ミセス・ハリス、パリへ行く(2022)

ディオールオートクチュールを着てどこにいらっしゃるおつもりなの?」

ディオールは私の夢なのよ」

 

原題は「Mrs Harris Goes to Paris」(ハリス夫人、パリへ行く)

原作は「ポセイドン・アドベンチャー」の原作者でもあるポール・ギャリコ

「Flowers for Mrs Harris」(日本語タイトルは「ハリスおばさんパリに行く」)

 

困っている人が、親切や優しさに助けられるという

貧しくても真面目に働く労働者への賛歌

いわゆる古き良き時代の物語で

こういう物語を嫌いな人って、たぶんほとんどいない

誰もがハリスおばさんの虜になります(笑)

 

しかも舞台がパリだけあって、気遣いがお洒落

ディオール(の全面協力)だけあってエレガント

一方でちょっとした皮肉も感じられますね(笑)

1957年のロンドン

エイダ・ハリス夫人は、第二次大戦に出征したまま帰らない夫を待ちながら

掃除婦として働きつましい生活をしていました

しかしハリス夫人の雇い主は若い女性と不倫していたり

奥さまは金持ちのくせに賃金を払わなかったりと誠意がありません

そこに夫の戦死を知らせる指輪が届き、さらに落ち込んでしまいます

 

そんなとき、奥さまの寝室にあった

500ポンドもするディオールのドレスに魅了され

心に火がついてしまいます

「私もディオールのドレスを買う!」

 

だけど全財産はたいても500ポンドにはほど遠い

パリ行きの旅費だって必要なのです

思いがけず戦争未亡人の年金を受け取った彼女は

ドッグレースに「ひらめき」だけで全財産を賭けることにしますが

結局スッてしまい一文無し

ですがハリス夫人の友人(でダフ屋)のアーチ-が

サプライズで本命のワンちゃんに賭けておいてくれたおかげで

ハリス夫人はパリ行きの切符を手にすることができます

ところが憧れのパリ、花の都パリは

(労働者の不満がたまり)ストライキのせいでごみ溜状態

 

ディオールの本店では、支配人のクローディーヌ(イザベル・ユペール)に

追い返されてしまいます

ディオールでは偶然10周年記念のコレクションが行われる予定で

いくら「お金を持っている」と訴えたところで

オートクチュールの内覧会には特別な顧客しか招待されないのです

しかし事情を知ったシャサーニュ侯爵(ランベール・ウィルソン)の計らいで

コレクションに参加できたハリス夫人は華麗なショーにときめき

その中でも「テンプ

テーション(誘惑)」という

ワインレッドのドレスに恋をしてしまい注文することにします

 

しかしハリス夫人のオーダーを知った意地の悪い夫人も同じドレスを注文

ディオールは常連である彼女の注文を優先しなければならず

ハリス夫人はグリーンのドレス「ビーナス」も素敵だわ、と

「テンプテーション」を快く譲るのでした

ところがドレスの完成には、採寸から仮縫い仕上げまで2週間掛かることがわかり

(既製服だと思い込み)日帰りでロンドンに帰るつもりで

パリでの滞在費を持ってないハリス夫人は困ってしまいます

 

落ち込むハリス夫人にスタッフたちは

ドレスをなんとか1週間で仕立てることを約束し

会計士であるアンドレは、同居してる妹が旅行中なので

妹の部屋でよければ泊まってくださいと申し出てくれます


ドレスが出来るまでの間、ハリス夫人はモデルのナターシャや

テーラーやお針子さんらと仲良くなっていきます

ハリス夫人が何度か繰り返す「大変な仕事ね」

勤め先が老舗の高級メゾンか、ただの掃除のおばさんかの違いはあるけれど

階級社会では同じ「労働者階級」にあたるんですね

だからロンドンからやってきた、ハリス夫人の冒険に

ディオールのスタッフたちは最初から興味津々

ハリス夫人の夢を叶えてあげたいと思ったのです

 

さらにシャサーニュ侯爵からイギリス式のお茶に誘われ

ちょっとときめいてしまうハリス夫人

フランス紳士から、あんなふうに小粋に花を一輪差し出されたら

恋をしない乙女はいないわ(笑)

だけど伯爵がハリス夫人のことを気にかけてくれたのは

彼が子どもの頃ウェールズの寄宿舎で苛められていたとき助けてくれた

「寄宿舎の掃除係のモップおばさん」を思い出したからだと知り

傷つきお茶も飲まずに立ち去ってしまいます

やっぱりここでも「階級社会」の壁を見せつけられる

 

