
「どうしてみんな私を困った子っていうの?わたしはトットちゃんなのに」
原作は1981年に出版された黒柳徹子の自叙伝
総発行部数は2500万部を超え、最も発行された自叙伝として
ギネス世界記録に認定されているそうです
(「徹子の部屋」もギネスにも認定されている 笑)

昭和15年(1940年)、公立小学校に入学したトットちゃんは
映画が始まって数分で退学になってしまいます(笑)
「お宅のお嬢さんがいると学校の迷惑になります!」
戦争プロパガンダが小学校教育に入り込み
女性担任が「へいたいのうた」の歌詞を黒板に書こうとしていると
机の扉をバンバン開け閉めしたり
外を歩いているチンドン屋を呼び込んでしまったり
授業を遮ってしまうからです

ラストにも出てくる、このチンドン屋は
たぶん(戦争の存在を忘れさせ)人を楽しませてくれるメタファーなんですね
そこで私立の(旧制)小学校である「トモエ学園」に
お母さんと一緒に電車に乗って行くトットちゃん
大人になったら「(駅の改札の)切符屋さん」と「スパイ」になりたい
トットちゃんは廃電車を利用した「トモエ学園」に大興奮
小林校長先生はお母さんを返し、トットちゃん本人と面接するといい
そこで「なんでも話していいよ」というと
トットちゃんのお話はなんと4時間も続き(笑)
喫茶店で待つお母さんは不安になりますが、無事合格
この生徒が好きな授業を好きな時間に学べる(時間割がない)
校長先生自ら子どもたちと直接話し、お散歩に行き
お弁当を食べ、ピアノを弾いて一緒に歌う
自由教育がモットーのトモエ学園をトットちゃんは気に入ります
なかでも便所(トイレという代物ではない 笑)に
財布を落としてしまったトットちゃんが
汲み取り用の「ひしゃく」を持ち出し便をすくいだしはじめ
そのことに「戻しとけよ」としか言わない校長先生のシーンは逸品
なにがって校長先生の対応の素晴らしさですね

結局財布は見つからなかったけど
「とことんやった」ことでトットちゃんは満足するんですね
しかもちゃんとお家には、身体を洗って友だちの服を借りて
綺麗にして帰している
(身体障害や発達障害のある)子どもたちが
傷ついたりトラウマにならないようとてもよく考えているのです
だから子どものことを憐れんでいるように感じることがあれば
教師への指導も徹底的に厳しいんですね
「手助けをしなくても子供たちは自分自身で乗り越える力をもってる」
「大人がむやみやたらに介入するべきではない」のだと

この校長先生は小林宗作という実在した方で
日本に於けるリトミック教育の先駆者だそうです
黒柳徹子のほかにも、有名になった教え子がたくさんいるそうで
黒柳徹子が長い間映像化を断り続けた理由のひとつが
小林先生を演じられる役者がいないと思ったからだそうです

そしてトットちゃんに影響をあたえたもうひとりが
小児まひ(ポリオ)で片手片足が不自由な泰明(やすあき)ちゃん
お転婆なトットちゃんとは対照的に本を読んでいるだけのおとなしい子
新しい?(笑)廃電車で図書館を作る校長先生の粋なはからいよ
(でも初恋の相手はのちに物理学者になった山内泰二 笑)

泰明ちゃんに無理やり木登りさせたり
プールに誘ったりハラハラものなのですが
トットちゃんには「普通と違う」という観念がない(笑)
なんとかなる、やってみなきゃわからないのモットー
泰明ちゃんの泥だらけになった服や
運動会の二人三脚を見て心配ながらも嬉し涙する泰明ちゃん母親

でもそのトットちゃんが腕相撲でわざと泰明ちゃんに負けてしまう
怒ってしまう泰明ちゃん
トットちゃんは大事なのは勝ち負けじゃない
フェアであることを知ります
やがて開戦したというラジオが入ると
(トットちゃんは自由が丘の上流家庭のお嬢様なので)
「パパ・ママじゃなくて、お父さんお母さんと呼びなさい」
「パパ・ママはアメリカの言葉だから」と両親から伝えられます

