大地(1937)

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原題は「The Good Earth」(良い地球)

原作者のパール・バックウェスト・バージニア生まれですが

幼少時代に宣教師の両親共に中国江蘇省に渡り

英語と中国語バイリンガル、しかも自分は中国人と信じて育ったそうです


自称「生まれと祖先はアメリカだけど、心は中国人」 

本作でも映画化は中国人か、中国系のキャストを望みましたが

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当時のアメリカでは、観客が白人以外の主役を受け入れる

心の準備ができていなかったため、ポール・ムニが起用

ヒロイン役を予定していたアンナ・メイ・ウォンが

ヘイズコード反誤解ルールで降ろされてしまいます

(白人と有色人種が結婚できない法律 ← 現実ではなく映画の中の役なのに!)


おまけに中国で行われた撮影が、中国政府とアメリカで意見が分かれ

カリフォルニアで再撮影しなければならなくなり

ジョージ・Wヒル監督は、ハリウッドに戻ると自殺

撮影はシドニー・フランクリンが引き継ぐまで延期され

プロデューサーのアーヴィング・タルバーグが急死するという

曰く付きだらけの作品

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プロットは、中国の故事「糟糠(そうこう)の妻は堂より下さず」から

「糟糠の妻」とは、酒の糟(かす)や糠(ぬか)しか

食べるものがないほど貧乏と苦労をともにした妻のこと
「堂より下さず」は、表座敷から下げないという意味

そんな妻ほど正妻の地位から追い出してはならないという格言


時代は清朝末期の中国安徽省

小さな畑で麦を栽培し生計を立てている貧農のワンロンは

嫁となる家事奴隷のオランを迎えにいくことになっていました

妻を迎えるのに貴重な水で身体を洗い、ニヤケ顔が止まらない(笑)

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オランは器量よしではありませんでしたが

ワンロンはオランの重い荷物をもってあげたり、桃を買い与えたりします

奴隷扱されるのでは、と怯えていたオランはワンロンの優しさに笑顔になる

ワンロンが捨てた桃の種を拾い、庭に植えて育てることにします


やがて長男が恵まれ、次男と長女も産まれささやかだけど幸せな日々

ワンロンは真面目一徹に働き、お金を蓄え土地を増やしていきました

しかし干ばつや飢饉が続き、一家は仕事を求め都市に移住する決意をします

そこでオランは生きるため、子どもたちに物乞いの指導(笑)

だけどプライドの高いワンロンは、恵みや盗みを決して許せない

家族を守るためなら生きる手段を選ばない妻と、清貧を貫こうとする夫

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そんな夫婦の溝が深くなったある日

辛亥革命の混乱に巻き込まれたオランは

暴徒に襲撃された大邸宅の床に押し倒されてしまいます

気が付いた時、富豪の残した宝石が詰まった袋を見つけました

一家は故郷に戻り、再び農業を営み土地を広げていく

ワンロンがやり直せたのは、すべてオランが拾った宝石のおかげでした

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なのに裕福になって慢心したワンロンは、連れていかれたサロンで

若い歌姫、 蓮華に心を奪われてしまいます

蓮華のため地主の館を買い占め、第二夫人に迎い入れ

蓮華のためオランが大切に守っていたふたつの真珠を譲ってくれと言う

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だけど蓮華は若くてイケメンなワンロンの次男を誘惑していました

その真実を幼馴染の使用人から教えられ

激怒したワンロンは長年の友人をクビにし(ばかだ)

次男まで勘当(ばかだ)

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権力とお金を得た人間は、かっての苦労を忘れ

大切な人との絆さえ見えなくなってしまうのか

そんな身勝手な男に再び試練はやって来る


大空を埋め尽くし麦畑を襲来するイナゴの大群

この映像はかなり迫力あります

まさか本当にイナゴの大群がやってくるのを待って撮影したのでしょうか(笑)

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しかし農政を学んだ長男の機転と

運よく風向きが変わったおかげで、被害は最小限に食い止められました


その時やっとワンロンは自分の成功は

家族の協力あってだと気が付いたのです(遅いよ)

次男と和解し妻に真珠を返したものの、時すでに遅し

オランは過労で命尽きようとしていました

そして「土地は農民の命」という言葉を残し息絶えてしまいます

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ワンロンは結婚の日オランの植えた桃の木の前にひざまずき

「おまえが大地だった」と嘆くのでした


ポール・ムニとルイーゼ・ライナーという白人が

中国人を演じたことに違和感や酷評もあるようですが

私は数分で白人だとか中国人だとかは、気にならなくなりました

個人的には、ルイーゼ・ライナーよりアンナ・メイ・ウォンちゃんを

眺めたかったという願望は残ったけど(笑)

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名作や傑作のリメイクは、好きではないのですが

この作品に関しては、ウォン・カーウァイの新解釈とか

中国ロケ、中国人キャストで制作し直してもいいのではないかと思います


それでこそパール・バックの思いも、浮かばれるというもの

アジアとアメリカを繋いだ、偉大な女性なのだから



【解説】KINENOTEより

パール・バック出世作の小説を映画化したもので、「科学者の道」「黒地獄」のポール・ムニと「逢瀬いま一度」「巨星ジーグフェルド」のルイゼ・ライナーとが主演する。脚色は、オウエン及びドナルド・デーヴィスの舞台劇を参酌して「ロミオとジュリエット」のタルボット・ジェニングス、「白い蘭」のクローディン・ウェスト及びテス・スレシンガーが協力して当たり、「ダアク・エンゼル(1935)」「白い蘭」のシドニー・A・フランクリンが監督に任じ、「裏町」「巨星ジーグフェルド」のカール・フロイントが撮影した。助演者は「結婚クーデター」のウォルター・コノリー、「沙漠の花園」のテイリー・ロッシュ、「我は海の子」のチャーリー・グレイプウィン、「夕陽特急」のジェシー・ラルフ等で、中国人俳優多数も出演している。