ブラ!ブラ!ブラ! 胸いっぱいの愛を(2018)

 

原題は「Vom Lokfuhrer, der die Liebe suchte...」

愛を求めていた電車の運転手さんから...

 

アゼルバイジャンの首都バクーにある”Schanghai”(上海)という地域

日本でも列車が住宅街ギリギリを通ってる場所がありますが

ここでもギリギリまで線路脇に建てられた家々

そこで暮らす人々は、沿線の上にロープをかけ洗濯物を干したり

テーブルを出してチェスをしたり、子どもたちがボール遊びをしている

生活空間の一部なんですね

信号が変わると少年がホイッスルを吹きながら走ってきて

列車が来ることを知らせます

人々はあっと言う間に洗濯物やテーブルを片づけ

列車が通り過ぎるとまたすぐに沿線上に現れるという(笑)

 

昔「世界の車窓から」か「世界ふしぎ発見」だったで見たことがあります

列車の走行にあわせて線路に入ったり出たりする

絶妙なタイミングには驚かされます

ドイツ人監督のファイト・ヘルマーも

列車が家々のどれだけ近くを通過するかを見せたかったそうです

しかし撮影許可を取っていなかったため

住民の協力で密かに、かつ即興で撮影したそうです

ある意味、一部ドキュメンタリーといえるかも知れません(笑)

 

しかし撮影終了後上海は老朽化と開発のため取り壊され

この風景はもう見ることができないそうです

こんな狭い住宅街を抜けていくわけですから

列車には様々な生活用品が引っ掛かります

定年退職を控えた運転士ヌルラン(ミキ・マノイロヴィッチ)

勤務が終わると列車に引っ掛かった物を

住民に届けてから自宅のある「キナルグ」という村に帰るのが日課

帰り道、いつも子羊を抱いて本を読んでいる

キナルグの娘に声をかけます

ヌルランは彼女を嫁にもらおうと思っているんですね

退職を迎えた日ヌルランは

たくさんのプレゼントを抱え彼女の家族に挨拶に行きますが

娘の母親が用意したダンベル(ケトルベル)を持ち上げることができず

あっけなく追い出されてしまいます

そこで彼はある日列車の窓に引っ掛かっていた青いブラジャーを洗い

持ち主を探しに行くことにします

それは運転士をしていたとき着替えるのを見かけた

「素敵な後姿の女性」のものではないかと期待したからです

 

「ガラスの靴」ならぬ「青いブラジャー」にぴったりの

バストの持ち主を花嫁にしたいオジサンの「シンデレラ物語」

キナルグは世界文化遺産のため、アゼルバイジャン当局に撮影を禁止され

グルジアで撮影したそうです

1件ひと部屋というのが特徴で、グルジアも似た文化なのかも知れませんね

 

90分間全くセリフがありませんが(無声映画のような字幕もない)

アゼルバイジャンは鉄道もロシア、ジョージアアルメニア

イランとの国境を接続していて

多様な民族や言語が存在するからこそ

「言葉」ではない方法で通じ合う手法も日常にアリなんでしゅね

そこに殿方の「おっぱい好き」という万国共通のテーマ(笑)

それは私たちが見て、さほど笑えるものではありませんでしたが(笑)

アゼルバイジャンでは約95%がムスリムということ

ブラジャーやバストが出てくるたび、男性は大喜び

女性は目をつむって大騒ぎしたのでは?と想像します

 

登場する美女たちがロシア、スペインルーマニアドイツ

フランス、ブルガリア 、ブラジルという

国境を越えた外国人女優陣というのが、たぶん許容範囲なのでしょう

バストが小さすぎたり、大きすぎたり

相手が人妻で旦那に追いかけられたり

なかなか「素敵な後姿の女性」に巡り合えないヌルラン

 

犬小屋に住みホテルのお茶出しとして雇われている

ホイッスル吹きの浮浪児アジスに協力してもらい

夜這い同様の行為をしてみたり(そこまでくると完全に犯罪だから 笑)

高級ブラジャーを大量に買い、ブラジャーの訪問販売員を装ったりしてみますが

ジャストサイズのバストは見つからない

 

ついには婦人科(乳がん)の医師と看護師にアジスが下剤入りのお茶を出し

検診用の車両を乗っ取ると

やって来た女性たちのバストが、青いブラジャーに合うかどうかを試します

 

それを知った近所の男たち怒り狂い

ヌルランを殴ると線路に鎖でつないでしまいます

お茶出しをクビになり(違う少年が雇われている)

寝床の犬小屋を追い出されたアジスが(本物の犬が住んでいる)

ヌルランを発見し、列車に轢かれるギリギリで彼を救います

(糸ノコであの太い鎖を切るのには無理があるがな 笑)

 

アジスを連れてキナルグに戻る帰り道

ヌルランは青いブラジャーと同じ柄の、青いパンティの洗濯物を見つけます

パンティの横にブラジャーを洗濯ばさみで止めるヌルラン

ふたりが去ったあと現れたブラジャーの持ち主は

鉄道会社に勤めるポイントチェンジャー(鉄道交換士)でした

ブラジャーが元通り干してあるのを見つけてた彼女は

これは天使のいたずらに違いないと微笑むのでした

嫁は見つからなかったけど、もう孤独じゃない

アジスという新しい仲間ができたから

ふたりはこれから仲良く一緒に暮らすことでしょう



【解説】映画.COMより

「世界でいちばんのイチゴミルクのつくり方」「ツバル」のファイト・ヘルマー監督が、ブラの持ち主を探す鉄道運転士の旅を全編セリフなしでユーモラスに描いたヒューマンドラマ。定年退職を控えた鉄道運転士ヌルランは、最後の乗車となるバクー行きの列車を運転していた。目的地まであと少しのところで、物干しロープから外れた青いブラが列車に引っかかる。ヌルランは退職後の孤独から逃れるため、そのブラの持ち主を探すことを決意。線路沿いの家を次々と訪ね歩いていくが……。「アンダーグラウンド」のミキ・マノイロビッチが主演を務めるほか、「ポンヌフの恋人」のドニ・ラバン、「スパングリッシュ 太陽の国から来たママのこと」のパス・ベガら国際色豊かなキャストがそろった。2018年・第31回東京国際映画祭コンペティション部門では「ブラ物語」のタイトルで上映。

2018年製作/90分/ドイツ・アゼルバイジャン合作
原題または英題:Vom Lokfuhrer, der die Liebe suchte...
配給:キュリオスコープ