山の音(1954)




成瀬版、シンデレラ物語か

小津作品の「晩春」の後日談のような物語
「晩春」では実の父娘の感情を越えた思いを感じますが

ここでは嫁と舅の、肉体でこそ結ばれることはありませんでしたが
深い愛情を描いています

舅の尾形信吾は、有能な社長か重役なのでしょう
息子の修一は恵まれていて、たぶん会社へもコネで入り
仕事をサボっても、平気で女遊びをしていても
誰も文句は言わない、そんなお坊ちゃま的存在

だから尾形は嫁である菊子が不憫でたまらない
文句も言わず、すべての家事をこなし
小姑が不愛想な孫を連れて出戻ってきても笑顔で対応する
自分の妻は何もせず、食べてはいびきをかいて寝、そういう女性
ついけなげな菊子のことばかり、気にかけてしまうのです

菊子もまた「お父さん、お父さん」と常に舅を慕います
夫との会話は全くていっていいほど、ないというのに





修一は菊子に嫌味を言っては悲しませ
やっと妊娠したというのに、堕胎しようとする菊子を止めもしない
(原作では中絶費用は愛人が払ったということ)

そして修一の浮気相手のひとりで
尾形の秘書でもある女性も修一の子を妊娠していました
彼女は修一から蹴られ、階段から引きずり落とされたいいます
それでも彼女は子どもを産む覚悟をしているようです

修一のように、救いようのない優柔不断男が
なぜか女性にはモテるのは確か
そんな馬鹿息子の尻拭いをしようとする尾形
少しでも足しになればと、お金を渡そうとする


浮気、妊娠、堕胎、離婚・・
そして親子で愛し合ってしまうという不幸
それでもなぜか、この作品がどこか美しいのは
やはり成瀬も天才監督のひとりだからなのだな


ちなみに撮影当時の父役である山村聰さんは43歳
母の長岡輝子さんは42歳、息子、上原謙さんは44歳ということ
昔はこういうキャスティングは普通だったのでしょうか
驚くばかりです


ドロドロ系が好きな方にはお薦めでしょう
私にはとても、居心地が悪い作品でした



【詳細】NHKオンラインより
鎌倉で息子夫婦と暮らす尾形信吾は、老いを感じ、寂しさを感じる日々を送っていた。息子・修一の浮気に耐える嫁の菊子を不びんに思う信吾は、いつしか菊子にひかれるようになるが、やがて菊子の妊娠がわかり…。川端康成の同名小説を映画化。巨匠・成瀬巳喜男監督が、戦後の中流家庭の複雑な人間関係を描き、撮影・美術、編集と演出の粋を極めた代表作の一つ。原節子が、清楚(せいそ)で意志の強いヒロインを見事に演じている。