上海ルージュ(1995)

原題は揺啊揺、揺到外婆橋」(おばあちゃんの橋へ舟を漕いで漕いで行く)で

旧社会の上海方言の童謡

中盤でヒロインと孤島に母親とふたりで住んでいる少女が

ともに「おばあちゃんから教わった」と歌います

搖啊搖     (舟の櫂を)こいで、こいで
搖到外婆橋    こいで(母方の)おばあちゃんの橋までいった
外婆叫我好寶寶  おばあちゃんは、わたしのことを「いいこ」とよぶ
我叫外婆洋泡泡  わたしは、おばあちゃんを「風船ガム」という
外婆罵我小赤佬   おばあちゃんは、わたしを「悪い子」としかった

実生活でも恋人同士だったチャン・イーモウ

コン・リーの最後のコンビ作品

歌姫との別れと少女との出会いが、コン・リーとの別れと

その後のチャン・ツィイーやチョウ・ドンユイとの出会いのようで

現実の思いのように感じてしまいました

愛が冷めた後も、仕事はいくつか一緒にしていますね

ふたりの関係が、映画人生の原点であったことには

今も違いないのでしょう

真っ赤な口紅、深紅のドレス、血塗られた抗争

紅いコーリャン」(1987)「紅夢」(1991)とともに

赤をはじめとする特定の色を強調する色彩構成を用いた

イーモウの「紅三部作」として知られるひとつ

ちなみに「紅いコーリャン」と「紅夢」はまだ見ていません(笑)

1930年

田舎から仕事を求め、叔父を頼って上海にやって来た

14歳の少年シュイシェン

初日から倉庫に連れていかれ

ふたつマフィアのライバルグループのアヘン取引で

ライバルメンバーのひとりが殺されるのを目撃します

その後ボスのタンの宮殿に連れていかれ

タンの情婦で歌姫、通称「お嬢」

チンパオの付き人になることを命じられます

高慢ちきで我儘

ライターの火の付け方も知らないシュイシェンにいらつき

ボスのナンバーツー、タンとも関係をもっていることが

少年の目から見てもすぐにわかります

3日めにしてボスと、ライバルのユウのグループとの抗争があり

叔父はボスをかばって殺され、ボスは腹を刺され重傷

タン一味は小さな孤島に身を隠すことにします

島では農民のクイファという(となりの島に婚約者がいる)未亡人が

食事の面倒をみてくれます

彼女にはアジャオという幼い娘がいました

アジャオと友達になるシュイシェン

おもしろくないのは、お嬢

クイファとアジャオの素朴だった生活に干渉するようになります

シュイシェンの不安は的中

ボスの部下がクイファの婚約者を消してしまいます

お嬢に悪気はなかったのです

ただクイファ親子に昔の自分の姿を思い出しただけ

しかし一味にとって、相手が堅気であろうが

彼らのビジネスが知られることは危険なのです

激怒したお嬢はボスと対峙(たいじ)し

シュイシェンに島を出て逃げようといいます

そのころシュイシェンは過度なストレスによる下痢で

しょっちゅう茂みで用を足していたのですが

ユウ一味の男が「お嬢暗殺計画」を話しているのを聞いてしまいます

あわててボスのもとに向かうシュイシェン

「お嬢が殺される!」

しかしボスは冷静で、全て知っていたと言います

ナンバーツー、タンが裏切り者であることも

そのタンとお嬢が付き合っていたことも

ユウの部下はすでにナンバースリーのチャンが片付けたといいます

タンは生き埋めにされ、クイファも知り過ぎたため殺したという

次はお嬢

お嬢を助けようとしたシュイシェンは、投げ飛ばされて殴られ

気が付いたときは上海行の舟に逆さに吊られていました

お嬢からもらった硬貨が海に落ちる

あんなお嬢でも優しいところはあったのです

本当は誰かに大切に愛されたかったのです

舟にはボスを「おじいちゃん」と慕うアジャオ

ボスは「お母さんはあとからくるよ」

いつかアジャオも「お嬢のようになれる」と笑うのでした

 

 

【解説】MOVIE WALKERより

1930年の上海を舞台に、黒社会の首領の囲い者である歌姫の運命を、7日間という時間のなかで、その召使いとなった一人の少年の視点から描く。当時のモダニズム都市、上海を華麗に再現した美術、撮影が見もの。なお、監督チャン・イーモウと主演コン・リーは本作を最後に私的関係を解消、最後のコンビ作とも言われている。原作は、本作のために書き下ろされたリー・シャオの「門規」。撮影は、「画魂」のリュイ・ユエ、美術は「ハイジャック・台湾海峡緊急指令」のツァオ・チウピン、音響は「さらば、わが愛/覇王別姫」のタオ・チン、編集は、チャン・イーモウとコンビのトー・ユアン。出演は、「花の影」のコン・リー、「菊豆」のリー・パオティエン、「青い凧」のリー・シュエチェン。95年、カンヌ国際映画祭高等技術賞、ニューヨーク映画批評家協会賞撮影賞、ロサンゼルス映画批評家協会賞撮影賞、D.Wグリフィス賞外国映画賞/表現の自由賞をそれぞれ受賞。また、第68回アカデミー賞撮影賞、ゴールデン・グローブ賞外国語映画賞にノミネートされた。