マグノリアの花たち(1989)

原題は「STEEL MAGNOLIAS」(鋼のマグノリアたち)

マグノリアとは木蓮モクレン)のことで

ここではアメリカ南部を象徴する花木「タイサンボク」のこと

STEEL MAGNOLIA」とはアメリカ南部女性の気質を表す言葉で

意味は、外見はモクレンの花のように可憐だけれど

芯は鉄のように頑丈で逞しいということ

まあ、女性は少なからずそうですけどね

噂話や愚痴が好きなのも、どこの女性も一緒(笑)

物語はルイジアナ州にある架空の町の美容室から始まります

重度の糖尿病(1型)であるシェルビー(ジュリア・ロバーツ)の

結婚、出産、産後の合併症、死に至るまでを

母のマリン(サリー・フィールド)や隣人たち

美容室を経営するトルーヴィ(ドリー・パートン

愛犬だけが生きがいの未亡人ウィザー(シャーリー・マクレーン

元町長の妻クレリー(オリンピア・デュカキス)

夫が蒸発し宗教に陶酔する美容師アネル(ダリル・ハンナ)が

喧嘩しながらも、助け合っていく姿を描いたもの

といってもお涙頂戴ではなく、どちらかといえばコメディ

しかも「機嫌がいいのね 車で子供でも轢いてきたの」とか

「ケツに聖書をぶち込むわよ」とか、かなり口がお悪い(笑)

しかし堂々たる大大女優たちが顔を揃えているだけあって

下品になることなくラストまで楽しく見れます

アメリカの、いわゆる保守派を知るための

テキストとしてもおススメ

家族愛、信仰、地域共同体の絆

どの家も金持ちとまでいわないけど、それなりに裕福で

黒人やレッドネックなる白人はいません

(鳥を追い払うだけに)銃を撃ちまくる

同性愛者へのからかい

ヘルメットみたいなヘアスタイル

女の幸福は結婚して、子どもを産み、育てること、という

開拓時代から続いているような価値観

ワシントンやニューヨークの良識派の人間にしたら

狂信的で偏屈に見えるかも知れないけれど

自分達は昔から続くこの暮らしを愛していて

これから先も守りたいだけ

一歩間違えれば、批判をあびるような内容を

ユーモアたっぷりに仕上げたハーバード・ロスの手腕は見事

カメラはジョン・A・アロンゾ

編集はポール・ハーシュ、スタッフも一流ですね

美しい風景の中、新しい生命が誕生を迎え

それぞれの再スタートを歩みだす

マグノリアたちなのでした

 

 

【解説】allcinema より

犯罪者の夫を持つアネル(ハンナ)がトゥルーヴィ(パートン)の美容室に勤め始めた日は、近くに住むマリン(フィールド)の娘シェルビー(ロバーツ)の結婚式だった。髪を結いに来た二人、さらに前町長の未亡人クレリー(デュカキス)を交え楽しく語らっていた時、シェルビーに糖尿病の発作が起きる。その場はすぐに治まったが、今度は、犬だけが心の支えのウィザー(マクレーン)が怒鳴り込んでくる。鳥を追っ払うためマリンの夫ドラム(スケリット)が庭で撃ち続けている銃の音に犬が脅えるというのだ。あれやこれやで結婚式は無事終わるが、しばらく経ったクリスマスの晩、シェルビーは母親に妊娠を告げる。医者から止められていたにも拘らず、子供を持つことに固執する娘に当然マリンは怒るが、皆の励ましを受けようやく喜ぶことが出来た。やがて、無事出産を終えるが、出産の際のストレスで腎臓障害が起き、マリンの腎臓を移植することに。手術は成功し、再び平和な日々が訪れるが、ある日シェルビーを発作が襲う……。これでもかの芸達者を揃え、南部の小さな町を舞台に綴られていく感動の人間ドラマ。ハーリングが自らの舞台脚本を映画用に書き直した。誰一人としてひけを取らない演技陣をまとめあげた監督ロスの手腕もお見事。音楽も素晴らしい。シェパードはパートンの、マクダーモットはロバーツの、それぞれ夫役。