原題は「Misery」
原作はスティーブン・キングが1987年に発表した同名小説
今見ると、ストーカーvs頭脳派という古典的な正統派サイコサスペンスで
わかり易く手堅い作りで、特別驚くようなストーリーではありませんが
当時は女サイコというのがまだ珍しく
キャシー・ベイツがめちゃくちゃ怖かったですね
とにかくカメラワークがとても上手い
メアリーとポールを交互に映し
ポールの視線の先だけで彼の考えを推測できるようになっている
そこにいきなりのメアリーのアップという恐怖感
治りかかってた足をハンマーで殴るシーンなんて
どんなホラーより恐ろしいです(笑)
無名の舞台女優だったキャシー・ベイツは
「貴女にピッタリの役があるの」と友達に言われてこの役を受けたそうです
一方のポール役は最初から大物俳優を起用するつもりで
ハリソン・フォード、ダスティン・ホフマン、ロバート・デ・ニーロ
アル・パチーノ、リチャード・ドレイファス、ジーン・ハックマン
ロバート・レッドフォードという
曹操たるメンバーにオファーしたものの断られ
唯一興味を示したウォーレン・ビューティーは
「ディック・トレイシー」の製作と重なり降板
そうしたら誰かが「ジェームス・カーンでいいんじゃない?」みたいな
ベイツもカーンもきっかけはちょっと喜べないものですが(笑)
結果オーライでしたね
ベイツはキング小説の映画で唯一オスカーを受賞したうえ
ベイツの演技に感銘を受けたキングは
彼女のために「ドロレス・クレイボーン」(1995)と
テレビシリーズの「ザ・スタンド」(1994)も手がけたそうです
コロラドの別荘で新作を書き上げ、自宅に戻るため冬の山道を車で走っていた
ベストセラー作家のポール・シェルダン(ジェームス・カーン)ですが
スリップ事故を起こしてしまい車が崖から転落
気が付くとそこはポールの「ミザリー・シリーズ」の
「一番のファン」を名乗る元看護士アニー(キャシー・ベイツ)の家でした
甲斐甲斐しくポールを看病するアニーでしたが
エージェント(ローレン・バコール)に連絡したいというポールに
大雪のせいで道路は通行止めで、電話も通じない
しかも「ナンバーワンファン」なのでポールを尾行していたことを
平然と打ち明けます
ここからもう、ちょっとヤバいなと思うわけですが
アニーはポールが持っていた原稿を読みたいと頼みます
その前にエージェントと病院に連絡すると(嘘を言って)町に行き
「ミザリー」の新作を買ってきたアニー
ところがミザリーが出産で死ぬという結末を読んで大激怒
ポールの原稿を燃やし、車いすとタイプライターを用意
続編でミザリーを生き返らせることを強要します
このキレかたが本当にこういう女いそうだな、と(笑)
お化けでも怪物でもなく、普通の中年女子なのがリアルに怖い
そんな中、ポールの失踪を知らされた
バスター保安官(リチャード・ファーンズワース)と
副保安官でバスターのお茶目な妻(フランシス・スターンハーゲン)
FBIも加わって捜索がはじまり、雪の中から車が見つかると
死体は雪の下に埋まっているだろうから、春まで捜査が打ち切られます
しかし車の傷でドアがこじ開けられた可能性があると思った保安官は
ポールが連れ去られたのではないかと、独自に捜査をはじめます
(方法はポールの本を全巻買って読むこと 笑)
なんとか助けを呼ぼうと模索したポールは
アニーが用意した高級な紙はインクが滲むと
新しい紙を買いに行かせます
その間、アニーが落としたヘアピンで部屋の鍵を開け
電話で助けを呼ぼうとしますが、電話線が繋がっていません
(テーブルのペンギンの置物を落としそうになる)
棚から赤い錠剤(鎮痛剤)をいくつか盗み部屋に戻ると
アニーが帰って来たのが窓から見えます
こういう単純なシーンがいちばんドキドキしますね(笑)
汗だくになっているポールを見て心配するアニー
痛みのせいだと鎮痛剤が欲しいとごまかすポール
やがてポールもアニーの好みの傾向がわかってきて
実はミザリーが高貴な血筋だったという設定に書き換え
