マダム・イン・ニューヨーク(2012)

「自分を救えるのは自分」
Nobody can help you better than you.

 

原題は「English Vinglish

Vinglishという言語に意味はなく「English」の語呂合わせにつくられた

南アジアのエコーワードというもの

姪の結婚式の準備を手伝うため、ひとりでニューヨークを訪れた

英語の話せないインドの主婦が英会話教室に通う・・

という単純なストーリーですが

 

とにかく金言がいっぱい

最後には涙する永久保存版

 

子育てや結婚生活に悩む女性だけでなく

自分の存在価値を見失ったときにぜひ見てほしい

自己肯定力を高めるのに、きっと役立つと思います

主婦で料理上手なシャシシュリデヴィカプール

ラドゥーというお菓子作りが評判で、得意先に販売をしていて

息子の前でマイケル・ジャクソンを踊るチャーミングなママでもあります

しかし国際派ビジネスマンの夫や

インターナショナルスクールに通う長女から

「英語ができない」ことをバカにされ

夫からはラドゥーを売ることを「そんなことは必要ない」

「家族のためにだけ料理を作ればいい」と言われ

学校の面談では「恥をかいた」と娘に文句を言われ

(日本とは違い大事な行事では必ず父親(男性)が出席するようだ)

自分は必要もなくダメな人間ではないかと悩む毎日

 

こんな若くて美人で完璧な奥さんなのに

文句ばかり言うこの父娘はなんだと思うわけですが(笑)

なんとシュリデヴィはこの時48歳

主演作は300本以上というインドのスーパースターと知り驚きました

残念なことに54歳でお亡くなりになったんですね

そんなときニューヨークに住む姉の娘ラーダが結婚することになり

夫は仕事、長女は学校、幼い息子は準備の邪魔になるだろうと

夫の提案でシャシは単身ニューヨークに向かうことになります

 

まず飛行機に乗ったことがない(笑)

税関で受け答えもできないし、機内食のメニューも頼めません

隣の席の紳士の助けでなんとかニューヨークまで到着

「何事も初めては1度だけ その1度は特別な体験だ だから楽しんで」

「迷わずに自信を持って、決然と」とアドバイスされます

シャシは田舎育ちで、そこの学校では英語を話すことが禁止でした

女性は教育ではなく、花嫁修業を優先させられていたんですね

早くに夫を亡くし、外国で女手ひとつで娘を育てた姉を尊敬しています

 

姪のラーダとの待ち合わせ場所

カフェで何か頼もうと思ったシャシでしたが

なかなかオーダーできないシャシを店員がせかし

(スタバみたいにトッピングとかがめんどくさい)

慌てたシャシは他の客とぶつかってしまいます

カフェを飛び出し公園で泣いていた彼女に

一連のやりとりを見ていた男性がコーヒーを届け

「あの店員の態度はひどい」と慰めます(男性もカタコト英語)

シャシの欠点は英語をはなせないことより

メンタルの弱さなんですね

どんなに頑張っても、家族から認められないことによる自己否定

 

大学の授業が終わったラーダが戻り、広告バスが目の前を通ると

ラーダが「4週間で英語を話せるなんて嘘よ」というのを聞き

番号を暗記して電話をし、なんとか住所だけ聞き取り学校に行くと

クラスは今日からだと早速授業を受けることになりました

ベビーシッターのスペイン人女性エヴァ

IT企業に勤めるインド人男性サルマン

美容師の韓国人女性マリア

タクシードライバーパキスタン人男性ラママーシー

全くしゃべらないアフリカ系の男性ユードゥンブケ

そして公園でコーヒーを運んでくれた

フランス人シェフのローランメディ・ネブー

講師はアメリカ人男性でゲイのコリー先生

どんだけ多様性をブチ込んだのよ、というこのクラス(笑)

最初の自己紹介でも一番英語を話せないのはシャシ

でもインド人サルマンの通訳のおかげで

なんとかラドゥー売りをしていることを英語で伝えると

先生は「“entrepreneur(起業家)”だ」と褒めたたえます

 

嬉しくなったシャシは夫に電話で「私は起業家なの」と話すと

夫の鼻で笑う態度は相変わらず

しかも自分がいなくなっても、家族はうまくやっているようで

寂しい気持ちになります

やがてシャシも、ヒンディー語が得意でないラーダのかわりに

ヒンドゥーの司教と結婚式の相談をしたり

家事の合間を見計らって英会話教室に通うことで

クラスメイトたちとの友情も芽生え、忙しい毎日に充実感を覚えます

 

ある日、ラーダにローランと歩いているところを見られてしまい

正直に英会話教室に通っていることを打ち明けると

ラーダは映画のDVDを貸したりとシャシを応援

その映画のセリフのなかで「ジャッジメントjudgment)

(決め付ける 判決をくだす)の意味がわからず、ラーダに聞くと

ラーダは少し考えて、こう答えます

 

「何も理解せず知りもしないで叔母さんを古臭いインドの専業主婦と判断する

本当の叔母さんは自由な考えの女性なのに

それがジャッジメント

何度も「ジャッジメント」と呟くシャシ

ある日の教室でコリー先生が失恋したと、ゲイの恋愛について笑っていました

「人は皆違う あなたから見て変でも 彼から見たらあなたこそ変」

「でも心の痛みは誰でも同じ」

とシャシが言うと、皆ははっとし

廊下でその言葉を聞いた先生は、堂々と教室に入ることが出来ました

そしてローランはますますシャシの事が好きになり

 

