原題も「Escape From Alcatraz 」
脱獄不可能とされたアルカトラズ連邦刑務所から2人の囚人とともに脱出した
フランク・リー・モリス(1926年-1962年6月11日失踪)がモデル
IQは133
約2年間に渡りモリスとエングリン兄弟は独房内の換気口の格子に
仕事場から道具を盗み交替で穴を掘り
浮き袋を三角形に組み合わせシートを貼り付けたいかだと
紙くずと粘土や穴の削りくずで自分たちに似せた人形を作り
3人はベッドに用意しておいた人形を配置し
掘った穴から煙突を登って屋根伝いに脱出、夜の海に消えます
脱獄もの、というより刑務所ものの原型がこれ
入所するまでのエピソードもほとんどないし、脱獄した後も描くこともない
脱走映画としては「大脱走」(1963)や「パピヨン」(1973)のほうが
エンタメ的に面白いですが(笑)
実際に刑務所を脱走するとなると、看守に目を付けられたら最後
真面目で地味な模範囚を演じているはず
ましてフランク(クリント・イーストウッド)は脱獄の常習犯
要注意人物として最初からチェックされているのです
誰にもばれないよう用意周到な準備をしなければなりません
刑務所内の仲間のキャラクターは脚色だと思いますが
それぞれの人物が、それぞれ違う男臭くさを漂わせていていい
頼りになるアングリン兄弟
換気口の格子をはずせずひとり取り残される隣の独房のバッツ
古株の黒人でびっこの図書係イングリッシュ
ネズミをペットにしているデザート大好きな(自称アル・カポネ)リトマス
絵を描くことが生き甲斐の老人ドク
(スティーブン・キングは絶対この映画のファンだ)
そして刑務所長の(プリズナー No.6 )と看守たち
フランクに嫌われて逆恨みするカマ掘りのデブ、ウルフを悪役に回すことで
脱獄する側に正当性を感じさせてしまうという
ドン・シーゲルの演出の手堅さ
カメラはいつものブルース・サーティース
フランクは被害者であるにも関わら懲罰房に入れられ
放水されるという理不尽な扱いを受け
ドクは署長の肖像画を描いたことで画材を取り上げられる
リトマスは所長に花を飾ることを禁じられた怒りで心臓発作をおこしてしまう
でもここでキレてしまったらすべての計画がおしまい
看守の見回り、立ち入り検査は地味でもヒヤヒヤ(笑)
フランクと仲間たちに同情し、味方になってしまう
こんなユーモラスな人形で看守を騙したのにはびっくりですが
こんなことを考えるとは、誰にも思いつかない(笑)
たぶん消灯後の暗さも計算したトリックでしょう
「人間のつくった房ですから、人間が破れぬはずがありませんよ」
どこか「昭和の脱獄王」 白鳥由栄(しらとりよしえ )と共通する部分もあり
人間が人間の作った殻を破っていく、という
哲学的なものさえ感じました
【解説】allcinema より
脱獄絶対不可能と言われたサンフランシスコ湾に浮かぶアルカトラズ刑務所。実話を基に、そこから奇跡の脱出を果たした男たちの姿を描いたサスペンス映画の傑作。冷酷な刑務所長(P・マクグーハン好演)と寡黙な囚人イーストウッドの対立を軸としながら、脱獄までのプロセスを丹念に描写、その中で紡ぎ出されるサスペンスの数々は何度観ても唸らされる。紙粘土で造った人形を身代わりに仕立て、脱出準備を行うシーンの緊迫感など尋常ではない。イーストウッドのキャラクターに代弁されるが如く、静かな淡々とした作品で、決して派手なものではないが、D・シーゲルの確かな演出が存分に味わえる逸品である