ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー(2017)

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原題は「REBEL IN THE RYE 」(ライ麦の反乱軍)

原作はケネス・スラウェンスキーのベストセラー本

サリンジャー 生涯91年の真実」(2013)


単行本未収録作品や未発表原稿や手紙

関係者の証言、政府の資料を突き合わせながら

 

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コロンビア大学でのバーネット教授との出会い

ウーナー・オニールとの恋

(彼女がチャップリンと結婚し破局

 

太平洋戦争ではノルマンディー上陸作戦に参加し

多くの仲間を失いながら激戦をくぐり抜け

ダッハウ強制収容所で見た骨と皮だけのユダヤ人たち

そんな戦争体験と戦後のPTSDという狂気の中から

やがて禅に目覚め

 

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「仲間と敵を厳しく区別」する潔癖さや

「無垢で壊れやすいものを守りたい」という願望を描いた

代表作「キャッチャー・イン・ザ・ライ」が発表されるまで

 

そして有名人になった彼は、ニューハンプシャーにある

コーニッシュの村に引きこもり、平穏な生活を送っていましたが

親しくしていた女子高生のひとりが、学生新聞の記事として受けたインタビューを

スクープとして地元の新聞にリークしたのがきっかけで

 

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人間も言葉も信じられなくなり、社会からも家族からも孤立してしまう

サリンジャーの人物像を丁寧に書き換えているそうです

 

私はキャッチャー・イン・ザ・ライ

ナイン・ストーリーズも読んでいないので(笑)

この映画の主人公がどれくらいサリンジャー本人に近いのか

わかりませんが

 

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印象深かったのは、二番目の妻

1人目は戦時中神経衰弱で入院したとき知り合ったドイツ人医師)

のクレアが「私が老けても愛してくれる?」と尋ねるシーン


彼女の心配は的中し、11女を儲けるもののやがて離婚

作中では描かれていませんでしたが、その後18歳の女性と同棲

1990年にはなんと50歳年下の看護師と結婚(笑)

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ペドフィリア小児性愛)とまではいかないけれど

単に可愛いからという理由だけでなく、若い女性しか好きになれないのは

精神年齢がそれだけ若いということでしょうね

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大人達が作り上げたインチキな社会のルールに怒り

従って生きることに耐えられない

 

恋愛においても10代の娘と付き合うのが

いちばん精神年齢が釣り合ったのでしょう

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でも、そんなサリンジャーの社会に対する「怒り」や「不信感」に

多くの若者たちが共感し、孤独から救われたのです

 

おかげでキャッチャー・イン・ザ・ライの主人公

ホールデン・コールフィールドを、自分がモデルだと思い込み

ストーカー化する読者が続出

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結局サリンジャーは晩年まで、コーニッシュの村の

2メートルの塀で囲った屋敷の中で生活したそうです

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映画としては特に惹き込まれるところはなく

実際、評価も支持率も低かったようですね

 

それともサリンジャー・ファンなら、何か特別なものを感じる

サリンジャー・ファンのためだけの映画なのでしょうか

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でも最後はバーネット教授と師弟愛を取り戻せてよかったね

 

 

【解説】allcinema より

名作『ライ麦畑でつかまえてキャッチャー・イン・ザ・ライ)』によって世界中に熱狂的な読者を持つ有名作家となりながら、人気絶頂の中で表舞台から姿を消して以降は沈黙を貫き、死ぬまで隠遁生活を送ったJ.D.サリンジャーの謎に包まれた素顔に迫ったケネス・スラウェンスキーのノンフィクション『サリンジャー 生涯91年の真実』を基に、サリンジャーの若き日にスポットを当て、その数奇な半生と創作の原点を描いた伝記ドラマ。主演は「マッドマックス 怒りのデス・ロード」のニコラス・ホルト、共演にケヴィン・スペイシー、ゾーイ・ドゥイッチ、サラ・ポールソン。監督は「大統領の執事の涙」「ハンガー・ゲーム FINA」などの脚本を手がけ、本作が映画初監督となるダニー・ストロング。
 1939年、ニューヨーク。作家を目指すサリンジャー20歳の時にコロンビア大学の創作文芸コースでウィット・バーネット教授と出会う。彼の指導の下で完成させ処女短編は、多くの出版社に断られた末にようやく文芸誌に掲載が決まり、作家としての第一歩を踏み出す。そんな中、劇作家ユージン・オニールの娘ウーナと恋に落ち、青春を謳歌するサリンジャー。やがて自分の分身ともいえる若者ホールデン・コールフィールドを主人公にした短編が一流誌『ニューヨーカー』に掲載されることが決まるが、その直後に始まった太平洋戦争の影響で掲載は見送られてしまう。その後陸軍に入隊したサリンジャー1944年、一兵卒として激戦のヨーロッパ戦線に参加するのだったが…。