英語のスピーチで「僕はシャシに会いに この学校に来ている」

「君との出会いは僕にとって 人生の奇跡だ」

と告白してしまいます

驚いたシャシはさっさと帰ってしまい

(好意に気付いていたが、英語で結婚していることをうまく説明できなかった)

サルマンから、フランスではロマンチックな告白でも

インドでは違うと忠告を受けます
ローランがシャシを追いかけ謝るとシャシは

「恋は要らないの 欲しいのは尊重されること」(ヒンディー語

「もう構わないで」(ヒンディー語

「また明日」(英語)と足早に去るのでした

しかしシャシを諦めきれないローラン

学校の帰り道、コーヒーだけとカフェに寄り道

そのとき娘からスクラップブックが見つからないと電話がかかり

棚の中にある、「大丈夫、読んでいないから」と伝えると

「英語で書いてるからどうせわからない!」と言われてしまいます

 

「思いやりはどうやったら教えられるの」と吐息をつくシャシ

一方でふたりが初めて会った時とは大違い

メニューを見て自然にオーダーできるようにまでなっていました

授業も残り1週間となり、先生が卒業試験は5分間のスピーチだと伝えると

その日はラーダの結婚式だというシャシに

みんなは式は午後から、午前中に試験を済まようと提案します

その日の帰り、ローランとエレベーターで屋上に行ったふたり

素晴らしいニューヨークの眺めに、一瞬いい雰囲気になりますが(笑)

シャシはそれをかわし帰ってしまいます

帰宅すると夫と子どもたちがサプライズで予定より早く

ニューヨークにやってきていました

シャシを英会話教室に行かせるため

気を利かせたラーダが夫と子どもだけを連れて

エンパイアステートビルに行ってくれますが

息子が怪我をして大泣き、スマホを忘れたシャシと連絡がつかず

出かけていたことを夫に責められ

シャシも息子の怪我は自分のせいだと、英会話教室を辞めることにします

 

ラーダは学校に説明に行き、ローランとスマホの番号を交換すると

通話を通してシャシに教室の様子を伝えます

卒業試験だけは受ける決意をするシャシ

結婚式の朝、デザートのラドゥー作りに励むシャシ

しかし会場の庭にラドゥーを運ぶとき

息子のイタズラで全てのラドゥーを地面に落としてしまいます

ラーダは「買いに行きましょう」と言ってくれましたが

シャシは作り直すことに決め、泣きながら試験を諦めるのですが

なんと結婚式の会場には先生とクラスメイトたちの姿

ラーダがみんなを招待していたのです

ラーダがシャシにスピーチを頼むと、そこでも夫が

「私がやろう」とシャシを止めます

しかし今度ばかりは毅然と立ち上がり

覚えたての英語を駆使してスピーチを始めるのでした

 

このスピーチが本当に素晴らしい

もし結婚式で、自分の子どもや姪や甥のスピーチがあったら

100%使えますので(笑)

最後に翻訳文を載せておきます

試験は合格だと卒業証書を渡す先生

「英語で内緒話をするのは気をつけないといけないね」と話す娘と息子

ラドゥーを振舞うシャシに「まだ愛しているか」と聞く夫

シャシは夫の皿にラドゥーを2つ置き

「愛していなかったらラドゥーを2つもあげないわ」と答えるのでした

 

ローランはお気の毒だけど、しかたがないよね

頑張ってヒンディー語まで覚えたのに(笑)

エンドロールはもちろん、登場人物全員で踊ります

インド映画はこれだけでもうハッピーエンド

結婚は素晴らしいもの
それは最も特別な友情
なぜなら対等な者同士の友情だから

 

人生は長い旅
時には相手より劣っていると感じる時があるかもしれない
そんな時は、お互いに助け合って
対等と感じるようにすること
そうすれば大丈夫

 

時には 相手の気持ちがわからなくなるもの
助け合う方法も見失う
それは結婚の終わり?


いいえ 違う
そんなときこそ、自分で自分を助ける時
自分を大切にすることは
あなた自身が一番うまくできるはず

それができれば 再び
相手と対等だと感じられるようになる
友情関係が戻ってくる
人生が輝きだす

 

忙しいでしょうが
家族をもうけてね 息子や娘を
この広い世界の中で
小さくてもとても大切なあなたたち家族の世界を
とてもいいものよ 家族は

家族は あなたを決して決めつけたり
傷つけたり
引け目を感じさせたりしない
あなたの弱みを笑わないのは 家族だけ
家族だけは 愛と敬意を与えてくれる

末永くお幸せに ありがとう

 

【解説】映画.COMより

自分の価値を認めてもらえない専業主婦が一念発起し、英語が苦手というコンプレックスを克服して誇りと自信を取り戻していく姿を描いたインド製ドラマ。専業主婦のシャシは、2人の子どもと忙しいビジネスマンの夫サティシュのために尽くしてきたが、事あるごとに家族の中で自分だけ英語ができないことを夫や子どもたちにからかわれ、傷ついていた。ニューヨークに暮らす姉から姪の結婚式の手伝いを頼まれ、渡米したシャシは、「4週間で英語が話せる」という英会話学校を見つけ、姉にも内緒で英会話学校に通うことを決める。仲間とともに英語を学ぶうちに、次第に自信を取り戻していくシャシだったが……。主演はインドで国民的人気を誇る女優のシュリデビ。新鋭女性監督ガウリ・シンデーがメガホンをとった。

2012年製作/134分/G/インド
原題:English Vinglish
配給:彩プロ
劇場公開日:2014年6月28日