ファニーゲーム(1997)

「明日の朝9時までに あなたたちを殺せるか否か」

ゲームをしよう」

原題は 「Funny Games」(面白いゲーム)

噂にたがわず凄い映画でした

 

休暇中の幸せな家族の別荘に2人の青年が訪れ

金目的でもなく、怨恨があるわけでもない

その家族を殺していくというサイコスリラーですが

殺戮シーンもなければ、レイプも女性の裸さえない

 

私たちが映画に求める「過剰な過激」さや

「極限下で命さながら助かる」とか「都合のいい奇跡」を

全て排除しているのです

この映画に君たちが期待しているものは何もないのだよと

それどころか、残るのは不快感だけ

じゃあ何を目的にしているのかと、あえていえば

生まれながらのお金持ちやセレブに対する妬みや反発

上流社会の人間の無知さへの嫌味でしょうか

 

「面白いゲーム」というタイトルはぴったり

私自身、ゲームはやらないのですが

戦闘や格闘ものでも、ゾンビものでも、ロールプレイングでも

ゲームの中ではたくさんの敵(ここではお金持ち)を倒しますよね

そして殺せば殺すほど、ポイントを稼ぐことができます

そこに罪悪感はありません、だってゲームなのですから

稼いだポイントでアイテムも選ぶことができます

白い手袋、ゴルフクラブ、ナイフ、ライフルなどですね

卵は落としてしまったからたぶん減点(笑)

 

ゲームする人間はゲームの中では架空の人物です

好きなコスチュームを着て好きな名前を語る

彼らの身の上話が嘘だとわかるのも、そのため

自分が殺されるときもあります

そのときはゲームオーバー

でも大丈夫、また最初からやり直せます

ショーバー家のゲオルグと妻のアナ、息子のショルシと愛犬のロルフィーは

休暇を過ごすため湖の別荘にやってきます

隣の別荘のベリンガ家に「ボートを降ろすのを手伝って」と声をかけると

ふたりの見知らぬ青年がいて、妻のエファの様子はおかしく

夫のフレッドが「20分後に行く」と生返事をします

(いつもと違い)フレッドとエファの態度が悪いとゲオルグに愚痴るアナ

 

ゲオルクとショルシがボートを降ろしていると

約束通りフレッドパウル」と名乗る青年とやって来て

彼は仕事の同僚の息子だと説明します

別荘ではアナが食料品を冷蔵庫に入れながら

友人にバーベキューを食べに来てと電話を賭けていました

そのときエファから頼まれたと、卵を4つわけてほしいと

ペーターという青年がやってきます

快く卵を渡すアナでしたが、ペーターが玄関先でその卵を割ってしまいます

アナが卵を片づけると、ペーターは再び卵を要求

アナはイラっときたものの、今度は丁寧に卵を新聞紙に包んでいる間

ペーターがアナの携帯を流しの水の中に落としてしまいます

なぜだかどうしてもペーターのことが我慢できない

「帰って」と言うアナ

 

そこにパウルがやってきて

ゲオルクの高級なゴルフセットに目を付け

試し打ちしてもいいか、とアナに頼みます

ふたりに帰ってもらいたいアナが渋々承諾すると

パウルゴルフクラブを持ち、庭へ出ていきました

 

湖でボートの作業を続けていたゲオルグとショルシは

突然ロルフィーの吠える声が消えたのを不審に思い別荘に戻ると

パウルも戻って来て、犬に飛びつかれ卵がダメになったと苦言します

自分たちの非は認めず「卵が欲しいだけ」と繰り返すふたり

そこには人の神経を逆なでする、ずうずうしさがあり

ゲオルクは思わずパウルを平手打ちしてしまいます

するとパウルは顔色ひとつ変えず、持っていたゴルフクラブ

ゲオルクの右ヒザを砕いたのです

ペーターは息子ショルシを捕まえ

医大生だから、足の手当てをしてあげる」と

ゲオルクズボンを脱ぐよう要求します

(その後本当に手当てされているので医大生は事実かも知れない)

ゲオルクはアナに警察に通報するよううと

ペーターに携帯を水没させられたことを説明します

パウルは「推理ゲームをしよう」とポケットからゴルフボールを出し

試し打ちをしに行ったのに、なぜボールが残っているのでしょう」と

問題を出します

アナはとっさにロルフィーを探しに行き

車の後部座席にロルフィーの死体を見つけます

そのとき、ロバートとゲルダ夫妻がバーベキューに招きに来ます

パウルはアナに「普通に振る舞え」と言うと

すかさず自己紹介し、夫妻が湖の反対側の岸の別荘に来ていて

2週間ほど滞在することを聞き出します

 

