いますぐ抱きしめたい(1988 )

一生ハエのままはいやだ

一日でもいい 

英雄になりたい

 

原題は旺角卡門」(九龍のカルメン

英題はAs Tears Go By」(涙あふれて)

ウォン・カーウァイの監督デビュー作

九龍で賭博や借金の取り立てという

チンピラ稼業をしているアンディのもとに

叔母から従姉妹のマギーが病院で肺の検査をするので

しばらく預かって欲しいという連絡が入ります

田舎から出てきた、ヤクザな街に似合わない女の子

お互い気のないふりをしているけど、惹かれあっている

「誰かがあなたを愛している」(1987)のような

展開になるかと思いましたが、違いました

最後までダメ男だった(笑)

思った以上にノワールものだったけど

カーウァイの洗練さはまだ出ておらず、ちょっとダサくてイタい

猫の虐待シーンなんか、本当に許せないから

役名と役者名が同じなのはわかりやすい

まだ駆け出しだった頃の、アンディ・ラウマギー・チャン

ジャッキー・チュン知名度を上げるためだったとしたら

粋なはからいですね

アンディは弟分のジャッキーを誰より可愛がり

何より優先させています

恋人のメイベルに会いにいくと

彼女から子供を堕ろしたことを告げられます

アンディの不安定で荒れた性格と生活に

これ以上付き合うのが耐えられなかったのです

そしてこういう男は必ず、女に「誰の子かわからない」と言う

一方のマギーは危険な生き方しかできないアンディに

魅力を感じたのかも知れません

そして田舎に帰る日、コップの謎解きという

思わせぶりな手紙を残していきます

マギーを追いかけたいアンディでしたが

ジャッキーが反目するヤクザのトニーから大金を借りていることを知り

金を工面し返しにいくことにします

しかしトニーから利息分足りないと言われたことに腹を立て

トニーにナイフを突き付けトニーの店のレジから金を盗み

「これで帳消しだ!」と叫んで逃げる(どういう理屈だ 笑)

アンディとトニーの不仲を解決させたい親分は

問題児のジャッキーを屋台で働せるよう、アンディに頼みます

まっとうなお金を稼いでトニーに借金を返し、生活させろと

ジャッキーに仕事の世話をした後アンディは

マギーに会うためランタオ島に向かいました

そこで彼女に医者の恋人がいることを知り、落胆しますが

マギーからアンディが来なかったら医者と結婚していたと言われ

ふたりは結ばれ、幸せな日々を過ごしますが

それもつかの間

ジャッキーの弟から連絡があり

ジャッキーがトニー一味と衝突し、誘拐されたというのです

アンディがもう戻ってこないことを予感し、涙するマギー

九龍に戻ったアンディもおとしまえとして壮絶なリンチを受けたうえ

(リンチや大怪我のすぐあと走り回っているけど 笑)

ジャッキー組織の裏切り者タイコウ暗殺を請け負ったことを知ります

 

しかしジャッキーは暗殺に失敗、凶弾に倒れ

ジャッキーを追ってきたアンディがタイコウを撃ち殺しますが

同時にアンディも警官に撃たれ命を絶つのでした

男同士の友情のため、命を落とすって

女には全く共感できないんですけど(笑)

家族とは何か

疎遠な関係の両親か、遠くに住んでいる親戚か

それとも俺といても幸せになれない恋人か

(死ぬ間際にマギーの顔が脳裏に浮かぶシーンはグッとくる)

今は目の前にいる兄弟、親友

唯一孤独を紛らわせてくれて

本当の俺をわかってくれたのはお前だけ

と、いうことでしょうか

まだ垢抜けないマギー・チャンが可愛い

何より、大切な人たちの顔に泥を塗り続け

どこまでも堕ちていくジャッキー・チュン

クズっぷりが見事でした



【解説】映画.COMより

ウォン・カーウァイ1988年に発表した監督デビュー作で、香港の暗黒街に生きる若者たちをスタイリッシュに描いた青春群像劇。香港で暮らすギャングのアンディのもとに、今まで会ったことのない従姉妹のマギーが訪ねてくる。そこへアンディの弟分ジャッキーから電話が入り、アンディは借金の取り立てに手こずるジャッキーを助けるため、夜の街へと繰り出す。その帰り、アンディは恋人メイベルから衝撃的な告白を聞かされる。マギーは荒れるアンディと衝突しながらも、次第に惹かれあっていくが……。後に監督として「インファナル・アフェア」シリーズなどを手がけるアンドリュー・ラウが撮影を担当。

1988年製作/96分/香港
原題:As Tears Go By
配給:ユーロスペース