはステレオ・カラライゼーション版も有り。