原題は「BRINGING UP BABY」(赤ちゃんを育てる)
ハワード・ホークスの「どうやって撮影した?動物シリーズ」
第一弾(が、たぶんこれ 笑)
「赤い河」(1948)では1万頭の牛を運ぶロングドライブ
「モンキービジネス」(1952)でのチンパンジーの名演
「ハタリ!」(1961)のプロハンター集団と猛獣の駆け引き
「男性が好きなスポーツ」(1964)では熊が自転車に乗って通り過ぎる
本作では本物の豹のなんておりこうなこと!(笑)
ただヒロインの人格がとにかく問題
名シーンはあるし
脚本はキャサリン・ヘプバーンのために特別に書かれ
彼女もノンストップで身体を張って演じていますが
こればかりは、やたら演技が巧いのが災いしたのか(笑)
可愛いドジっ子というより、最後までイラつく残念賞
事実ヘプバーンはこの作品で「興行毒」のレッテルを貼られてしまい
(後年その卓越したコメディエンヌ振りは高く再評価されたそう)
「フィラデルフィア物語」(1940)でやっと名誉回復したということです
博物館に勤務する古生物学者のデビッド(ケイリー・グラント)は
4年の歳月をかけ恐竜の骨格を組み立て、あとは鋤骨鎖骨が届けば完成
助手のアリスと骨格が完成したら結婚する約束をしています
そして博物館に百万ドルの寄付をしてくれるというランダム夫人の弁護士
ピーボディ氏に会うためゴルフ場へ向かうと
突然現れたスーザン(キャサリン・ヘプバーン)という女のせいで
ゴルフも夕食メチャクチャにされてしまう
そのうえアフリカにいるスーザンの兄から贈られてきたきた
ベイビーという名の豹を口実に、スーザンはデビッドを呼出し
散々振り回すのです
人の言うことなど意に介さないスノッブ(上級国民だけど、鼻もちならない人)
金持ちで、我儘で、自由奔放で、何でも自分の思い通りになると疑わない
そのうえ大事な恐竜の鋤骨鎖骨を
犬が盗み出し広大な庭のどこかに埋めてしまう
そして犬を追い回したり、豹がいるだのと言うデビッドと
スーザンは「病気で頭がおかしい」とランダム夫人や来客に説明するのです
そんなとき、小屋からベイビーが逃げ出し
同じ頃サーカスで調教師が豹に襲われるという事故があり
殺処分されることになった豹がトラックで輸送されます
その凶暴な豹をベイビーと勘違いしたスーザンはデビッドは
運転手が道に迷ってトラックを停めた隙に
なんと狂暴な豹を逃がしてしまうのです
犬を追いかけ、豹を追いかけふたりはボロボロ
ついには車泥棒の容疑で警察に捕まってしまう(これもスーザンが悪い)
しかも、すべて真実を話しても、すべてデタラメにしか聞こえない(笑)
しかも、やっと容疑が晴れた時、デビッドは婚約者にフラれてしまいます
これね、デビッドに(聡明で美人な)婚約者がいる
という設定が特にマズかったと思う
もしデビッドが恐竜一筋、女に全く縁のないヲタク研究者だったら
ヒロインが、あの手この手で彼の気を惹こうとしても罪悪感なし
物質的な破損のほとんどは、現実お金で解決できるし(笑)
恋の駆け引きに、失敗しても迷惑かけても
誰も傷つかなかったはず
ひとこと感想は
「ホークス的女性像」も、脱線するときは脱線するんだな(笑)
そして、それでも、名作には間違いない事実なんだな
【解説】allcinema より
博物館主グラントに次々と災いをもたらす令嬢ヘプバーンと、彼女の叔母に届けるベイビーという名の豹が巻き起こす、これぞ元祖スクリューボール・コメディ。小道具や人物設定に一分の隙も無い良質な脚本によって次から次へと繰り出される笑いのシチュエーションは絶品で、男性映画の名匠ホークスがコメディにもその才能をいかんなく発揮した傑作。気弱で生真面目な役に扮したグラント(ホークス&グラントはこの作品の直後にも「ヒズ・ガール・フライデー」という傑作を放つ)と一方的でわがままだがどこか憎めない可愛い女に扮したヘプバーンの魅力も大きい。「おかしなおかしな大追跡」は本作のアレンジ・リメイクにあたる。