原題は「Quo vado? 」(俺はどこに行く?)
イタリアの国家公務員を風刺したコメディ
面白かったですね
ご都合主義で、自分さえ良ければいいテキトー男
だけど不思議と何もかもういまくいき、最後にはみんなを幸せにする
冒頭アフリカのジャングルを、タクシー兼ガイドの運転で移動中のイタリア男
途中車が故障し、血の気が多い部族に捕らえられてしまいます
部族の首長の要求は、男の話を聞きたいというものでした
男は自分の生い立ちと、今までの人生の振り返り部族の人々に話し始めます
小学校の教室で子どもたちが将来の夢を答えています
獣医、音楽家、科学者・・自分の番が来たケッコは「公務員」と元気よく答え
その通り(議員のコネで)公務員となり
15年間狩猟許可証にハンコを押す係をしながら
住民から”付け届け”をもらうお気軽な毎日
社会保障は約束され収入は安定、あれもこれも優遇されている
なので公務員と結婚したら一生生活は安泰
それをいいことにケッコは恋人を召使扱いし料理をけなす
しかも38歳になっても両親と同居、やっぱりママが一番
恋人へのあまりにも酷い態度には
部族の女性たちからもブーイング
そんな自由快適な日々に終わりを告げられる日がきました
新大臣の緊縮財政のあおりを受け、扶養家族のいないケッコは
”異動”という名のリストラ対象になってしまいます
日本でもやればいいのに、緊縮財政
公務員への過剰な報酬は、イタリアの国家経済悪化の元凶とされ
「ばらまき政策」国はやがて”PIIGS(ピーグス =)”と呼ばれ
ほかのEU加盟国から”豚野郎”と呼ばれているそうです
ケッコはシローニ部長と面接し、退職金を上乗せし離職を勧められますが
特級階級の公務員を辞めるつもりなど全くありません
あらゆる僻地に出向させられ、ついには北極の国際研究センターに飛ばされます
さすがにもう辞めようと決心したとき
パートナーを組むヴァレリア博士が好みの美人で
俄然張り切って調査に参加します
やがて、ノルウェーにある彼女の家に招待され
彼女と彼女の(父親が違う)3人の子どもと過ごすようにまでなるのです
外国映画のコメディって過剰な下ネタが多いのですけれど
ハリウッド映画ほど、露骨だったり下品ではなく(笑)
イタリアとノルウェーの国民性や文化の違いをうまく利用して
笑いを取ると言う感じ
イタリア人やノルウェー人にとっての「あるある」ネタなんだと思います
その頃ローマでは、北極特派員の手当てが莫大なことを新聞にリークされ
大臣命令でケッコは異動を命じられますが、公務員の特権で休職し
ヴァレリアと同棲生活をはじめ、ノルウェーに染まっていきます
ノルウェーでは女性も自立
大人も子どもも、人種や宗教も関係なく人権を尊重
公務員でなくても社会保障があり
前の車にクラクションも鳴らさないし、レジで割込みもない
だけど真面目なぶん、自殺する人も多い
何よりイタリアンレストランのスパゲティが不味い
ついにキレたケッコはイタリアに帰る決意をします
そしてまた僻地に飛ばされ森林警備の仕事に就きますが
主な仕事はマフィアが飼っている危険な猛獣を没収し管理すること
ヴァレリアは自宅の没収を免れることと、動物保護も兼ねて動物園を始めますが
活動に理解を示してくれたミケーレ司祭が異動になり
補助金が下りず動物達の餌代にも困るようになりました
公務員の特権にしがみつくケッコと
ボランティアや社会奉仕が重要だと考えるヴァレリアの意見は分かれ
ついにヴァレリアは子どもたちを連れケッコのもとを去っていきます
ヴァレリアがいなくなり、弱っているケッコのもとに
シローニ部長がやってきて、最終兵器
色仕掛けで退職届けにサインさせようとしますが
まだまだケッコに公務員をやめる気はありません
ここまで話を聞いていたアフリカの部族は
ヴァレリアより公務員を選んだケッコを避難するのですが
ケッコはそのヴァレリアから”妊娠した”という連絡が入り
産まれた赤ちゃんに会いに行かせて欲しいと首長に懇願し
男の子だったら首長の名前をつけると約束します
女の子だったけど(笑)
愛する娘も接種することができないとヴァレリアは言います
アフリカで娘と3人の子どもと暮らすか、イタリアに戻って公務員を続けるか
ヴァレリアに選択をせまられ、悩んだ末
ついにケッコはジローニ部長に電話
しかし退職金は最初に掲示した額より
さらなる緊縮財政で1万5千ユーロ少ない額でした
なかなかサインしないケッコに、ジローニ部長は差額の小切手を自腹で切り
「医療費に役立てて」と言い、自分のあるべきポストに返り咲くことができました
そうして1万5千ユーロ分の大量のワクチンが医療テントに運ばれ
ジローニ部長にアフリカの医療キャンプの全スタッフから
「ありがとう」のビデオレターがジローニ部長に届きます
思いがけず涙が出てしまい、ジローニ部長は自分で
自分にも人間らしい心があったことに驚くのでした
主題歌の♪昔のイタリアは〜~♪の歌詞がうまいですね
借金は子どもたちが払ってくれるさと、無駄なことにお金を使いまくり
昔のイタリアは、まるで今の日本
お金の問題だけではなく、民主主義、社会福祉、動物保護や環境
人種差別、宗教、同性愛結婚というあらゆるネタを笑いにしながら
最終的にまるくまとめるこのセンス
くだらないのに、しっかりと社会問題まで考えさせられる
EU系コメディの秀作だと思います
【解説】映画.comより
終身雇用を求めて公務員になった男がリストラの対象になってしまったことから巻き起こる騒動を描き、イタリアで大ヒットを記録したコメディドラマ。終身雇用の仕事に就いて安定した人生を送るという子どもの頃からの夢をかなえ、15年前に公務員になった独身男性ケッコ。しかし政府の方針で公務員が削減されることになり、ケッコもその対象になってしまう。それでも公務員の職にしがみつこうとするケッコをどうにか退職に追い込みたいリストラ担当者は、ケッコに僻地への異動を命じ続け、ついには北極圏へと左遷する。主演はイタリアで人気の喜劇俳優ケッコ・ザローネ。日本では「イタリア映画祭2016」で「オレはどこへ行く?」の邦題で上映後、17年5月よりヒューマントラストシネマ有楽町で開催の「Viva! イタリアVOL.3」にて劇場公開。