スパイの妻(2020)

英題も「WIFE OF A SPY

日中戦争での731部隊の生体実験と

それに関わった夫婦の騙し合い

ヴェネチア国際映画祭では銀獅子賞(監督賞)を受賞

スリリングで目が離せないシーンもあったものの

戦時中の謝った情報や地下活動を見せることも

最後まで核心に触れることもなく

まるで中途半端なテレビドラマと思ったら

本当にテレビドラマを劇場用に編集したものでした(笑)

 

もし重要な部分を時間の都合上カットしたのならもったいない

オリジナルのまま配信したほうが良かったと思います

結局残るのは「よいもの」だけなのだから

(アベ・チャンの国葬や、旧統一教会等カルト宗教問題で少々病んだレビューになってます 笑)

1940年神戸

聡子(蒼井優)は貿易会社の社長夫人として優雅に暮らしていました

しかしある日、幼なじみであり神戸憲兵分隊本部の分隊

泰治(東出東大)に呼び出され

旅館「たちばな」の近くで水死体となって発見された草壁弘子という女性が

夫の優作(高橋一生)と甥の文雄(坂東龍汰) が出張先の満州から

日本に連れ帰った女性だというのです

 

不安になった聡子が(会社を辞め小説家になると言い出した)文雄に会いに行くと

文雄は封筒を取り出し、誰にもばれないように優作に渡して欲しいと頼みます

聡子は会社行き、優作に(封筒を渡すかわりに)何があったのか

本当のことを教えてほしいと懇願します

死んだ弘子は満州の看護師で軍医の愛人だったと言います

優作が医薬品を入手するため、満州関東軍の研究施設に行くと

そこにはあったのはペストによる死体の山でした

そして優作は弘子から、関東軍が細菌兵器の人体実験をしていることを聞くのです

人体実験の詳細が書かれたノートを入手し優作は

それを文雄に英訳するように頼み、国際的に発表しようとしていたのです

それは日本国家に反逆する事聡子は優作を止めますが

優作「絶対的な正義を選択する」決意は揺らぎませんでした

 

さらに聡子は地下室で人体実験の証拠となるフィルムを発見してしまいます

優作の言っていることは本当だった・・

物語のモチーフである、1940年の満州国におけるペストの流行は

実在した関東軍731部隊の細菌兵器の研究開発による

ペストに感染させたノミを日本軍が散布したことによるものだと

主張されているそうです

(それだと日本軍も感染してしまいそうだがな)

優作を守るため、聡子は文雄を泰治に売ってしまう

そして戦争犯罪(禁止兵器の使用)告発のため

優作とアメリカへ亡命を決意するのです

どんなに苦しくても、たとえ裏切り者でも

妻として愛する夫に尽くす喜び

 

聡子は大量の死体の写ったフィルムを隠しアメリカ行きの貨物船に乗り

優作は文雄が英訳した資料を持ち

上海経由でアメリカに渡り合流する計画を立てます

しかし 聡子は何者かの通報により憲兵に捕らえられ、密航に失敗

しかも国家機密だと思っていたフィルムは優作が趣味で撮った映画でした

聡子はスパイの罪こそ問われなかったものの

辻褄のあわない言動に精神病院に入院させられてしまいます

 

1945年、神戸が爆撃され病院も破壊されます

聡子は「これで日本は負ける 戦争も終わる お見事です」と

海岸で泣き崩れるのでした

 

エンドクレジットの前の字幕は

終戦の翌年に優作の死亡が確認されたが

 その報告書には偽造の形跡があり

 その数年後に聡子はアメリカに旅立った」というものでした

結局、犯罪はあったとしても何も明かされず

アメリカで夫婦幸せに暮らしましたということか(笑)

(簡単に日本人がアメリカに行ける時代でもねえけどな)

 

作品そのものの出来は決して悪く無いものの

最大の欠点はリアリティの無さ

敗戦の美化、迫害者の美化

「戦争メルヘン」(新語出た!)

 

戦犯、男と女、売国奴、裏切り・・という反戦ドラマではありますが

最後まで曖昧な結末は「上級国民ドラマ」(新語出た!その2

公用文書は黒塗り、権力を利用して法さえ握りつぶす

戦前戦中の思想が、今の政界のイメージに相応しいことを思えば

公開する意味はあったかも知れません

 

 

【解説】allcinema より

「岸辺の旅」「散歩する侵略者」の黒沢清監督が蒼井優高橋一生を主演に迎えて贈る歴史ラブ・サスペンス。1940年代を舞台に、偶然にも国家機密を知ってしまった夫婦が、それぞれに信念と愛を貫き、戦争という大きな時代のうねりに立ち向かっていく中で辿る過酷な運命を描く。共演は東出昌大坂東龍汰恒松祐里笹野高史。第77ヴェネチア国際映画祭でみごと銀獅子賞(監督賞)を受賞。
 1940年、神戸。瀟洒な洋館に住み、貿易会社を営む夫の福原優作と何不自由ない生活を送っていた聡子。ある日、仕事で満州に渡った優作は、同地で衝撃的な国家機密を目にしてしまう。正義感に突き動かされ、その事実を世界に公表しようと秘密裏に準備を進めていく優作。そんな中、聡子の幼なじみでもある憲兵隊の津森泰治が優作への疑いを強めていく。いっぽう聡子は、優作がたとえ反逆者と疑われようとも、彼を信じてどこまでもついていこうと固く決意するのだったが…。