秋刀魚の味(1962)

 
「結局のところ、人間は独りです」
 
 
小津安二郎監督の遺作として名高い作品。
 
今でしたら、女性に「いくつになった」
「まだ嫁に行かないのか」などと発言したら
セクハラと非難されてしまいますが。
 
ちょっと昔までは年頃の娘がいたら結婚するのがあたりまえ
良い人がいたら紹介するのが当たり前の時代だったのですね。
 
でも父親の笠智衆は妻に先立たれ
娘の岩下志麻が家事をしています。
父親は娘がいないと困るし、娘もまだ嫁に行く気はなさそう。
 
だけど同窓会で恩師の娘が結婚せずに
父親の面倒を見ている姿をみて
友人たちは、ああなったらどうする?と責め立てます。
 
娘を嫁にやる決心をする父親・・・
 
もとは海軍のエリートで
今は会社員としてそれなりの地位にあるのでしょう。
娘も息子も立派に育ち、友人にも恵まれ
世間の人が見たなら羨む、そんな男。
 
だけれど戦争には負けてしまい
妻には先立たれ
娘の恋を叶えてあげることができなかった。
 
どうにか縁談がまとまった
娘の結婚式のあとがとても寂しいですね。
女性がいなくなってしまった家というのは
こんなにも暗く、寂寥感あるものなのでしょうか。
 
「あぁ・・ひとりぼっちか・・・」
セリフのひとつひとつが心に痛い。
 
孤独という名の残酷。
人生はほろ苦い
秋刀魚の味」のようなものなのでしょう。
 
 
 

 
概要】ウィキペディアより
これまでに小津安二郎監督が一貫して描いてきた、妻に先立たれた初老の父親と婚期を迎えた娘との関わりを、娘を嫁がせた父親の「老い」と「孤独」というテーマと共に描かれている。また、笠智衆演じる父親と中村伸郎、北竜二演じる友人たちとの応酬が喜劇味を加えている。
主演の笠は孤独な父親を見事に演じたほか、娘役の岩下志麻も快活な演技を披露し、これまでの小津作品とは違った味わいを醸し出している。『彼岸花』『秋日和』に続いて高橋とよが「若松の女将」役で出演している。
この作品を発表した翌年の1963年、小津監督は60歳の誕生日に亡くなったため、この作品が彼の遺作となった。