その後パウルが一家をリビングに移動させると

アナそのばか丁寧な口調やめて」と頼みます

パウルは「タメ口でいいのか」と答え

ゲオルク「目的はなんだ 金か?」

「金なら持っていけ」と言うと

目的などない

 

パウルはペーターは複雑な家庭で幼い頃に母が家出

おかげでペーターはホモになり

兄弟5人はヤク中はアル中だと語り

ペーターもそれに合わせて噓泣き

「こういう理由が欲しいか」とゲオルクに尋ねます

次のゲームは「今から12時間後に、お前たちは死んでいる」かどうか

ゲオルクとアナには、生きている方に賭けさせます

 

それまで楽しもうと、手始めにパウルペーターをデブとよび

アナぜい肉がない引き締まった身体を確認しようと言います

パウルショルシの顔にクッションカバーをかぶせると

アナに脱ぐよう命令します

アナが全裸になると、パウルは「ブラボーぜい肉ゼロだな」と褒め

すぐに服を「着ろよ」と言うと

(ぜい肉にしか興味を示さないのも失礼じゃね 笑)

ショルシが失禁していて、ふたりが慌てた隙ショルシは逃亡

ベリンガ家の別荘に逃げ込み助けを呼ぶと(人感センサーでライトがつく)

リビングに倒れているフレッドの足が見え

子ども部屋にはフレッドの娘シシーの遺体

みんな殺されたんだ

 

(いかにも見つけてくださいと置かれていた)猟銃を手に取ったショルシは

追ってきたパウルを撃とうとしますが、弾は入っていませんでした

パウルは「子どもに殺されそうになった」と

猟銃の弾2発を見せると、パウルが1発ペーターが1発弾を

次の誰から殺すかゲームを始めようとします

 

ところがパウルお腹が空いたと台所に行っている間

ペーター「だ・れ・に・し・よ・う・か・な」と指さしていると

ショルシが逃げようとしたため、咄嗟にショルシを射殺してしまうのです

もっと遊べると思っていたのに面白くないと

パウルペーターを連れ出かけてしまいます

 

アナはナイフで拘束を解くと、号泣するゲオルクを慰め

玄関施錠されているため、台所の窓から逃げることにします

ゲオルクは動きやすい服と靴に着替え

(足手まといになるから)アナだけ逃げろと言います

その時アナはバッグに入れていた携帯の電源が入ることに気付きます

しかしまだ乾ききっていなく、通話は出来ませんでした

ドライヤーで乾かすことを思いついたものの

この地域の警察の番号がわからない

 

結局、アナは窓から脱出し助けを呼ぶことにし

残ったゲオルクがさらに携帯をドライヤーで乾かします

友人に電話をかけるものの、今度は充電切れで通話が途絶えてしまう

アナは車を呼び留めようとしますが、1台目に気付いてもらえず

2台目が現れたときには、通りの真ん中で大きく手を振り助けを求めます

しかしその車に乗っていたのはパウルとペーターでした

 

アナはさるぐつわをされ、連れ戻され

パウルとペーターは次に殺すのはゲオルクと決めます

武器をナイフにするか銃にするか、アナに決めさせパウル

「さっさと殺せ」というゲオルクに

「映画の長さに尺が足ない」とウインクするパウル

さらにアナが一瞬の隙をついて猟銃を奪い、ペーターを射殺すると

(映像的に残酷なのは、唯一このシーンだけ)

 

パウルはテレビのリモコンで早戻しすると

アナより先に猟銃を奪いペーターの死回避し

ゲオルクを射殺するのです

これは映画で、ゲーム

いつでもリセットも、やり直しも出来るという

サディストで脳内変態おじさん(ハネケのことです 笑)からの

映画を愛する者への挑発

 

朝になり、アナをヨットに乗せたパウルとペーター

サイバースペースについて議論しています

IQ高めのインテリの会話あるある)

アナ(ゲオルクが落とした)ナイフを見つけ紐を解こうとしていると

「もう8時過ぎてる」「チャオ!」とアナを湖に突き落とし溺死させると

そのまま対岸にわたり、朝食の用意をするゲルダ夫人に

「アナのお使いで、卵を2つ分けてもらえませんか」と

声をかけるのでした

なんという素晴らしい伏線回収の数々

 

ラスト、またもやパウルは語りかけてきます
「虚構は今観てる映画」

「虚構は現実と同じくらい現実だ」と

 

【解説】映画.COMより

1997年のカンヌ国際映画祭で、そのあまりに衝撃的な展開に途中で席を立つ観客が続出。斬新なスタイルとショッキングなテーマ性でその年のカンヌの台風の目となったが、賞レースでは無視された。2001年、「ピアニスト」でカンヌのグランプリを獲ったミヒャエル・ハネケの、早すぎた金字塔的作品。

1997年製作/103分/オーストリア
原題:Funny Games
配給:シネカノン
劇場公開日:2001年10月20日