紅いコーリャン(1987)

原題は紅高粱」(紅いコーリャン

チャン・イーモウ張芸謀)の監督デビュー作 にして

38ベルリン国際映画祭では金熊賞(グランプリ)受賞

原作は(2012年ノーベル文学賞を受賞した)モー・イェン(莫言)が

1986年に発表した長編小説「紅高粱家族」の

全5章のうちの最初の2章「紅高粱」「高粱酒」を改編したもの

映画化に当たってはモー・イェンも共同脚本に参加したそうです

中国の伝統文化の探求運動(尋根運動)を目指す中で

生まれた作品ということですが

中国共産党プロパガンダ反日映画でもあり

終盤の(1937年から始まる)抗日戦争(中国側からの呼称)では

日本軍が抗日活動家(ゲリラ)の皮を生きたまま剥がすように命じるという

ショッキングなシーンも登場

村上春樹の「ねじまき鳥クロニクル」にも生皮を剥ぐリアルな描写がありますが)

中国人だけでなく、欧州人からも日本軍つまり日本人は蛮人だという

偏見をもたれていたのだなと実感します

コーリャンとはトウモロコシの一種で、特に中国東北部で広く栽培され

主に食料や飼料、高粱酒(カオリャンチウ)の原料になるそうです

だだし高粱酒は紅でなく、実際は無色透明に近いということ

舞台は1920年代末の中国山東省の小さな村

私(語り手)の貧しい農家の娘だった祖母の九児(チウアル)(コン・リー)が

18歳のとき父親によってラバ1頭と引き換えに

50歳になるハンセン病の酒屋の長男に嫁がされるところから始まります

伝統に乗っ取って、御輿に乗り嫁入りの途中

コーリャン畑で覆面の強盗に襲われます

それを助けたのが御輿の担ぎ手のひとり

余占鰲(ユイチャンアオ)(チアン・ウェン)でした

嫁入りから3日後、約束のラバを父親に届けるため故郷に戻る帰り道

九児はまたもや強盗に襲われコーリャン畑に連れ去られます

しかしそれは強盗を装った余でした

ふたりはコーリャン畑で結ばれ(というより強姦に近い)

九児が嫁ぎ先の酒屋に戻ると夫は何者かに殺されていました

(語り手の私は犯人が祖父だと思っている)

未亡人となった九児は

酒蔵の番頭である羅漢(ルオハン)(トン・ルーチュン)の力を借り

酒屋を切り盛りすることになります

そんなある日酒に酔った余がやって来て

九児とのコーリャン畑での出来事を酒蔵で働く皆の前で自慢します

さらに出来上がった高粱酒に放尿するという、最低のクズ

九児がなんで余に惚れたのか私には全くわかりませんが(笑)

九児が村の(精肉業を営んでいる?)匪賊(ひぞく)に誘拐され

身代金と引き換えに戻ってきたものの

その間カメの中で酔いが醒めるまで三日間を過ごした余は

匪賊の頭の三炮(サンパオ)(チー・チェンホア)を脅しに行きます

ところが九児は(九児を元気付けようとした)羅漢たちと

酒造りをし、出来上がった酒を楽しく飲み交わしていました

怒った余は出来上がった高粱酒に放尿すると

九児を抱えて屋敷(寝室)へと向かうのでした

その放尿した高粱酒がとんでもなく美味い銘酒になり酒屋は大繁盛

(いくら美味しくても尿で発酵した酒を飲むなんてまっぴらごめん 笑)

九児は余と結婚、息子の豆官(トウコアン)が生まれ

幸せな日々を送っていましたが(9歳なってもフルチン姿という 笑) 

唐突に日本軍が侵攻してきます

その後抗日運動家になり、日本軍に捕らえられた三炮を

助けようとした(精肉店の)部下が、日本兵の命令で生皮を剥がされ

九児は日本軍に復讐しようと言い、酒作りのメンバーはゲリラ化

日本軍の車両を爆破する計画を立てます

ところがなかなか日本軍はやって来ず、腹を空かせた余たちのために

母親に呼びに行く豆官

(料理を準備する九児があまりにも楽しそうという違和感)

しかし料理を運ぶ途中、九児とお手伝いの女(酒作りの妻)は

豆官の目の前で現れた日本兵に撃たれて倒れてしまいます

日本軍に突撃する余たち

双方皆殺しになりますが、唯一生き残った余と豆官は

夕陽で赤く染まったたコーリャン畑に立ち尽くすだけでした

原作ではその後も余と豆官と羅漢らが

日本軍に立ち向かい、戦う様子が描かれているということです

映画での続編は出来ませんでしたが

2013年にテレビ放映されたドラマシリーズは

中国国内で数々の受賞をしたそうです

 

 

【解説】映画.COMより

撮影監督出身のチャン・イーモウの初監督作品で、デビュー作にしてベルリン国際映画祭の最高賞である金熊賞を受賞するという快挙を成し遂げた一作。
1920年代末の中国山東省の小さな村。貧しい農家の娘である九児(チウアル)は、困窮する家を救うため、半ば売られるような形で造り酒屋の主人のもとに嫁ぐことになる。嫁入りの途中、コーリャン(モロコシ)畑で強盗に襲われるが、それを助けたのが余占鰲(ユイ・チャンアオ)だった。嫁入り後、九児はコーリャン畑で余と再会し、2人は結ばれる。やがて九児は、夫が行方不明となったことで未亡人となり、酒屋を自らの手で切り盛りすることに。そして余と結婚し、子どもにも恵まれ、幸せな日々を送るが……。
九児がまとう花嫁衣装や夕陽に照り返る大地、コーリャン酒など、「紅」を効果的に配した画面構成と映像で鮮烈な印象を残した。主演は、本作がデビュー作で、以降もイーモウ監督とのタッグが続くコン・リー202412月、「張芸諜 チャン・イーモウ 艶やかなる紅の世界」と題した特集上映にて、HDレストア版でリバイバル公開。

1987年製作/91分/中国
原題または英題:紅高梁 Red Sorghum
配給:AMGエンタテインメント