ヒア アフター(2010)

 

 
 

突如スマトラ沖地震を想起させる津波の場面

イーストウッド監督の映画こんなに派手VFXを使うのは珍しい
日本では東日本大震災が起きたため上映中止になった作品だそうです

 

死者との交信というテーマにむとは
生涯現役であるイーストウッド監督であっても
そろそろ死後の世界が気になるお年頃なのかも知れません()

 

物語は、住む場所も年齢も性別も異なる三人が
死後の世界とのコミュニケーションにとらわれるというもの
 
 
フランスのジャーナリストのマリーは、津波に飲まれた時の臨死経験から
仕事を休業させられ、臨死体験についての本を書くことになります
イギリスの少年マーカス
双子の兄を亡くした悲しみから立ち直ることができません
アメリカ人のジョージ(マット・デイモン)は霊能力をもち
死んでしまった人からのメッセージを伝えることができますが
その能力を嫌悪していました

 

前半はそれぞれの物語が並行的に描かれていて
あまり入り込めないのですが、終盤はグッと引き込まれました
特に少年マーカスのエピソードには泣かされます
 
 
 
男の子は本当に母親にやさしいものです
マーカスも双子の兄と協力し合い懸命に
薬物中毒というどうしようもない母親を助けていました
その兄が交通事故で突然死んでしまうのです
こんなに哀しいことはありません

 

もういちど兄と話をしたい、その思いだけで霊能者を探すマーカス
しかし誰もがデタラメなインチキ霊能者ばかりでした
そしてインターネットのサイトでジョージの存在を知るのです

 

帽子が飛ばされるシーンはよくできています
偶然とはもしかしたら、大切な人に助けてもらっているから
起こる出来事なのかも知れません
 

 

ジョージがディケンズのファンであるという理由が
あとで3人が巡り合うときの伏線としてよく効いていますね

 

確かにジョージのような能力を持っていたら
誰にも触れることができなくなってしまいます
肉親からは金儲けの道具にされ
好意を持った女性にも去られてしまうのです
 
 
 
 
でも料理教室の目隠しをして食材を当てるシーンは
色気があって良かったですね
あんなふうにお互いのことを打ち明けたななら
恋に落ちる確率がうんと上がります()
 

 

マリーは自分の体験を核とした「ヒアアフター(来世)」という
本を書き上げますが
古巣のTV局から冷たくあしらわれ
自分がこれまで築き上げてきた仕事や人間関係が
見かけだったことに気が付きます
 
 
 
 
ラストはセリフなどで明解なメッセージを残さず
見る側に解釈をゆだねる象徴的なものになっています
なので大切な人を亡くした経験のある人と、ない人では
感動の度合いにかなり差が出るのではないかと思います

 

でもたとえ死後の世界を信じていない人でも
旅立つときは言い残すことがないように
家族には日々感謝の言葉を伝えながら生きていこう
そんな気持ちにさせられる作品には間違いないでしょう
 

【解説】allcinemaより
硫黄島からの手紙」以来のコンビとなるクリント・イーストウッド監督とスティーヴン・スピルバーグ製作総指揮で贈るスピリチュアル・ヒューマン・ドラマ。死後の世界をテーマに、それぞれのかたちで死と向き合った三者の人生が運命にいざなわれるがごとく絡み合っていくさまを感動的に綴る。主演は「インビクタス/負けざる者たち」に続いてイーストウッド監督作出演となったマット・デイモン。共演に「スパニッシュ・アパートメント」「ハイテンション」のセシル・ドゥ・フランス
 パリのジャーナリスト、マリーは、恋人と東南アジアでのバカンスを楽しんでいた。だがそのさなか、津波に襲われ、九死に一生を得る。それ以来、死の淵を彷徨っていた時に見た不思議な光景(ビジョン)が忘れられないマリーは、そのビジョンが何たるかを追究しようと独自に調査を始めるのだった。サンフランシスコ。かつて霊能者として活躍したジョージ。今では自らその能力と距離を置き、工場で働いていた。しかし、好意を寄せていた女性との間に図らずも霊能力が介在してしまい、2人は離ればなれに。ロンドンに暮らす双子の少年ジェイソンとマーカス。ある日、突然の交通事故で兄ジェイソンがこの世を去ってしまう。もう一度兄と話したいと願うマーカスは霊能者を訪ね歩き、やがてジョージの古いウェブサイトに行き着く。そんな中、それぞれの事情でロンドンにやって来るジョージとマリー。こうして、3人の人生は引き寄せ合うように交錯していくこととなるが…。