ローマの奇跡(2006)

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原題はPer non dimenticarti 英題forget you not忘れないで)

戦後間もない1947年のローマの産科病棟で

出産を待つ9人の女たちの数日間の物語

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雰囲気は成瀬巳喜男に似てるといいますか

夫は仕事のことでも、家庭のことでも、優柔不断で女性の気持ちに鈍く

妻があれこれ言っても、望むような反応が返ってこなくてうんざり

そのうち妻は夫に期待するのをあきらめて、女の幸とは何か

自分なりに見つけていくというもの

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ヒロインのマリエッラは妊娠8カ月目の妊娠で異常が見つかり

医者のススメで管理入院することになりました

そこには様々な事情を抱える女性たちが出産を待っていました

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大事故をおこした大型バスの運転手の夫と共に入院中の女性

信心深く常に何かと守護天使の名前を挙げる女性

過去に死産した子の誕生日を祝い続ける女性

男の子ばかりの子だくさんで、女の子を望んでいる女性

夫が行方不明で隣人の男性から結婚を迫られている女性

ダメ夫と偶然再会した元カレとの間で心が揺れる女性

黒人の男性の子(私生児)を妊娠し親から勘当された女性

最後まで心を開くことができない夜の女

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マリエッラの夫は、彼女の両親の家に居候し

父親の家具店を任され経営する、日本でいう婿養子状態

それが子どもが生まれたらもっと大きな部屋に引っ越すため

売り上げがパッとしない家具店を売ろうというのです

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次の仕事が決まってるわけでもないのに

親が娘のために長年かけて築き上げた店を売って

一時的な大金を儲けてどうにかしようとする夫

 

だけどこの頃は妻が夫に従わなければならない時代だったんですね

しかもイタリア映画に出てくる男は、働きもせず口だけの

クソ亭主ばかりだ(笑)

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それでもマリエッラは同じ病室の彼女らに比べたら、まだ裕福なほう

まわりは金もなく、食べ物がなくても妊娠してしまう女性たちばかり

衛生や環境がいいわけでなく死産や流産も多かったことでしょう

または宗教上、望まなかった妊娠でも産まざるをえないのです

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それでも女は逞しい

喫煙や飲酒はあたりまえ(笑)

少ない食べ物を分かち合い、音楽に合わせてダンス

出産の悩みや苦しみを共有できるのも妊婦同士だからこそ

新しい命の誕生を喜び祝福する

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そんな中マリエッラのお腹の中の子は死んでしまい

迎えに来た夫と病院を去ることになりました

彼女は赤ちゃんを亡くした哀しみを、夫でも、両親でもなく

「あの部屋の仲間と一緒なら耐えられたかもしれない」

と、考えるのでした

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今はコロナのせいで、大部屋でも少人数制で

壁やカーテンで仕切られ、プライバシーは守られ

患者同士が顔をあわせることはほとんどありません

 

でもちょっと昔は、カーテンなんて寝るとき以外あけっぱ

お見舞いはガヤガヤやってくるわ、お菓子や果物はおすそ分け

共有コーナーでは違う病室の人たちとも世間話に花が咲いたもの

消灯時間がくると誰かの病室に集まり飲み会(それはオマエだけだ)

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夫が頼りない分、女たちには戦場の兵士のような友情が芽生え(笑)

そのわりには退院したらそれっきり(ライン交換みたいなことはなかった)

まさしくこの映画に近いものがありました

 

昭和とか、平成に入院した経験のある女性なら

懐かしいものを感じるかも知れません

 

 

【解説】ウィキペディアより

マリアントニア・アヴァティ監督の2006年のイタリアドラマ映画

ピピ・アヴァティ監督の娘、マリアヌニア・アヴァティ監督が監督を務めた最初の長編で戦後イタリア(1946-47)の劇的で現実的な映画