「今夜の食事は一緒にどう?君のおかげでミザリーは生還した」と誘い
アニーを感激させます
お洒落してご馳走とワインを用意するアニー
そこでポールはろうそくの灯がほしいと頼み
アニーが席を外している間
彼女のワインに、ため込んでいた鎮痛剤の粉を入れます
なのに乾杯するときアニーが慌ててワインを倒してしまう
チーン・・(笑)
翌日からやけくそでミザリーの続きを書いていくポールでしたが
そこにアニーがやって来て、「愛している」と
本が完成して足が治ればポールを失ってしまうと、銃を取り出します
でも弾はないらしく(笑)車で出かけるアニー
キッチンで包丁を手に入れたポールは
アニーのスクラッチ帳を発見します
そこにはポールの死亡記事と
アニーが看護学校を優等生で卒業し
救急病棟と産科病棟で看護師長に昇進
彼女の勤務先で関係者や乳児が次々に不審死
容疑者として逮捕されていたことがわかります
町で他の車が接触しそうになり、口論になったアニーに
何かを思い出した保安官は彼女のことを調べることにします
図書館の新聞にアニーが起こした事件の記事
そこには「人間の正義を超越した正義 わたしはそれに従います」
それは保安官がメモしていた、ミザリーに出てくるセリフと同じでした
雑貨屋に行きアニーがミザリーの新刊だけでなく
タイプ用紙も買ったことを教えられます
ベッドに戻ると、包丁を出す練習をするポール
しかし帰宅したアニーはやって来ず
ポールが眠りについた真夜中
アニーはポールに注射を打ちベッドに縛り付けます
なぜなら「ペンギンの置物は南向きに置いてる」から
隠した包丁もヘアピンもすべてお見通し
アニーは「愛してる」と、ポールの両足をハンマーで殴るのでした
保安官の車がやって来たことに気付いたアニーは
ポールを地下室に隠し
訪ねてきた保安官に家に入れ、ポールのことを聞かれると
「心配だわ ナンバーワンファンだもの」と
タイプライターを買って彼に似せて書いていると話します
保安官が帰ろうとすると地下室から物音
ポールが「ここだ!」と叫び
保安官が地下室のドアを開け助けに行こうとしたとき
アニーは保安官を撃ちます
保安官、もっと活躍すると思ったのにあっけなく逝去
私も死んで、あなたも死ぬと言うアニーに
ポールはミザリーを書き上げるので、儀式の用意をするように伝えます
ポールには物語が完成すると普段は吸わないタバコを1本吸い
ドン・ペリグノンを飲むという決まりがあったのです
さらに「今夜はグラスが2つだ」とアニーを喜ばせたところで
ポールはマッチで原稿に火をつけます
火を消しに来たアニーをタイプライターで殴ると
アニーはポールの肩を撃ち
ポールはアニーの顔を殴り、口に原稿の燃えかすを詰めます
さらに起き上がって反撃してきた彼女の足を引っ掛け
アニーはタイプライターに頭を打ちますが、再び反撃
ポールはアニーの腕を噛むと、豚の鉄の置物で殴り
やっとアニーは死んだのでした
1年半後、新作が文学賞の候補になるとエージェント
(老けてもカッコいいローレン・バコール)
そこにアニーが怒りの表情で近づいて来ます
と思ったら給仕係の女性でした
ポールに気付いた彼女は「ナンバーワンファンです」と
彼に声を掛けたのでした
【解説】映画.COMより
スティーブン・キングの同名小説を「スタンド・バイ・ミー」のロブ・ライナー監督が映画化した傑作サイコスリラー。ベストセラー小説「ミザリー」シリーズの人気作家ポール・シェルダンは、雪道で事故に遭い瀕死に陥ったところを、近くに住む元看護師の中年女性アニーに救われる。「ミザリー」シリーズの熱狂的な愛読者である彼女は、両足を骨折したポールを献身的に介護するが、新作でヒロインが死んだことを知ると逆上して態度を一変。命の危険を感じたポールは脱出を試みるが……。狂気を暴走させる愛読者をキャシー・ベイツが怪演し、第63回アカデミー賞で主演女優賞に輝いた。ポール役に「ゴッドファーザー」シリーズのジェームズ・カーン。
1990年製作/108分/アメリカ
原題または英題:Misery
配給:日本ヘラルド映画