原題は「REBEL IN THE RYE 」(ライ麦の反乱軍)
原作はケネス・スラウェンスキーのベストセラー本
「サリンジャー 生涯91年の真実」(2013)
単行本未収録作品や未発表原稿や手紙
関係者の証言、政府の資料を突き合わせながら
コロンビア大学でのバーネット教授との出会い
ウーナー・オニールとの恋
太平洋戦争ではノルマンディー上陸作戦に参加し
多くの仲間を失いながら激戦をくぐり抜け
そんな戦争体験と戦後のPTSDという狂気の中から
やがて禅に目覚め
「仲間と敵を厳しく区別」する潔癖さや
「無垢で壊れやすいものを守りたい」という願望を描いた
代表作「キャッチャー・イン・ザ・ライ」が発表されるまで
そして有名人になった彼は、ニューハンプシャーにある
コーニッシュの村に引きこもり、平穏な生活を送っていましたが
親しくしていた女子高生のひとりが、学生新聞の記事として受けたインタビューを
スクープとして地元の新聞にリークしたのがきっかけで
人間も言葉も信じられなくなり、社会からも家族からも孤立してしまう
サリンジャーの人物像を丁寧に書き換えているそうです
私は「キャッチャー・イン・ザ・ライ」も
「ナイン・ストーリーズ」も読んでいないので(笑)
この映画の主人公がどれくらいサリンジャー本人に近いのか
わかりませんが
印象深かったのは、二番目の妻
(1人目は戦時中神経衰弱で入院したとき知り合ったドイツ人医師)
のクレアが「私が老けても愛してくれる?」と尋ねるシーン
彼女の心配は的中し、1男1女を儲けるもののやがて離婚
作中では描かれていませんでしたが、その後18歳の女性と同棲
1990年にはなんと50歳年下の看護師と結婚(笑)
単に可愛いからという理由だけでなく、若い女性しか好きになれないのは
精神年齢がそれだけ若いということでしょうね
大人達が作り上げたインチキな社会のルールに怒り
従って生きることに耐えられない
恋愛においても10代の娘と付き合うのが
いちばん精神年齢が釣り合ったのでしょう
でも、そんなサリンジャーの社会に対する「怒り」や「不信感」に
多くの若者たちが共感し、孤独から救われたのです
おかげで「キャッチャー・イン・ザ・ライ」の主人公
ホールデン・コールフィールドを、自分がモデルだと思い込み
ストーカー化する読者が続出
2メートルの塀で囲った屋敷の中で生活したそうです
映画としては特に惹き込まれるところはなく
実際、評価も支持率も低かったようですね
それともサリンジャー・ファンなら、何か特別なものを感じる
サリンジャー・ファンのためだけの映画なのでしょうか
でも最後はバーネット教授と師弟愛を取り戻せてよかったね
【解説】allcinema より
名作『ライ麦畑でつかまえて(キャッチャー・イン・ザ・ライ)』によって世界中に熱狂的な読者を持つ有名作家となりながら、人気絶頂の中で表舞台から姿を消して以降は沈黙を貫き、死ぬまで隠遁生活を送ったJ.D.サリンジャーの謎に包まれた素顔に迫ったケネス・スラウェンスキーのノンフィクション『サリンジャー 生涯91年の真実』を基に、サリンジャーの若き日にスポットを当て、その数奇な半生と創作の原点を描いた伝記ドラマ。主演は「マッドマックス 怒りのデス・ロード」のニコラス・ホルト、共演にケヴィン・スペイシー、ゾーイ・ドゥイッチ、サラ・ポールソン。監督は「大統領の執事の涙」「ハンガー・ゲーム FINA」などの脚本を手がけ、本作が映画初監督となるダニー・ストロング。
1939年、ニューヨーク。作家を目指すサリンジャーは20歳の時にコロンビア大学の創作文芸コースでウィット・バーネット教授と出会う。彼の指導の下で完成させ処女短編は、多くの出版社に断られた末にようやく文芸誌に掲載が決まり、作家としての第一歩を踏み出す。そんな中、劇作家ユージン・オニールの娘ウーナと恋に落ち、青春を謳歌するサリンジャー。やがて自分の分身ともいえる若者ホールデン・コールフィールドを主人公にした短編が一流誌『ニューヨーカー』に掲載されることが決まるが、その直後に始まった太平洋戦争の影響で掲載は見送られてしまう。その後陸軍に入隊したサリンジャーは1944年、一兵卒として激戦のヨーロッパ戦線に参加するのだったが…。