マウス・オブ・マッドネス(1994)

原題は「In the Mouth of Madness 」(狂気の口の中)

タイトルはハワード・フィリップス・ラヴクラフト

At the Mountains of Madness」(狂気の山脈にて)をもじったもので

ラヴクラフトへの敬意と、彼の作品のテーマへの言及がまれていて

スティーブン・キングのことも意識していているそうです

ラヴクラフトと同じニューイングランドの集落を舞台にした小説を書いている)

スティーブン・キングより売れてる設定というのが分かりやすい(笑)

キングにもカーペンターにも影響を与えたというクトゥルフ神話

ラヴクラフト全集はウチにもあるので(次男が高校生の時に読んでいた)

いつか読まないといけませんね(笑)

物語は保険調査員が失踪したホラー作家を探すというもので

その小説を読むと、どこまでが現実か悪夢なのかわからなくなり

狂気のなかにどんどん追い詰められていくというもの

ジョン・カーペンターデヴィッド・クローネンバーグとデヴィッド・リンチって

比べられることが多いと思うんですけど

カーペンターが(一般人でも)いちばん分かりやすく

とっつきやすいかもですね(笑)

B級感溢れているわりには(褒めています)スタイリッシュな演出

特に前半は特殊効果など使わずとも薄気味悪いものになっていて

かといってクリーチャーもいつもながら逸品

微妙に人間やもとの動物の原型を留めているところがうまいのよ

ダイナーで斧を持った男に「サター・ケインの本は読んだか?」と尋ねられた

フリーの保健調査員トレントサム・ニール

男は警官に射殺されましたが、その夜トレントはケインの熱狂的なファンたちが

「マウス・オブ・マッドネス」の新刊はまだ発売されないのかと

暴動を起こしているニュースを見ます

翌日、アルケイン出版社の編集長(チャールトン・ヘストン)に

呼び出されたトレント

失踪したサター・ケインを編集者のリンダ(ジュリー・カーメン)と捜し出し

「マウス・オブ・マッドネス」の原稿を受け取るよう依頼されます

しかもダイナーで射殺された斧男が

ケインのエージェントだったことを知らされます

調査の参考のためケインの本を読んだトレントは思わず夢中になってしまい

そのうち居眠りしてしまうと奇怪な夢にうなされます

そこで本の表紙にヒントがあることに気付き、切って貼り合わせると

ニューイングランドの古い町の地図になることがわかります

リンダと交代で運転しながら地図の町に向かうトレント

リンダは運転中トレントが寝ていると、不思議な幻覚に襲われ

気が付くとケインの小説に出てくる架空の町「ボブス・エンド」に着きます

そして小説のとおり女主人のいる「ピックマン・ホテル」があり

奇妙な絵が掛かっていて、窓からは教会が見えます

ふたりが教会に行ってみると、ライフルを持った男たちが

「子供たちを返せ」と叫び

扉が開きケイン(ユルゲン・プロホノフ)が現れると

ドーベルマンが男たちを襲います

出版社の宣伝のための演出だと疑うトレント

これは現実だと言うリンダ

夜になると、リンダはなにかに憑りつかれたように教会に向かい

ケインの魔性の虜となり怪物と化してしまいます

ピックマン夫人には触手が生え、トレントは車で町を脱出しようとしますが

何度も同じ場所に戻ってしまいます

出口のない町で気を失ってしまうトレント

目が覚めるとケインがいて「マウス・オブ・マッドネス」の原稿を

持ち帰るよう言います

「邪悪な力が強まり、かつて地上を支配していた怪物たちが復活する日が近い」

「私の小説はすべて現実だ、君はこれを世間に公表しなければならない」

エージェントがトレントを殺そうとしたのは、この本の主人公はトレントであり

主人公が死ねばこの小説は存在しなくなると考えたからだと

自分の身体を引き裂くと彼の身体からクリーチャーが湧き出ます

トレントは逃げる途中で原稿を捨てたり燃やしたりしますが

なぜか手元に戻ってきてしまう

気が付くと普通の田舎道にいて、出版社に戻り編集長に会うと

リンダという女性はいないし

原稿は何ヶ月も前にケインから受け取りすでに出版済み

ベストセラーとなり映画上映も決まっていると知らされます

もはや現実と小説の区別がつかなくなり

頭がおかしくなってしまったトレント

ケインの小説を買った若者を衝動的に斧で殺してしまいます

精神病院に入れられたトレント

ウレン博士(デイヴィッド・ワーナー)に全てを話しますが

信じてもらえません

そんなある日、突然病棟が静かになり、病室のドアが開いていました

病院から出ると破壊された無人の街の中に、映画館があり

In the Mouth of Madness WITH JOHN TRENT」のネオン

映画館に入ったトレントは誰もいない客席で

彼自身が主人公の映画を見て笑うのでした

(ポップコーンは売っていたんだ 笑)

 

【解説】KINENOTEより

失踪した作家を追う男が、次第に現実と虚構の入り交じった世界に迷い込むさまを描いたホラー。虚実を意図的に入り交じらせ、観客に判断を委ねた重層的な物語の構造が刺激的。「ハロウィン」「遊星からの物体X」をはじめ、ホラー映画に才を発揮するジョン・カーペンターが、敬愛する幻想小説の大家H・P・ラヴクラフトの創造した暗黒神話体系“クトゥルー神話”にオマージュを捧げた意欲作。製作は監督夫人で「スターマン 愛・宇宙はるかに」以降の全作品に参加しているサンディ・キング。脚本は「エルム街の悪夢 ザ・ファイナル・ナイトメア」のマイケル・デ・ルカ、撮影は「パラダイム」「ゼイリブ」のゲイリー・B・キッビ。音楽はカーペンターと、彼が監督・出演したテレビドラマ『ボディ・バックス』(V)でも組んだジム・ラングの共同。美術はジェフ・スティーヴン・ジン、数々のクリーチャーの特殊メイクは『ボディ・バックス』のKNBエフェクツ社、特殊視覚効果は「透明人間(1992)」「マスク(1994)」のILMがそれぞれ担当。主演は前作「透明人間(1992)」でカーペンターと組んだ「オーメン 最後の闘争」「ピアノ・レッスン」のサム・ニール。助演でスティーヴン・キングを思わせる恐怖小説作家に「U・ボート」「対決(1989)」のユルゲン・プロホノフが扮するほか、「ジャグラー ニューヨーク25時」「フライトナイト2 バンパイアの逆襲」のジュリー・カーメン、「ベン・ハー(1959)」「トゥルーライズ」のチャールトン・ヘストン、「タイム・アフター・タイム」「ネクロノミカン」のデイヴィッド・ワーナーらが脇を固めている。