セインツ -約束の果て-(2013)

原題は「Ain't Them Bodies Saints」(それらの人々は聖人である)

 

「A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー」(2017)と同じ

デヴィッド・ロウリー × ケイシー・アフレック × ルーニー・マーラ

なので見てみました(笑)

 

皆さん仰せの通り、テレンス・マリックを彷彿とさせる佇まいですが

マリックより断然手ごたえのある演出と映像センス

カメラは「メッセージ」で、初めてアフリカ系アメリカ人

アカデミー撮影賞の候補者となったブラッドフォード・ヤング

ストーリーは銀行強盗に失敗し投獄された男
恋人と、幼い娘に会うため脱獄する、という使い古されたもので

現代版「俺たちに明日はない」(1967)と評されているようですが

全く違う(笑)

どちらかといえばクリント・イ-ストウッド的で

パーフェクト・ワールド」に近い手触り

 

人を殺し、脱獄し、明るい未来のないことに気が付いてる

でも何処かに向かいたい、一筋の希望の光でいいから欲しいのです

パーフェクト・ワールド」で主人公は少年と共に

父親からもらった絵ハガキのアラスカ目指します

こちらの主人公は、どこか遠く離れた場所に

小さな家を建て、家族と暮らすことを夢見るロマンチスト

(ただどうしようもないクズなので、パーフェクト・ワールドより共感しにくい)

そんなこと不可能だと、わかっているのに

 

だけどラスト、デヴィッド・ロウリーは

ちょっと違うハッピーエンドを用意していました

1970年代のテキサス

ボブとルースとフレディの3人はケチな強盗で稼いでいました

ボブとルースは恋人同士で、ルースが妊娠したことを告げると

ボブはこれを機に犯罪から足を洗うことにし

フレディと最後の銀行強盗を決行します

 

しかし計画はばれ、警察に廃墟に追い込まれて銃撃戦になると

ルースが応戦して撃った弾が保安官に命中してしまい

フレディは警察の弾が命中し死んでしまいます

妊娠しているルースを刑務所に入れるわけにはいかない

ボブは彼女から銃を受け取り「無理やり協力させられた」と供述するよう命じると

ふたりは投降します

ルースは無罪となり、ボブは懲役25年の判決を受けす

元警官で雑貨屋を営むスケリットは

ボブとフレディを我が子同然に育てたのにと

犯罪に手を染めたうえ、こんな結果になったことを嘆きます

 

ルースにどうするかと聞くと「ボブを待つことにする」と答えます

スケリットはルースの面倒を見ることにし、出産のため家を貸します

ルースは産まれた女の子にシルビーと名付け

それから4年の月日が経ちました

シルビー4匹の捨て猫見つけルース家で飼うことにすると

4年前ルースに撃たれた)保安官のパトリックがやってきます

パトリックはルースに好意を抱いていて、何かと世話を焼くお人好し

(でもちょっと、しつこく感じる)

 

パトリックはボブが刑務所を(5度失敗し6度目で)脱獄したとルースに知らせ

ボブの居所に心当たりがないか尋ねると

ルースは驚く様子もなく自分を探っても無駄だと答えます

 

その表情からボブのことも、パトリックのことも

どう思っているのか感情を読み取ることはできません

ただ華奢で儚げな外見とは裏腹に

彼女にはいかに強い芯があり、頑固者かがわかります

脱獄したボブは女性を脅し車に乗せてもらうと

故郷に向かう列車に飛び乗り

パブを経営している友人スウィーティーの、階に匿ってもらいます

それからボロ家(生家か)に行って、隠していた金を掘り出すと

スウィーティーに謝礼としていくらかの札束を渡します

スウィーティーのパブを訪れたパトリックが

念のため調べさせてくれと2階に上がると

ボブは間一髪で逃げ出したものの

ルースとシルヴィーの写真を忘れてしまいます

うまくごまかすスウィーティー

あえて追及しないパトリック

 

