太陽は光り輝く(1953)



ジョン・フォード自ら大好きだとという1
なるほどな、と思う

古きを愛し、かっての敵と友好を築き
弱い立場の者を助け、偏見や差別をもたず
たったひとり、たとえ誰にも理解されなくても
自分が正しいと信じるものへの信念を貫く



フォードの映画はどれもそう、それが真の男だと
フォードが守ろうとするアメリカのあるべき姿だと信じてる

南北戦争から40年後のケンタッキーのある町
元南軍プリースト判事(チャールズ・ウィニンガー)
お酒が大好きでおおらか、再選を目指して選挙活動中です
そこに富豪の跡取りで遊び人のアシュビーが帰ってきて
医者の養女であるルーシー・リーのことが気に入ります



ルーシー・リーは将軍の孫でしたが
結婚前に出来きた子なのでしょう

将軍は孫と容認せず、保守的なキリスト教の人々からも
軽蔑されているようです



そんななか、少女暴行の容疑の黒人青年を守るため
リンチしようとやってきた人たちの前に敢然と立ちはだかり
故郷で死にたいとやってきた病気のルーシー・リーの母親の葬儀の行列に
厳しい視線のなかたったひとりで参列するプリースト

プリーストに不利な事件がおこるたび
こりゃあもう、再選は無理だと嘆く同志たち
同じく判事に立候補を表明していた北部派の弁護士が早くも勝利宣言



ここでも政治家の本来の仕事とは、票を動かすためではなく
少しでも生活を豊かにするために努力することで
人々の心が動き、それによって票に繋がるという
理想の選挙へのメッセージが描かれています
しかも楽天的で明るい(笑)

ひとり、またひとりと葬送の行進の列に加わる人たちのシーンから
ラストまでは一気に見せ場のピークになります



牧師の代わりに聖書をよむプリースト判事
判事の栄誉を讃える行進、そこで見せる涙

いつまでも南軍バンザイな、この太ったおじいちゃんが
いつの間にか大好きになっている



これは夢物語かもしれない
だけど自分が正しいと信じている自分の理想は必ず貫く
フォードはそのことを、いつでも教えてくれます




【解説】allcinemaより

かつてウィル・ロジャース主演で、三作の愛すべき南部を舞台にした作品を演出したフォード。その一本がこの映画のオリジナル、「プリースト判事」。と言っても扱われる事件も違い、ロジャースとウィニンガーとではその個性も大分異なって、よりヒロイックな感じの前者に引きかえ、後者は少しウェットだがより円みがある印象。ただ、古き良きアメリカを謳歌する演出ののどかなタッチは変わらない。
 南北戦争から40年経つのに未だそのしこりの残るケンタッキーの田舎町。老判事プリーストは再選を賭けてせっせと運動中。裁判でもちゃっかり自己宣伝するが憎めない好人物である。町一番の富豪の跡取りで遊蕩児アシュビーが帰って町は活気づく。彼は美しく成長した、医師兼小学校長のレーク先生の養女ルーシー・リーに魅了される。対選候補の検事メイデューは北軍派であり、プリーストをはじめ町の顔たちを老いぼれ扱いし、一掃しようと大宣伝。一方の判事は、南軍軍人会と時同じくして開かれた敵の集会にも颯爽と乗り込み支持を訴える。ここは軍歌の歌合戦の趣きもあり、楽しい場面だ。判事は、バンジョーばかり弾いて働かないと旧知の黒人がこぼす、彼の甥っ子に近郊の砂糖きび畑で働くよう奨めるが、少年はそこで起きた白人少女暴行の犯人にされてしまう。逃げてきた彼の無罪を信じかくまった判事は町民の総スカンを食う。折しも町に舞い戻った病身で村八分にされているルーシー・リーの実母の面倒を見たことが更に追いうちをかけ窮地に立たされる判事だったが、暴行の真犯人も分かり、畑の連中の支持も得、まさに天下分け目の一票を自分に投じて再選を果たす。
 懐かしのフォスター・メロディが流れ穏やかな郷愁に浸らせながらも、ルーシーの生い立ちをめぐるサスペンスの暗い蔭りが印象深く、実母の葬儀を彼女の遺言通り執り行ってやる長いシークェンス(わずかな葬列に次第に非難する側も加わって長大なものになる)は奇跡的な感動を呼ぶ。