「恋する女性は理性が低下する」
原題は「SPELLBOUND」 (魅せられて)
ヒッチさん登場は35分ごろ、タバコを吸いながら
エンパイア・ホテルのエレベーターから出てきます
ダリのシーンは、「アンダルシアの犬」(1928)と違い
ダリの絵画をそのまま映像にした、と言う感じですが
ダリが提供したアイデアのほとんどが映像化不可能で
ボツになってしまったそうです(笑)
イングリッド・バーグマンはカラーより白黒のほうが断然美しさが映える
30歳くらいで彼女自身がいちばん綺麗で女盛りの頃
グレゴリー・ペックは映画デビューして間もないということもなり
初々しく感じます(大根という評もあるけど)
ハンサムで背が高いので(190cm)
美人だけどガタイのいいバーグマンの相手役にぴったり
ヒッチさんらしく掴みはOK
ひとりの色っぽい女性(ロンダ・フレミング)が看護師の男に連れられて
コンスタンス(イングリッド・バーグマン)のところにやってきます
黒い服を着た精神病(色情狂)のファム・ファタール
一方のコンスタンスは白衣に眼鏡
男にも恋愛にも興味はなく、何でも冷静に分析してしまう精神科医
これ一瞬、ロンダをバーグマンと見違えてしまうんですね(笑)
たぶんロンダにバーグマンと似たメイクをさせていると思うんですけど
ふたりの対比でコンスタンスがいかに堅物かがわかりやすい
なので男性ばかりの職場で上司に口説かれたり、圧をかけられても
仕事一筋、決して動じない
そんな彼女が、新しく病院長に赴任してきた
エドワーズ博士(グレゴリー・ペック)に一目惚れしてしまいます
このエドワーズ博士がやたらと怪しい
白地のテーブルクロスに書かれた線を見たとたん不機嫌になり
ガウンの縞模様で発作を起こしてしまう
そのうえエドワーズが書いたサイン入りの本と本人のサインが全く違う
しかし愛は盲目 、しかも一目惚れほど動じないものはない(笑)
コンスタンスは「彼」のトラウマを探り記憶を取り戻そうと
NYに逃げようとしていた「彼」を追い
恩師ブルロフ博士のところで匿ってもらうことにします
そして博士の治療で、「彼」の名前がジョン・バランタインであること
幼少期に弟を誤って殺してしまったこと
エドワーズ博士はスキーで事故死したことを思い出します
(当時はスーツ姿のままでスキーしたのか 笑)
が、本物のエドワーズ博士の死体から銃弾が見つかり
ジョン・バランタインに殺人容疑がかけられるわけですが
ジョンのコンスタンスによる夢診断により
真犯人は元所長のマーチソンだと判明するのです
後から来た、若くて才能ある後継者が邪魔だったんでしょうな
ラストの銃口を向けるPOV(point of view) 視点のカメラは
実は巨大な銃の模型を使って撮影したものだそうです
観客側に向かって発砲したり、ワンカットだけ赤いコマを挟んだり
心理的な揺さぶりかたがニクイですね
カメラはジョージ・バーンズ
マーチソンの詳しい関係は不明
掴みは上手いけど、詰めが甘いのがいつものヒッチさん(笑)
気になったのは作中でバーグマンが作ろうとした”卵入りコーヒー”
(I'll make you coffee with an egg in it)
めっちゃ不味そうだと思ったんだけど(笑)
日本でも「カフェ・ウフ」という名でメニューがあるそうです
作り方は1CUPの濃いめのコーヒーに(卵が固まらないよう熱すぎない)
砂糖(2杯くらい)、といた卵黄1個、好みでラム酒少しを入れる
ポイントはよく混ぜて早めに飲むこと(笑)
バーグマンに淹れてもらったと思って
試してみてはいかがでしょうか
【解説】allcinema より
新しく病院にやってきたバランタインという医師は、白地に縞の模様を見ると発作を起こすという奇癖を持っていた。やがて、彼の代わりに来るはずだったエドワーズ博士が、行方不明になるという事件が起こる。バランタインが疑惑の渦中に立たされる中、病院の女医コンスタンスだけは彼の無罪を信じ、発作の原因を追究するが……。ニューロティックなサイコ・スリラー。主人公が垣間見る幻想シーンのビジュアルにはサルヴァドール・ダリが協力している。