A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー(2017)

原題も「A Ghost Story

(”たくさんいる中のひとりの"ゴーストの物語)

 

死んだ男がゴーストになり、残された妻を見つめ続ける・・というと

「ゴースト/ニューヨークの幻(1990)を思い浮かべますが、ちょっと違う

妻が去ってしまった後も、ずっとその場にとどまり続けるというもの

真四角に近い、小さい画面

シーツをかぶっただけのゴースト

セリフはほとんどなし

(「メッセージ」(2016)のように)時間軸はバラバラ

定点での長回しのカメラ

特別面白いわけじゃないけど、なぜか不思議な魅力がある

これ、絵本です

映画の絵本なんですね

ゆっくりページをめくっていくように

ワンシーンワンシーンをじっくり見せる感じ

低予算はまるわかりで

撮影した場所も取り壊す予定の家を、ただで借りたとか(笑)

しかし予算10万ドルに対して興行収入は200万ドル

「オー・マイ・ゴースト!」 と評されるのもわかります

Cケイシー・アフレック)とMルーニー・マーラ)は新婚夫婦

ふたりの友人で不動産屋の仲介をしている

リンダ (リズ・カーデナス・フランク)から

テキサスの田舎にある古い家を紹介されます

楽家の夫Cはその家をなぜかとても気に入り

ふたりはそこで暮らすようになりますが

夜中に不審な音がしたり、Mにとっては田舎すぎて退屈

都会のアパートに移ろうとCを説得します

妻を愛しているCはやむを得ず承諾しますが

その直後Cは交通事故で死んでしまいます

妻が安置所でCの遺体を確認し、家に帰ると

シーツを被った遺体がゴーストになって起き上がり

(この姿で演じるって「エレファントマン」(1980)超えたかも 笑)

病院内を歩き回ると、天国の扉ではなく

わが家に向かいます(歩いて帰るのかよ 笑)

家ではMが、心配したリンダが差し入れたパイを一気に食べ

トイレで吐いてしまいます

ベッドで臥せったまま眠り続ける妻

彼女を見守るゴースト

目元にふたつの穴だけ

でも妻が悲しんでいるときは、悲しく

元気になると、嬉しい表情に見えてしまう

月日が過ぎ、ゴーストは隣の家の窓で

花模様シーツのゴーストが手を降っているのを見ます

「やあ こんにちは」

「なにをしているの」

「待っている」

「でも誰を待っているか 覚えていない」

(字幕はあるが無音)

Mは立ち直り、毎日仕事へ出掛けるようになります

さらに彼氏ができふたりの熱烈なキスを見てしまうゴースト

ゴーストは本棚から本を落とし、メッセージを伝えようとします

メッセージを読み取ったMはCの作曲した曲を聴き

Cがその曲を演奏してくれた時のことを思い出します

Mは引っ越す決意をし、荷物をまとめ

(過去の女を忘れられない男と、そうでない女の違いよね)

メモに何かを書くと柱のくぼみに埋め、ペンキで隠します

Mは幼いころから(引っ越しが多かったため)

家を去る時にメモを隠すという遊びをしていました

いつか戻った時にメモを見つけ出し

そのときの自分を思い出すことができるから

そうして彼女は新しい生活を送るため出ていきます

残されたゴーストはメモを読むため、柱から掘り出そうとします

カリカリ、カリカ

(ちなみにカリカリという音はしません 笑)

そこに子どもたちが駆け込んできます

シングルマザーと幼い兄妹の移民で

スペイン語)何を話しているのかゴーストにはわかりませんが

兄妹はゴーストを見ることができ、兄は怯えてました

ゴーストは家族の写真をピアノから叩き落としたり

キッチンの皿を割って 家族を追い出すと

再び柱のメモを掘り出そうとします

カリカリ、カリカ

 

次の住人はインテリ層の夫婦で

知識人の友人たちを招いてホームパーティー

妻が小説の執筆をやめたと言うと

ある男は宇宙はいつかは終わるのだから、創造的な追求は無意味だと主張し

ある男は人間は生きた証を必ず残す、ベートーベンの「第九」もそうだと語る

(彼らの話に共感し)存在を知らせようとライト点滅させるゴースト

それから家は放置され、廃墟になります

相変わらずメモを掘り出すため柱を削っていると

ブルドーザーによりが取り壊されてしまいます

隣の家も壊され、花模様のゴーストは「もう来ないみたいだ」と言い残し

消えてしまいました

そこに高層ビルの建設工事が始まり

ビルが建つと多くの人々がやってきて

何もなかった田舎が都会になります

(メモを掘り出す)目的を失い、ビルの屋上から飛び降りるゴースト

 

すると(天球が逆回転し)西部時代の草原に立っていて

男が(土地を確保するためだろう)木の杭を打ち付けていました

やがて男の妻と3人の娘が馬車でやってきて家を建てようとします

娘がCの曲を口ずさみ、紙に何か書くと石の下に隠

しかし一家は先住民によって皆殺しにされてしまい

ゴーストは少女の死体がミイラになるのを見ます

 

少女はMの前世だったのだろうか

だから自分もこの場所に憑りつかれているのだろうか

再びもとの家に戻ったゴーストは

かってのCとMが暮らしている姿を見ます

Mが出ていく姿を見ているゴーストを見つめる

戻ってきたゴースト

そしてまた柱を削ります

カリカリ、カリカ

 

やっとペンキが剥がれ、メモを手にしたゴースト

それを読んだ瞬間ゴーストは消え、床には空のシーツだけが残されたのです

メモに何が書かれていたのかは

見た人それぞれの想像に委ねていますが

 

私は「Cが死んだ」ことが書かれていたと思います

自分が死んでいることを知り、天に召された(成仏した)

ということではないでしょうか

 

 

【解説】映画.COMより

マンチェスター・バイ・ザ・シー」のケイシー・アフレックと「キャロル」のルーニー・マーラの共演で、幽霊となった男が残された妻を見守る切ない姿を描いたファンタジードラマ。田舎町の一軒家で若い夫婦が幸せに暮らしてたが、ある日夫が交通事故に遭い、突然の死を迎える。病院で夫の死体を確認した妻は、遺体にシーツを被せて病院をあとにする。しかし、死んだはずの夫はシーツを被った状態の幽霊となり、妻が待つ自宅へと戻ってきてしまう。アフレックがシーツ姿の幽霊となってさまよい続ける夫役を、マーラがその妻役を演じる。デビッド・ロウリー監督がメガホンを取り、「セインツ 約束の果て」の監督&主演コンビが再結集した。

2017年製作/92分/G/アメリ
原題:A Ghost Story
配給:パルコ
劇場公開日:2018年11月17