同じ頃、スケリットの店にボブを探しにきたと

3人組のチンピラ風の男がやってきて、挑発的な態度を取りますが

スケリットが動じることはありませんでした

彼らが賞金稼ぎか、それともかってボブに金を盗まれたギャングのようです

それらのことを案じたパトリック

ルースに騒ぎが収まるまで安全な場所に行くべきだと伝えると

ルースはシルビーの4歳の誕生日をわが家で迎えたいと言います

プレゼントに馬が欲しいとシルビー

パトリック安く譲ってくれる人を知ってるというと

どこで飼うのかという困ってしまうルース

パトリックは何かほかに良い物をプレゼントするとシルビーに約束します

スケリットの雑貨屋に現れたボブは、自分はもう昔のようなワルじゃない

(スケリットのように)店を開いて落ち着いた生活をしたいと語ります

しかしスケリットはルースとシルビーの面倒はが見るから

全財産を持って早く遠くに逃げるよう言います

ふたりを厄介事に巻き込む気なのかと

それでもボブはルースに手紙を送ります

それはとても希望に満ちたロマンチックな内容で

明日の夜農場で待っていると締めくくられていました

その日はシルビーの誕生日でもありました

 

ルースはボブへの返事をスケリットに頼みます

スケリットが読むことは承知の上で

迎えに来て欲しいけど、今は一緒にいたら捕まるから駄目

誕生日の夜がやってきて、パトリックがお祝いにやってきます

そこでルースは4年前の供述であったことを打ち明けます

パトリックはそのことに感づいてはいましたが

過去がどうであろうとルースは立派な母親だと称えます

ルースを迎えに来たボブパトリックの姿を見ると

ボロ家に戻ることにします

そこには3人組が待ち伏せていて、ボブは追っ手のひとりの銃を奪って殺し

もうひとりとは相討ちになり、トドメは刺さずにその場を立ち去り

重傷を負ったまま歩いていると一台の車が停まります

そして運転手にルースの家まで送ってくれるよう頼みます

 

パトリックとルースソファで眠っていると、突然銃声が聞こえ

外に出たパトリックは銃を向けている男(チンピラの最後のひとり)を射殺し

椅子に座ったまま撃たれて死んでいるスケリットを発見します

パトリックとルースが保安官事務所に連れて行かれたあと

自宅に戻ると血だらけのボブが座っていました

パトリック救急車を呼び

ルースボブを抱きしめ、かってボブが話してくれたことを語ります

ボブがお爺ちゃんになり、自分たちの農場の家の玄関に立っていると

 

シルビーはボブ(父親)を見ていますが、何も言いません

パトリックはシルビーを抱いて外に出ていき

事の次第を待つしかありませんでした

登場人物の過去や背景については

全くと言っていいほど語られません

ところどころの会話や雰囲気で感じるだけ

 

スケリットは、みなしごの里親とか保護司をやっていて

ボブとルースとフレディの3人も

堅気になったパトリックとスイーティーも、かって彼に世話になった幼馴染

兄弟同然、お互い守るべき存在だったのではないかと思わせます

ボブもスケリットも失ったルースは

たぶんパトリックと一緒になるでしょう

でもそれはずるいことじゃない

彼らの願うところは、何よりシルビーのこと

自分たちのような、親のない子にしたくないと

 

そこには男と女を超えた愛も、あるのです

 

 

【解説】映画.COMより

ドラゴン・タトゥーの女」「ソーシャル・ネットワーク」のルーニー・マーラが自身初の母親役に挑み、米テキサスの荒涼とした大地を背景に、罪を背負った男女の愛を描いたドラマ。1970年代のテキサス。窃盗や強盗を繰り返してきたボブとルースのカップルは、ルースのお腹に新たな命が宿ったことで、強盗稼業から足を洗うことを決意する。しかし、最後と決めた銀行強盗でミスを犯し、逮捕されてしまう。ルースの身代わりとなり刑務所に行ったボブは、やがて娘が生まれたことを知り脱獄。追われる身となりながら、ルースと娘に会うため逃避行を続ける。ルースはボブの帰りを待ちながらひとりで娘を育て、そんなルースを陰から見守る地元保安官のパトリックは、ひそかに彼女に恋心を抱いていた。監督は本作が長編2作目の新鋭デビッド・ロウリー。

2013年製作/98分/G/アメリ
原題:Ain't Them Bodies Saints
配給:プレシディオ、クロックワークス
劇場公開日:2014年3月29日