原題は「The Holdovers」(残留者たち)
すでに副題とキャッチコピーでネタバレしていますが(笑)
この映画を公開年のクリスマス・シーズンに上映しなかった
配給会社はバカだ
ひさびさに劇場で「ミラマックス」のロゴを見ましたね(笑)
アメリカン・ニューシネマ調の映像に編集
自虐ネタあり、下ネタありだけど、クスっとできて
ハッピーエンドとはいえないけどラストの余韻もいい
なによりこの頑固で、嫌われ者で、アル中
ハゲで斜視で(病気のため)体臭がきつく多汗症の教師を演じた
ポール・ジアマッティをだんだんと愛おしく思えてくる不思議
これが映画の魔法よね
1970 年12月、ニューイングランドにある男子校、バートン高校で
古典を教えるのハナム先生は、厳しい採点で有名で
大口寄付者の議員の息子のプリンストン大学への
推薦入学が取り消しになってしまいます
校長のウッドラップ(ハナムの元教え子)は罰として
クリスマス休暇中の生徒の監督をする教授の母親が膠原病なので
代わりに寄宿舎に残った5人の学生の監督をするよう命じられます
母親が新しい父親との新婚旅行を優先させ
セントクリストファー島への旅行をキャンセルされたアンガス
ハナム先生がテストで落第させブレイディ
髪が長いと言う理由で父親にスキー旅行をキャンセルされた
韓国からの留学生で、帰国には遠すぎるイェジュン
両親が海外で普及活動中だというアレックス
そしてもうひとり、ひとり息子をベトナム戦争で亡くした
学食の料理長メアリー・ラム
休暇中にも勉強に運動と、融通のきかないハナム先生に
学生たちは面白くない
しかし6日後、ジェイソンのパパがヘリコプターでやって来て
(両親の許可があれば)ほかの残された学生たちも一緒に
スキー旅行に連れて行くといいます
しかしハナム先生が何度アンガスの母親に電話しても所在がつかめません
アンガスはひとり寄宿舎に取り残されてしまいます
アンガスは寄宿舎を逃げ出そうと
ホテルの部屋を予約しようとしたり
ハナム先生に反抗して、立ち入り禁止の体育館の器具に飛び込みますが
肩を脱臼してしまいます
それでも病院で保険の手続きが行われようとしたとき
アンガスは保険を使わず、自己責任だと嘘をつきます
(ハナム先生が監督不行で母親に裁判にかけられる可能性がある)
その後ふたりはダイナーに食事に行き
休暇中はバイトしているという事務員のミス・リディアから
クリスマス・イブのパーティーに招待されます
メアリーと用務員のダニーもパーティーに同行し
ハナム先生はリディアの陽気さに惹かれたものの
彼女に恋人がいることを知ってがっかり
メアリーは息子の死を嘆き泥酔してしまいます
アンガスはリディアの姪のエリーゼと素敵な時間を過ごしましたが
ハナム先生と(父親のことで)口論になってしまいます
ハナム先生は自分の行動を反省し、クリスマスのお祝いをしようと
売れ残りのツリーを買いに行く
さらにボストンに行きたいというアンガスの願いを
「校外学習」ということで叶えることにします
メアリーをロックスベリーで降ろし(妊娠中の妹の家がある)
ハナム先生とアンガスはアイススケートをしたり
ボストン美術館を見学します
そこで偶然ハナム先生のハーバード時代の同級生に会い
アンガスはハナム先生がハーバードを中退したこと
有力者の息子に盗作の濡れ衣を着せられ、ハーバードを追放されたこと
それを知ったバートンの元校長が、非常勤講師として
雇ってくれたことを告白します
堅物だと思っていたハナム先生も、実は短気で見栄っ張りで
自分とそう変わらなかった
アンガスはハナム先生と「小さな巨人」を見ているとき
劇場を抜け出しタクシーに乗り込もうとします
しかし異変に気付いたハナム先生に見つかり
ボストンに来たのは父親に会うためだったと打ち明けます
父親が死んだというのは嘘で、精神病院に入院していたのです
アンガスは父親を愛していましたが
自分も父親のように精神疾患を患うのではないかという
不安に怯えていました(うつ病の薬を飲んでいる)
アンガスに、君は父親と同じ人間ではない
君は君だと断言するハナム先生
(ハナム先生が飲んでいるのも、アンガスとおなじうつ病の薬)
寄宿舎に戻ったふたりは、メアリーとダニーと一緒に大晦日を祝います
クリスマス休暇の終わった1971年1 月
皆が教室に戻り、ブレイディは見事に雪焼け(笑)
ハナム先生は、追試前の小テストを配ります
テストを採点しているハナム先生を呼びにくるミス・リディア
校長室にはアンガスの母親と義父の姿
アンガスの母親の話しでは、アンガスと父親の面会は許可されておらず
アンガスがプレゼントした(リディアのパーティーで見つけた)スノードームで
父親が病院の職員を襲おうとしたと言うのです
アンガスを陸軍士官学校に転入させるという両親に
(アンガスが連絡できないよう旅行していたくせに!)
すべて自分が計画したことだと説明するハナム先生
校長はハナム先生がバートンを辞めることを条件に
アンガスが留まることを許可します
ハナム先生が去る日、メアリーは何も書かれていないノートをプレゼントします
いつか書きたいと言っていた小論文
でもこのノートの厚さじゃ長文になってしまうと笑うハナム先生
トレーラーに荷物を積み、ボロ車で去っていくハナム先生
交差点で一時停止すると
バートン校の方角に向かって吐き出したのでした
人生やり直すには、年を取り過ぎたハナム先生だけど
またどこかで教師をしながら
本を書き上げてくれることを、祈らずにはいられませんでした
【解説】映画.COMより
「ファミリー・ツリー」「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」の名匠アレクサンダー・ペイン監督が、「サイドウェイ」でもタッグを組んだポール・ジアマッティを主演に迎えて描いたドラマ。
物語の舞台は、1970年代のマサチューセッツ州にある全寮制の寄宿学校。生真面目で皮肉屋で学生や同僚からも嫌われている教師ポールは、クリスマス休暇に家に帰れない学生たちの監督役を務めることに。そんなポールと、母親が再婚したために休暇の間も寄宿舎に居残ることになった学生アンガス、寄宿舎の食堂の料理長として学生たちの面倒を見る一方で、自分の息子をベトナム戦争で亡くしたメアリーという、それぞれ立場も異なり、一見すると共通点のない3人が、2週間のクリスマス休暇を疑似家族のように過ごすことになる。
ポール・ジアマッティが教師ポール役を務め、メアリー役を「ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ」「ラスティン ワシントンの『あの日』を作った男」のダバイン・ジョイ・ランドルフ、アンガス役を新人のドミニク・セッサが担当。脚本はテレビシリーズ「23号室の小悪魔」「ママと恋に落ちるまで」などに携わってきたデビッド・ヘミングソン。第96回アカデミー賞では作品賞、脚本賞、主演男優賞、助演女優賞、編集賞の5部門にノミネートされ、ダバイン・ジョイ・ランドルフが助演女優賞を受賞した。
2023年製作/133分/PG12/アメリカ
原題:The Holdovers
配給:ビターズ・エンド