2046(2004)

「あなたが私を愛してなくても
 私はあなたを愛している
 だからもう私は別の男を連れて帰らない
 あなたも女を連れてこないと約束して」

 

「ムリだ」

原題も「2046」(ニーゼロヨンロク)

1996年、香港がイギリスから中国へ返還

中国とイギリスは社会主義への移行準備期間として

返還後50年間は香港の資本主義を守る協定「一国二制度」を結びます

つまり2046年は香港人にとって運命の年

「終わり」「出発地点」「変化」という意味もあったでしょう

(その後「一国二制度」の解釈は一方的に捻じ曲げられ25年で協定は破られる)

長年南洋諸島を旅していた元新聞記者で小説作家の

チャウ(トニー・レオン)が香港に戻りとあるホテルの

2047号室に宿泊し、壁の穴から隣の

2046号室の様々な人間関係を覗き見ることになります

2046号室は「花様年華」でチャウとチャン夫人(マギー・チャン)が

逢瀬を重ねたホテルの部屋番号ですが

チャウのプレイボーイぶりは「花様年華」の続編というよりも

欲望の翼」のヨディ(レスリー・チャン)のオマージュ

(フィルムも故レスリー・チャンへ捧げられている)

ホテルのオーナーの娘ジンウェン(フェイ・ウォン)は

日本のビジネスマン、タク(木村拓哉)と付き合っていますが

父親に交際を反対され、タクは日本に帰ってしまいます

愛し合いながら、言葉もろくに通じず文通さえままならない

国を隔てられたふたり

一方でチャウに本気で恋していく娼婦バイ・リンチャン・ツィイー

チャウを愛しながら別れを選ぶ賭博師スー・リーチェン(コン・リー

シンガポールで死んだ恋人が忘れられないダンサー

ルル(カリーナ・ラウ) という女たち

チャウはタクを主人公(自分の分身)にして新たな小説を書き始めます

タイトルは「2047

小説の中の登場人物たちは「失われた愛を見つけることができる」

2046」という場所を目指しミステリートレインに乗り込みます

でも「2046」が本当にあるかどうかは誰も知らない

なぜなら「2046」から帰ってきた者はいないから

ただひとりの「男」を除いて

しかし「男」は再び「2046」に向かう列車の中にいました

(それにしても木村拓哉の色気のなさよ 笑)

「男」はアンドロイド(マギー・チャン)に温もりを求めやがて愛してしまう

しかし「男」の求愛にアンドロイドは答えない

車掌は長旅で感情機能にタイムラグが生じていると説明しますが

「男」はアンドロイドは自分ではなく、他の男を愛しているのだと

彼女を諦める決断をするのです

現実の世界に小説(妄想)の世界が侵食して交錯するって

若い人にしたら呆けたのかって思われるかも知れないんですけど(笑)

年を取ると、過去を作り上げてしまうことが本当にあるんです

そのうえで男が人生で出逢った女たちを

(付き合った事実があったかは関係ない)描くとこうなる

高嶺の花、人妻、金持ち、謎の女、付きまとう女、ツレない女

魅力の感じない女、慰めてくれる女

お金と引き換えに買う恋

言葉や国の壁に隔たれた恋

人間とAIの恋

本気の恋を忘れるための恋

彼女たちとの恋愛が成就することはない

今となっては愛していたかどうかもわからない

だけどその面影は、年齢を重ね思い出していくたび

美しく輝いていくのです

チャウの勧めでジンウェンはタクに会うため日本へ旅立ち

父親はふたりの結婚を認めることにします

チャウが書き上げた「2047」を彼女に贈ると

ジンウェンは「2047」はすばらしい小説だけど

結末が悲しすぎるから変えてほしいと言います

チャウはやってみますと答えましたが

100時間考えてもハッピーエンドになる方法がわかりませんでした

「叶わぬ恋」描き続けるウォン・カーウァイ

集大成か、それともマンネリか、悩むところですが(笑)

スタイリッシュな脚本と

クリストファー・ドイルの、どのシーンを切り取っても

絵になるカメラは本作でも溜息モノなことに間違いありません

残念だったのは(俳優の個性や国際色を尊重するあまり)

全編広東語でなかったこと

カサブランカ(1942)のボギーのセリフと、カーウァイは

日本語で喋らせちゃダメよ(笑)




【解説】より

花様年華」「ブエノスアイレス」の巨匠ウォン・カーウァイ監督が、トニー・レオン木村拓哉らアジアを代表するトップ・スターたちを結集し手掛けた壮大なSFラブ・ストーリー。過去に囚われた一人の小説家が近未来を舞台にした物語を執筆、次第に小説家の現在と物語の中の未来が時空を超えて交錯していくさまを、美しい映像で綴る。
 1967年の香港。新聞記者から物書きへ転向したチャウは、これまで何人もの女たちと刹那的な情愛を繰り返していた。ある日、彼はとあるホテルの2046号室に泊まることに。そして、宿泊先のオーナーの娘ジンウェンが日本人青年との叶わぬ恋に苦しんでいると知ったことがきっかけで、『2046』という近未来小説を書き始める。それは2046年が舞台。主人公の男は美しいアンドロイドたちが客室乗務員を務める謎の列車に乗り、そこへ辿り着けば“失われた愛”を取り戻せるという<2046>へ向かった――。そんな内容をしたためるうち、いつしかチャウは主人公に、心の底から愛した女性と結ばれなかった過去が甦ってくる自分自身を投影していた…。