しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス(2018)

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原題はMaudie(モード=ヒロインの名前)

モード・ルイス(1903年-1970年)はカナダの

フォークアート(土地固有の文化を描いたアート) 画家

カナダの田舎の風景、動物や草花をモチーフ絵を描き

カナダで最も愛されている画家のひとり


身体障害者に対する差別が強かった時代

若年性関節リウマチを患い、手足が不自由になり

体も小さく、虐められ学校を中退

母親と共にクリスマス・カードを作り、友人や近所の人達に売って

わずかな収入を得ていましたが

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1935年に父1937年には母が亡くな

  住居は兄がれましたが、兄夫婦離婚して家を売却

モードはノバスコシア州ディグビー郡叔母に預けられます

この先の彼女の人生が映画のストーリー


サリー・ホーキンスは彼女にしか出来ないと思うほどハマリ役

イーサン・ホークはこんなに演技が巧かった?と驚きます(笑)

愚痴っぽく、不親切で、カッとして妻を殴ることもある

だけど後になって自分のしたことを後悔してしまう

隠れた優しさを心の中にもっている、不器用な男を見事に表現しています

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叔母の家に移ってすぐ、モードは(サリー・ホーキンス)は

雑貨屋でエヴェレット・ルイス(イーサン・ホーク)という男が

家政婦を募集しているのを知り面接に行きます

エヴェレットは魚の小売業を営みながら薪を売り

空いた時間は(自分も孤児だった)孤児院の手伝いをしていて

家のことをする暇がなく女手を必要としていました


だけど一目見てモードは障害者だし、変わってる

とても家事はできそうにない、おまけに年増のブス

エヴェレットはすぐにモードを追い出しますが

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孤児院の先生はエヴェレットの短気で気難しい性格を

重々承知しているのでしょう

来てくれた女性なら誰でも採用しなさいとアドバイスします

渋々モードを迎えに行くエヴェレット

案の定モードはトロくて何もできずイライラマックス


それからエヴェレットに「出ていけ」と言われれば出ていくモード

その彼女を彼が迎えに行く繰り返し

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夜中にエヴェレットがムラムラして手を出そうとすると

ヤルなら結婚して、だけど自分は出産した経験があり

その子は障害児ですぐに死んだとカミング・アウト

(叔母がクラブで夜遊びしたモードを咎めたのはそのせいだろう)

これじゃあ萎えるし、ヤル気も失せる(笑)


そんな生活の中モードの癒しは給料で手に入れた絵の具で

リビングの壁や窓に花や動物の絵を描くこと

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ある日ニューヨークから避暑にやって来たサンドラと名乗る女性が

エベレットから魚を買ったのだけれど届かないと訪ねてきました

モードはエヴェレットに注文やら納品を忘れないためには

カードにメモするのだと教え、サンドラに魚を届けに行きます

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そして領収書代わりに渡されたカードのイラストを見たサンドラは

言い値でカードを買うので、もっとカードを書いてほしいと頼みます


モードは知的にも障害者に見えますが、実はすごく知能が高いんですね

何かとまっとうなことを言い返してくる

そこにまたエヴェレットがむかつくのです(笑)

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やがてモードの絵は評判になり、テレビ局までやってきて

(当時の)ニクソン副大統領から注文まで来るようになります

だけどふたりの生活は質素なままで、相変わらずエヴェレットは毒舌


ダメ妻が画を書くために俺が家事をしてるんだと

こんな旦那はいない的な発言を堂々として

テレビを見た人からは非難轟々

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サンドラを頼ってモードが出て行った時も

(たぶん孤児院で一緒だった)漁師仲間は

オマエのような人間と、いままで持ったほうが凄いと言う


実際、世間からのエヴェレットの評判は悪かったそうですが(笑)

「ビック・アイズ」(2014)の亭主に比べたら、よっぽどまし

気難しくて口は悪いけれど、本当は妻を大切に思ってる

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結婚の誓いを交わした後のダンス、自分たちを例えた灰色の靴下の話
「ひとつはヨレヨレ、もうひとつは穴が空いてボロボロ」

欠けた者同士にしかわかりあえない、怒りのぶつけあいと愛情


「要らない」と言い張る網戸を取り付けるエヴェレット

モードを手押しの台車に乗せて走るエヴェレット

モードの(本当は障害はなく生きていた)娘を探すエヴェレット

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夫婦って結婚した時点での愛情って関係ないんだな(笑)

何年も何十年もかけて特別な存在になる


ラストでモードとエヴェレット本人の動画が流れますが

絵であふれた小さなお家で、ふたりとも本当に幸せそう

このたくさんの絵が、ふたりが築いてきた幸せの数なのでしょう

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大傑作とまでは言わないけれど、すごくいい映画

おススメです

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【解説】映画.comより

カナダの女性画家モード・ルイスと彼女の夫の半生を、「ブルージャスミン」のサリー・ホーキンスと「6才のボクが、大人になるまで。」のイーサン・ホークの共演で描いた人間ドラマ。カナダ東部の小さな町で叔母と暮らすモードは、買い物中に見かけた家政婦募集の広告を貼り出したエベレットに興味を抱き、彼が暮らす町外れの小屋に押しかける。子どもの頃から重度のリウマチを患っているモード。孤児院育ちで学もないエベレット。そんな2人の同居生活はトラブルの連続だったが、はみ出し者の2人は互いを認め合い、結婚する。そしてある時、魚の行商を営むエベレットの顧客であるサンドラが2人の家を訪れる。モードが部屋の壁に描いたニワトリの絵を見て、モードの絵の才能を見抜いたサンドラは、絵の制作を依頼。やがてモードの絵は評判を呼び、アメリカのニクソン大統領から依頼が来るまでになるが……。監督はドラマ「荊の城」を手がけたアシュリング・ウォルシュ