父親たちの星条旗 (2006)

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原題は「FLAGS OF OUR FATHERS

戦争でヒーローは誕生しない、勝手に作り出されるだけ

イーストウッドらしく、無駄に感動的なシーンや、お涙頂戴もない

あくまで「中立・公平」に徹底していて、極めてシンプル

どう感じるかは、すべて映画を見た人間に委ねられています

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ウィスコンシン州で葬儀屋を営むジョン・“ドク”・ブラッドリーが

心臓発作で倒れ「あいつはどこだ」という、うわ言を言い続けていました

父の若い頃をよく知らない息子のジェームズ(原作者)

の昔の戦友たちを訪ね、話を聞くことにするのです

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1945硫黄島での星条旗掲揚の様子を写したローゼンタールの「硫黄島星条旗

写真も、記念碑も、有名ですね

その写真に写っていた6

(ジョン・“ドク”・ブラッドリー(実際にはハロルド・シュルツ)

マイク・ストランク、レイニー・ギャグノン、フランクリン・スースリー

ヘンリー・ハンセン(実際は ハーロン・ブロック)、アイラ・ヘイズ)のうち

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生き残ったドク、 レニー、ネイティブアメリカンのアイラ・ヘイズの3人は

戦争の資金を集めるための、戦債キャンペーンのため

国中をツアーさせられるハメになるのです

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そんな中、戦争PTSDや差別により

アルコール依存症になってしまうアイラ・ヘイズ

それだけ硫黄島での戦いは悲惨なものだったのです

軍力では遥かに上なのに、「見えない敵」に殺されていく仲間たち

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爆破される戦車や装甲車

闇討ち、味方からの誤射により死んでしまう者もいる

1カ月以上も続いた過酷な戦闘

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なのに勝手に英雄にデッチあげられ、茶番を演じている

現実は違ったと報告しても

軍人である以上、上官からの命令は絶対

酔って吐いているところを見られたアイラは前線に戻されたものの

キャンペーンは終戦まで続けられたのです

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そして年月が経ち、人々は彼らのことも

戦争で死んでしまった者たちのことも忘れてしまう

 

ドクとレニーは結婚し、それぞれ葬儀屋と用務員として働き

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アイラは故郷で小作農をしていたものの、問題ばかり

ヒッチハイクでハーロン・ブロックの父親に会いに行き

写真に写っていたのはハーロンだと告げます

(母ちゃんには唯一の救いになっただろうな)

そして結局酒に溺れて死んでしまった

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だけどそんな彼らの、最高に楽しかった思い出も

戦場の中にしかなかったのです

カードゲーム、煙草、海水浴・・

身体は故郷に戻っても、心は戦場に置きざり

死に間際ドクは息子に「よい父親でなかった」と謝まるのでした

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1930年生まれのイーストウッドだから、当時の事情も肌で感じていただろうし

ただの勝利国の美談ではなく、本当の戦争を映画にしたいという

思いが伝わってくる

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そして、一流には一流の制作が集まる(笑)

脚本は監督としても評価の高いポール・ハギス

カメラはイーストウッド組トム・スターン

共同制作はスティーヴン・スピルバーグロバート・ロレンツ

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戦後は、アメリカからの本土復帰により奄美大島1953)に続き

硫黄島を含む小笠原諸島が返還(1968昭和43年)

その後硫黄島には海上自衛隊硫黄島航空基地が設置され

かっての島民が帰島することは2度となかったそうです

 

 

【解説】allcinema より

ミスティック・リバー」「ミリオンダラー・ベイビー」の巨匠クリント・イーストウッド監督が、太平洋戦争で壮絶を極めた硫黄島での戦いを、アメリカ側、日本側それぞれの視点から描く2部作の第1弾。硫黄島の擂鉢山に星条旗を掲げる6名の兵士を写した有名な戦争写真の裏側に秘められた真実の物語を描く人間ドラマ。写真に登場する6名のうちの一人ジョン・ブラッドリーを父に持つジェイムズ・ブラッドリーの著わしたノンフィクション『硫黄島星条旗』を基に、凄惨な硫黄島での戦いと、戦場を生き延び帰還した3名の若者が、自らの思いとは無関係に“勝利の象徴”として英雄に祭り上げられ、戸惑いや苦悩を深めていくその後の人生を静かに見つめていく。なお、2部作の第2弾は日本側から描く「硫黄島からの手紙」。
 太平洋戦争末期、硫黄島に上陸したアメリカ軍は日本軍の予想以上の抵抗に苦しめられ、戦闘は長引き、いたずらに死傷者を増やす事態に陥っていた。そんな中、擂鉢山の頂上に星条旗が高らかに翻る。この瞬間を捉えた1枚の写真が銃後のアメリカ国民を熱狂させた。星条旗を掲げる6名の兵士、マイク、フランクリン、ハンク、レイニー、アイラ、ドクは一躍アメリカの英雄となるのだった。しかし、その後祖国に帰還したのはドク、アイラ、レイニーの3人だけだった。国民的英雄として熱狂的に迎えられた彼らは、戦費を調達するための戦時国債キャンペーンに駆り出され、アメリカ各地を回るのだったが…。