突然炎のごとく(1961)

 

 
 
「君を愛してる」と男は言った
「待って」と女は言った
「私を抱いて」と女は言いかけた
「もう用はない」と男は言った

 
 この4行のセリフにもう惹かれました。

 
レビューの難しい作品です。
好き嫌いも、評価も、鑑賞した方でずいぶん別れるようですね。
私は好きです。
 
ジャンヌ・モローが凄いのです。
若いのに、時折人生に疲れた老婆のような雰囲気
美しさと醜さの絶妙なバランス。
彼女ならではの世界は、掴みどころのないヒロインの役柄にぴったりでした。
 
そして首筋がゾクっとするような
そんな男性が女性に対する本音の言葉がいっぱい。
ボードレールを引用して女性を侮辱してみたり
一方ではロマンチックで官能的なのです。
 
ドイツ人のジュールとフランス人のジムは祖国は違いますが
文学が好きという共通点で意気投合し親友になります。
ふたりはミュンヘンからやってきたカトリーヌというひとりの女性に一目惚れ。
美神のような彼女に恋をしてしまいます。
 
待ち合わせの時間に遅れたカトリーヌを待っていなかったジムに怒り
やさしいジュールと結婚したカトリーヌ。
女の子を出産するものの、ジュールとの生活に満足せず
やがて彼女は違う男性と浮気をします。

 
「彼女は特に美しくもない
 聡明でも誠実でもない
 だが女そのものだ」

 
カトリーヌを失いたくないジュールは、ジムを呼び
そしてカトリーヌとセックスしてくれと頼みます。
 
常識で考えたなら恋愛とはパートナーとふたりで育むもの。
しかしジュールとジムとカトリーヌの3人は
3人ではじめて恋愛が成り立つのです。
だれか一人が欠けても不完全。
 
カトリーヌは愛に自由で我儘で
確かにエキセントリックな女性でしょう。

しかし、生涯たった一人のパートナーだけを愛し続けることが出来るひとは
世の中にどれだけいるのでしょうか。
 
形式のない散文詩的なナレーションも
ジャンヌ・モローの歌う歌の歌詞も意味深でした。
私はとても言葉にヨワいのです。
 
お気に入りでお願いします。
 
 
Le Tourbillon
つむじ風

彼女は指全部に指輪をしていた
手首にはたくさんの腕飾り
そしていつも同じ声で歌っていた
聞けばすぐにうっとりするような声で
 
彼女はオパールのような目をしていた
それは僕を虜にした
卵形の顔をしていた

男を破滅させる女の顔
僕は逆らえなかった
男を破滅させる女の顔
僕は逆らえなかった
 
僕らは出会い、知り合った
僕らは離れ、さらに離れた
僕らはまた会って、お互いを暖めあった
そしてまた別れた
 
二人とも、巻かれたんだ
人生のつむじ風に
ある晩、またそんなふうになった
それはずいぶん久しぶりだった
それはずいぶん久しぶりだった
 
バンジョーの音楽を聞きながら気がついた
彼女の不思議なほほえみに、そのほほえみが大好きだった
彼女の声から逃れられない、美しく青白い顔
こんなに気持ちを揺さぶられたことはなかった
 
歌声を聞きながら酔った
酒は時を忘れさせ
僕は目覚めた
額に焼けるようなキスを感じながら
額に焼けるようなキスを感じながら
 
僕らは出会い、知り合った
僕らは離れ、さらに離れた
僕らはまた会って、そしてまた別れた
人生のつむじ風の中で
 
僕らは回り続けた
二人きりで抱きあって
二人きりで抱きあって
お互いを暖めあった
 
二人とも、巻かれたんだ
人生のつむじ風に
ある晩、またそんなふうになった、やれやれ
彼女が僕の腕の中にまたいたんだ

出会ったとき
知り合ったとき
なぜ別れたんだろう?
なぜ離れたんだろう?
 
また会ったとき
お互いを暖めあったとき
なぜまた離れたんだろう?

それは二人とも
人生のつむじ風に巻かれたから
ずっと回り続けていたんだ
二人きりで抱きあって
二人きりで抱きあって



 
【解説】allcinemaより
ルビッチ映画を愛したトリュフォー描く恋愛もまた三角関係が多かったが、後に撮る女2対男1の「恋のエチュード」と並んで、この、一人の女を二人の男が、三人での友情と育みながらも争う本篇がその白眉だろう。奇しくも原作者は同じH・P・ロシェ。トリュフォーは彼の熱烈な愛読者だったのだ。モンパルナスで出会ったジムとジュール。文学青年同士の二人はやがて無二の親友となり、美しい娘カトリーヌと知りあった時も共に彼女に惹かれてしまう。だが熱烈にアタックしたのはジュールであった。彼はカトリーヌと結婚し、祖国に連れ帰る。だが、第一次大戦後、久方ぶりにライン河畔の夫妻の家を訪ねたジムは、ジュールからカトリーヌと一緒になって欲しいと請われるのだが……。ややクラシカルな設定にいささかの懐古趣味も匂わせず、奔放なモローの魅力に引きずられるように躍動するカメラ、音楽……。心からの自由=愛を希求し、謳歌する三人の姿は正直、眩しすぎる。