いつのまにか親しかった駅員さんが女性に変わる
いつのまにかロッキー(シェパード)がいなくなる
(軍用犬として戦地に送られたり、殺されて皮や肉を利用されたらしい)
お昼に持たせてもらうのは豆が15粒入っただけの袋
お腹が空いて泰明ちゃんと歌を歌う
「♪よく噛めよ♪食べ物を♪噛めよ♪噛めよ♪噛めよ♪噛めよ」

そこに兵隊がやって来て
「君たちも一国民なんだから兵隊の為に我慢しろ」と
そう言って自分は定食屋に入っていく
「だってお腹がすいていたんだもん」と泣くトットちゃんを励ますため
雨の中踊り出す泰明ちゃん
元気を取り戻したトットちゃんを駅で見送る泰明ちゃんが
何か呟きますがその声は聴こえません
そして夏休みが終わった新学期
クラスのみんなに「泰明ちゃんが死んだ」ことを校長先生が伝えにきます

みんなを幸せにする箱があると教えてくれた
「アンクル・トム」という黒人奴隷の本を貸してくれた
黒柳徹子がテレビの世界に入ったのも
ユニセフ親善大使になったのも
泰明ちゃんの友情があったからこそなのでしょうね

婦人会のような女性たちが白い割烹着姿で
「華美な服装はやめましょう❗️」「指輪も止めましょう❗️」とデモ行進
買い物に行くとトットちゃんの母親が華美な服装だ
パーマをあてていると憲兵に止められてしまう
父親が妻をジロジロ見るなと憲兵に怒り一触即発
トットちゃんがびっくり箱?を憲兵に見せている間に3人で逃げ出す
バイオリン奏者父は信念の人で軍歌の演奏を断った
演奏をすれば食料をもらえるというのに
その父親もいなくなった
(1944年に召集され出征、敗戦後はシベリア抑留される)

新交響楽団や東京交響楽団のコンサートマスターも務めた凄い人で
伊福部昭の「ゴジラ」第1作目のテーマ曲を演奏
のちに「徹子の部屋」に出演した伊福部昭がそのときのエピソードを
語ったそうです(笑)
昭和20年(1945)戦争が激化し
トモエ学園の生徒たちはそれぞれ田舎に疎開することになり
トットちゃんも母親と生まれたばかりの弟と青森に行くことになります
「大きくなったらトモエ学園の先生になる」と校長先生と約束するトットちゃん

(あらかじめ建物を壊し、延焼防止のための防火地帯を作ったそうです)
トモエ学園は空襲で焼け落ちてしまいます
炎に包まれている学園を見ながら「今度はどんな学校を作ろうか」と
次に作る学校のことしか考えていなかったという校長先生
青森に疎開に向かう汽車で、泣きじゃくる弟を抱きながら
リンゴ畑を眺めるトットちゃん(こんなに簡単にドアが開いていいのか 笑)
遠くに演奏しながら歩くチンドン屋が見えると
弟は泣き止み笑顔を見せたのでした
トットちゃんが、ちょっと「お姉さん」になるまでの成長記
そこに教育、友情、子育て、平等、反戦、といったテーマがてんこ盛りですが
分かりやすく見やすいところが、どなたにでもおススメだと思います
「君たちはどう生きるか」のように
決して頭を悩ませることはございませんでした(笑)
【解説】映画.COMより
黒柳徹子が自身の子ども時代をつづった世界的ベストセラー「窓ぎわのトットちゃん」をアニメーション映画化。
好奇心旺盛でお話好きな小学1年生のトットちゃんは、落ち着きがないことを理由に学校を退学させられてしまう。東京・自由が丘にあるトモエ学園に通うことになったトットちゃんは、恩師となる小林校長先生と出会い、子どもの自主性を大切にする自由でユニークな校風のもとでのびのびと成長していく。
主人公トットちゃん役で子役の大野りりあな、トモエ学園の校長・小林先生役で役所広司、バイオリン奏者であるトットちゃんのパパ役で小栗旬、ママ役で杏、担任の大石先生役で滝沢カレンが声の出演。「ドラえもん」「クレヨンしんちゃん」シリーズなどの国民的アニメを世に送り出してきたシンエイ動画がアニメーション制作を手がけ、「映画ドラえもん」シリーズの八鍬新之介が監督を務める。
2023年製作/114分/G/日本
配給:東宝