マレーナ(2000)

「あの頃 あなたが世界の全てだった」

「今も胸に残るのは マレーナだけ」


原題は「Malèna」
戦争に翻弄される人妻と、彼女を思う少年の初恋と成長

といっても、本当の主人公は美女でも少年でもない

1940年のイタリア、シチリア島

マレーナモニカ・ベルッチ)という美しく官能的な女性に対する

(男たちの)羨望や欲望

(それに対する女たちの)妬みや憎しみという

マレーネを取り巻く群集(の醜さ)こそが主役なのです

そして私たちも、傍観者のひとりとなる

だだ前半がですね、ほぼ少年レナート(ジュゼッペ・スルファー)の

覗きと、エロ妄想と、自慰行為

モニカ・ベルッチが近所に住んでいたら大変 笑)

それがまたしつこい

ベッドを激しく揺らしてマスをかき

擦りすぎてズボンを破いてしまったり

母親(マティルデ・ピアナ) は息子に悪魔が憑いたと祈祷師を呼び

困った父親(ルチアーノ・フェデリコ) はレナートを売春宿に連れていく始末

人によっては笑えるかもですが、食傷気味になります

中盤からはグッと面白くなります

夫が東アフリカで戦死したという知らせが来て

戦争未亡人となったマレーネを村中の男たちが狙います

マレーナは幸せを取り戻そうとカディ中尉と交際しますが

マレーナを一方的に狙っている歯科医が

カディ中尉がマレーナの家から出ていくのを見ると

マレーネに会いに行き彼女を襲ってしまいます

そのことが歯科医の妻にばれ、怒った妻は
「幸せな家庭を壊そうとした」とマレーナと中尉を訴えるのです

(いやいや、悪いのはアンタの旦那だから)

 

そのことで教師をしていたマレーナの父親は職場をクビになり

マレーネは父親の家から閉め出され

裁判では中尉がマレーナとの関係を

「遊びだった 本気ではなかった」と証言します

マレーナをなじる村人たちから恨まれたくなかったのです

失望するマレーナ

しかし有能な弁護士のおかげでマレーナは無罪になります

「お金がないけどこれだけ」と分割払いにしてほしいと頼むマレーネ

「私の弁護料はとても高い 君には払えない」と言い

無理やり肉体関係を求めます

このマザコン弁護士も、歯科医や中尉と同じ

欲望を満たそうとしただけで、マレーネを守ろうとはせず

母親に交際を反対されるとマレーネを棄てるのです

そんな時、シチリア島を爆撃が襲い

マレーナの父親が犠牲になります

生活に困窮し、食べことも出来なくなったマレーナは仕事を探しますが

誰も彼女に手を差し伸べる者はいませんでした

やけくそになったマレーネは、長い黒髪を切り赤毛に染めると

街を練り歩きます

煙草を加えると我こそ火をつけようと男たちが群がる

でもその様子はミュージカル映画の楽しいそれとは違う

孤独を抱えた女の姿でした

ムッソリーニ率いるイタリアが敗戦濃厚ななか

島に駐屯するドイツ兵相手の娼婦になります

ますます彼女を忌々しく思う人々

やがてイタリアが連合軍に降伏すると

女たちがドイツ軍の建物からマレーナを引きずり出し

「アバズレに制裁を!」と服を引き裂き、髪の毛を切り

殴る蹴るのリンチをするのです

顔を隠し半裸で血を流ながら逃げていくマレーナ

戦争が終わり、マレーナは去り、街に平穏な日々が訪れると

死んだはずマレーナの夫ニーノが、片腕を失い帰ってきます

彼が戦死したという知らせは誤報だったのです

マレーナが待っているはずの家にはホームレスが住みつき

いなくなったマレーネを探すものの

人々は「ヤリマン女の夫が帰ってきた」と陰口を叩き

「あんたの奥さんは娼婦になった」と笑います

マレーナのことをずっと見ていたレナート少年は

匿名でニーノに手紙を書きます

「街の噂は気にしないでください」

マレーナさんは あなたに誠実でした」

「愛したのはあなたひとり」

「最後に彼女を見たのは メッシナ行きの汽車に乗る姿でした」

夫と腕を組み戻ってきたマレーナ

「シワが増えた」「太ったわね」とささやく(リンチした)女たち

マレーナが市場で買い物すると、罪滅ぼしのつもりか

衣服までサービスします

「ご親切にありがとう」とだけ言って去るマレーナ

マレーナが落としたオレンジをレナート少年が拾うと
心の中で「お幸せに、マレーナさん」と言い

彼女を見送るのでした

 

マレーナの本名はマッダレーナで

娼婦から聖女になったキリストの弟子「マグダラのマリア」のこと

しかしカトリックの一部の宗派からは

今でも「罪深い女」として貶められるそうです

 

 

【解説】映画.COMより

1940年、第二次大戦下のイタリア。12歳の少年レナートは、村で一番美しい女マレーナに一目惚れする。結婚したばかりの夫を徴兵された彼女は、海岸沿いの家に1人で住んでいた。戦地にいる夫を想い、目の見えぬ父親の世話をする彼女を影のように追うレナート。やがて、敗戦とともにマレーナの夫の戦死が伝えられ、彼女にとっての悲劇が幕を開ける。長ズボンをはくようになったレナートは、そのすべてを胸張り裂ける想いで見つめ続けていた。

2000年製作/92分/イタリア・アメリカ合作
原題:Malena
配給:ギャガ・ヒューマックス共同
劇場公開日:2001年6月9日