一方でディオールは経営的に苦境に立たされており

クローディーヌは従業員たちを解雇する考えを示します

そのことを知ったハリス夫人はストライキを組織し

クリスチャン・ディオールに直談判

アンドレのアイデアである

(ハリス夫人のような)裕福でない人でもディオールが買えるよう

高額なオートクチュールから、プレタポルテ”既成服”に

ビジネスを近代化するべきだと説得します

従業員たちに賛同されず、既製服にも賛成できないクローディーヌは辞任を決意

しかしハリス夫人はクローディーヌに

彼女のリーダーシップスキルこそ、これからのディオールに生かすべきだと

ディオールに戻るよう説得します

 

(お互い実存哲学に関心がある)ナターシャに好意を寄せるアンドレには

想いを打ち明けれるようはからいをし、ふたりは結婚する運びに

 

ハリス夫人のポジティブシンキングのおかげで、皆がめでたしめでたし

ハリス夫人はグリーンのドレスを持ってロンドンに戻りますが

そこで終わりじゃなかった(笑)

ロンドンに着くと、女優を目指している客のひとりがやってきて

「有名プロデューサーとディナーに着ていく服がない」と

「せっかくのチャンスなのに、プロデューサーは女の子の服にとても厳しい」と

悩みを打ち明けます

パリで困っていたとき、たくさんの人たちに親切にされた

ハリス夫人は思わず「私のドレス貸してあげる」と言ってしまいます

 

ところが翌日彼女の部屋を掃除に行くと

焼け焦げたグリーンのドレスが放置され、手紙が残されていました

そこには「ごめんなさい」とは書かれていたものの

化粧直しの時、足元にあったヒーターからドレスに火が燃え移り

危うく死ぬとこだった

最後には「ママの家にいってくるね」と全く反省の色が伺えません

部屋の鍵を郵便受けに入れて立ち去るハリス夫人

それはもう二度とこの部屋に戻らないというサイン

それからグリーンのドレスを川に流すと

(できればドレスは棄てないでお直しに出して欲しかった)

自宅のベッドに潜り込み、引き籠ってしまいます

 

ハリス夫人が死んでるのではないかと心配した

親友のヴァイオレットが窓ガラスを割って部屋に入り励ましますが

一世一代でやっと手に入れたドレス

ハリス夫人は前向きな気持ちに戻ることができません

でも親切は仇にならなかった

突然パリから届いた大きな荷物が届きます
そこにはハリスが一番に欲しかったワインレッドのドレス

「テンプテーション」が入っていました



新聞の記事で「ビーナス」が焼けたことを知ったディオール

「テンプテーション」を注文した夫人に経済的なトラブルがあったことを理由に

ハリス夫人に贈ってくれたのです

 

「テンプテーション」を着てダンスパーティに現れたハリス夫人

美しいドレス姿の彼女を皆が息を呑んで見守るなか

彼女をダンスに誘ったアーチーは

「心もドレスも美しい人」と称えたのでした

なんとこの物語には原作には続編があるそうで(笑)

「Mrs. 'Arris Goes to New York」(1960)

「Mrs. 'Arris Goes to Parliament」(1965)

「Mrs. 'Arris Goes to Moscow」(1974)

なんとハリス夫人、次はニューヨーク

議会(国会)や、モスクワまで行っちゃって

あらゆるトラブルを解決していくという

さすが007の国のおばさん、規模が国際的でデカいです(笑)

 

 

【解説】映画.COMより

アメリカの人気作家ポール・ギャリコの長編小説を、「ファントム・スレッド」のレスリー・マンビル主演で映画化。
1950年代、第2次世界大戦後のロンドン。夫を戦争で亡くした家政婦ミセス・ハリスは、勤め先でディオールのドレスに出会う。その美しさに魅せられた彼女は、フランスへドレスを買いに行くことを決意。どうにか資金を集めてパリのディオール本店を訪れたものの、威圧的な支配人コルベールに追い出されそうになってしまう。しかし夢を決して諦めないハリスの姿は会計士アンドレやモデルのナターシャ、シャサーニュ公爵ら、出会った人々の心を動かしていく。
支配人コルベール役に「エル ELLE」のイザベル・ユペール。「クルエラ」などのジェニー・ビーバンが衣装デザインを手がけた。

2022年製作/116分/G/イギリス
原題または英題:Mrs Harris Goes to Paris
配給:パルコ