原題は「Scusate se esisto! 」(申し訳ありませんが私は存在します!)
イタリア映画がジェンダー差別を描くとこうなる
実在するイタリアの女性建築家、グエンダリーナ・サリメイの
ローマにあるコルビエール(長さ1キロの住宅団地)の
再開発のためのプロジェクトがモデル
アメリカの"MeToo”運動とは違い、あくまで前向きで明るいし
ヒロインと支えあうゲイ男性の、変態加減もちょうどいい
(”奴隷72”が最高 笑)
幼いころから建築家としての才能を示し
世界各国で学位を取り活躍すしていた女性建築家のセレーナ・ブルーノは
新たな仕事を求めて故郷のイタリアに戻ますが
イタリアの建築業はいまだに男尊女卑で、女性というだけで仕事はありません
貯金は尽き、バイクは盗まれてしまうし、ついにレストランでアルバイト
しかし世界各国で仕事をしたのが役に立ち
外国人観光客に英語や日本語でメニューの紹介をするセレーナ
その仕事ぶりがイケメンオーナーのフランチェスコの目に留まり
ふたりの距離は縮まり、ついにデートに誘われるのですが
そこはゲイ・バーで、ステージに上がり上半身裸で踊りだすフランチェスコ
ゲイなのになぜ優しくしたの、と怒り出すセレーナ
一生懸命なキミをほっとけなかった、とフランチェスコ
イタリア男はゲイだろうが、なんだろうが、イタリア男だ(笑)
でも確かに、まっすぐで努力家なセレーナは可愛い
巨大公営住宅のリフォーム建築案の一般募集に
(盗まれたバイクを探している時に知り合った)住民たちから
女性だけの談話室や、学生が勉強できるスペースが欲しいと聞きます
そしてその巨大公営住宅の共用部分を、今までのコンクリート色ではなく
明るい緑色にしようと思いつきます
設計図を描くのに忙しく、レストランを休んだセレーナを心配して
彼女の屋根裏の狭い部屋にやって来たフランチェスコは
自分のアパートをシェアしようと提案してくれます
でもそこはたびたびフランチェスコの若い恋人、ニコラがやってきて
寝室からスゴイ”喘ぎ声”が聞こえたり
恋人のほかにも”買った男”が訪ねてくる部屋でした
私はこういうシーンやコスプレが大好物なのですけど(笑)
ジェンダー差別のある人(特に男性)にとっては
不快で、気持ち悪く、我慢できないのでしょう
同性愛者や独身女性に対して、子どもを産めない非生産的な人間だと決めつける
(そんなオマエは何を生み出したのか言ってみろ)
公営住宅のリフォーム建築案のコンペに来ったセレーナ
まさか女性が建築家だと思わない面接官は
セレーナ・ブルーノを、ブルーノ・セレーナ(男)だと勘違いしてしまう
プロジェクトを成功させたいセレーナは
ブルーノは出張で大阪にいるので、代わりに面接に来た秘書と嘘をつきます
そこでフランチェスコにブルーノになってもらい
チャットで指示するからリモート会議で替え玉を演じてとお願い
話は噛み合わないうえ、恋人が金の招き猫を突然出したり
おまけにスーツ姿の下半身は裸だし(笑)
ただひとり、面接で一緒だった”もやし男”ピエトロくんだけが
その異変に気付きます
一方でフランチェスコは離婚した妻から
何を聞いても”ふつう”としか答えない
息子のエルトンを2週間預けられてしまいます
だけどエルトンは父親がゲイだと知らない
ホモグッズを隠し、同居するセレーナと恋人のふりをする
そこにセレーナの母親と(訛りで言葉が通じない)叔母が訪ねて来て
フランチェスコの恋人ニコラまでやって来て
エルトンに料理やらデザートをふるまい、てんやわんや
フランチェスコとセレーナは冷や冷やで気が気でないものの
やっと笑顔になるエルトン
本当は楽しいことが好きだったんだ、パパに甘えたかったんだ(笑)
セレーナのリフォーム建築案が通り、プロジェクトが成功しかけた時
請負業者の社長が、緑の共用部分はいらない
そこにショッピングモールを作ると言い出しました
それにはセレーナもキレた
そこには住民の希望も、公募の意味もない
”救いようのないバカ”だと
自分こそが計画の発案者のブルーノだとカミングアウトます
そうして妊娠していることを隠していた女性も
社長と同じサッカーチームを応援してゴマをすっていた男性も
実はフランチェスコと同じゲイ仲間も
みんなでカミングアウトしていく姿は爽快
一番信頼していた秘書ミケーラににまで
「訴えるなら不正を暴露します」と言われ
セレーナの建築案を認めざる得なくなった社長
悪しき風習を断ち切っセレーナの生まれ故郷の山村で、母と伯母の料理に舌鼓を打つ
恋人になった?”もやし男”ピエトロと、フランチェスコたち
映画としては冒頭からテンポよく全体的にポップで楽しい
ストーリーも、ジェンダー問題に自ら前進していていくので
見ているこちら側まで前向きな気持ちになれる
特に働く”アラサー女性”におススメしたい
だだしゲイの男友達が欲しくなるのにはご注意を(笑)
【解説】allcinema より
世界で活躍したイタリア人女性建築家が、いまだ男社会のイタリア建築業界を相手に悪戦苦闘しながらも、ポジティブに奮闘していく姿を描いたコメディ・ドラマ。主演はパオラ・コルテッレージ。監督はその夫でもあるリッカルド・ミラーニ。
建築家として世界を舞台に活躍してきたセレーナ。いまだ独身の彼女は人生を見つめ直し、新たな飛躍を誓って故郷ローマに戻る。ところが、男性中心のイタリア建築業界では思うような仕事に就けず、貯金も底をついてしまう。仕方なくレストランでウェイトレスとして働き始めたセレーナは、優しく接してくれるイケメン・オーナーのフランチェスコに心惹かれる。しかし彼がゲイと分かり、あえなく失恋。そんな中、公営住宅のリフォーム建築案の公募があると知り、男と偽って応募したところ、みごと採用されてしまうセレーナだったが…。