ロケットマン(2019)

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原題も「ROCKETMAN」(宇宙飛行士)
♪~Rocket man Burning out his fuse up here alone
ロケットマンのヒューズはここで孤独に燃え尽きる
♪~And I think it's gonna be a long long time
♪~'Til touchdown brings me 'round again to find
とても長い時間になると思うんだ 地球に戻ってくるまでは

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ボヘミアン・ラプソディ」(2018)の監督なので
ボヘミアン・ラプソディ」のようなライブ・パフォーマンスを
期待したなら肩透かし
エルトン・ジョン本人が制作総指揮に加わっているので
伝記映画かといえば、そうでもなく(笑)
曲の発表もライブも時系列はバラバラ、脚本はめちゃくちゃ

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これは歌手、エルトン・ジョンの歴史を語るというより
ゲイ、エルトン・ジョンの決して結ばれることのなかった片思いと
やっと掴めた幸せの物語

映画は更生施設にやってきたエルトン・ジョンタロン・エガートン)が
自分の身の上を語りだすところから始まります

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ジー(レジナルド・ドワイト=エルトンの本名)は
幼い頃から両親に拒絶されて育ちました
(ゲイであることを見抜かれていたと思われる)
しかし1度聞いただけの難しい曲でもコピーできる音楽の才能を持ち
唯一の味方である祖母の薦めで、11歳から王立音楽院でピアノ学びます

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母親の浮気がばれて両親は離婚しますが(通学路でカーセックスするか)
義父が意外にもいい人で、レジープレスリーのレコードをプレゼント
ジーはロックに影響を受け(ハゲの家系だからリーゼントOK 笑)
音楽院を卒業するとバンドを組み小さな店で演奏
ソウルミュージックのバックバンドとして活躍するようになります

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エルトン・ディーンの薦めで名前を変え(エルトンの名前をもらう)
オリジナル曲を作曲するようになり、音楽会社に売り込みに行きます
そこでエルトンを面接をしたプロデューサーのレイ・ウィリアムズは
詞を書けないというエルトンに、作詞家のバーニー・トーピンを紹介します
そのときエルトン20歳、バーニーは17歳、ふたりの天才の出会い

ゲイであるため、自分の思いをうまく言葉で表現できなかったエルトン
バーニーはそんなエルトンの気持ちを、見事な詞にしてしまうのです
だからバーニーの詞を読んだとたんに、エルトンはメロディーを思いつく

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しかも若い頃のバーニーはめっちゃ可愛いかったんですね
(今はマフィアのドンみたいな貫禄だが 笑)
そのころエルトンは女性と付き合っていましたが、バーニーにメロメロ
だけどバーニーはノンケ、エルトンはバーニーと親友として付き合い
仕事仲間として一緒に暮らします

最初のヒット曲は、みんな大好き「Your Song」(僕の歌は君の歌1970年)
♪~I hope you don't mind, I hope you don't mind that I put down in words
気に入ってくれるかな 、気持ちを込めたんだ
♪~How wonderful life is while you're in the world
君がいるだけでこの世界は何て素晴らしいんだろうって

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こんな詞贈られたらエルトンじゃなくてもマイっちゃうよね(笑)
エルトンは、バーニーも自分を愛してくれていると思い込み告白するわけだけど
「ゲイじゃない」とあっさりフラれて撃沈

それでもエルトンはバーニーのことが好きだったし
仕事上のパートナーとして数々のヒット曲を生みだしていきます
寂しさを紛らわすように、エルトンはドデカい眼鏡とド派手な衣装に身を包む

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そんなエルトンに目をつけたのが、ジョン・リードでした
ジョン・リードのセックスを本物の愛だと信じてしまう
彼にマネージャを頼み、何もかも彼に言われるまま
高級車に宝石の購入、豪邸でのパーティ、アルコールとコカインの過剰摂取
ついに身体も心も病んでしまい自殺未遂してしまう

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ジョン・リードとの関係を見かねたバーニーは
故郷の農場に戻って昔みたいにふたりで曲を作ろうと誘います
しかしエルトンは聞く耳をもたず、バーニーはひとりで田舎に帰ることにしました
「Goodbye Yellow Brick Road」(黄色いレンガ道)を叩きつけて
♪~You can’t plant me in your penthouse
♪~I’m going back to my plough
君は僕をペントハウスに植えることはできない
僕は自分の来た畑に帰るよ

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バーニーが去ってからは作曲も、ジョン・リードとの関係も上手くいかず
1975年にはジョン・リードとの愛人関係を解消
(横領が発覚する1998年までマネージャーは継続)
孤独だったエルトンは音楽エンジニアのドイツ人女性と結婚しますが
4年で離婚、ますますコカインに溺れていくのです

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そしてマディソン・スクエア・ガーデンのコンサートを控えたエルトンは
コカインのしすぎで鼻血を出し倒れ込んでしまい
ステージ衣装のままタクシーに乗り込み黄色いレンガ道を進むのです
(辿り着いたのは更生施設)

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そこからは
1988年、ゲイであることをカミングアウト
1990年、リハビリによりアルコールとドラッグから立ち直る
1993年、カナダ人映画製作者デービッド・ファーニッシュさんと知り合い交際
2005年、英国市民パートナーシップ制度が施行
2010年、代理母出産によりザカリーくん、2013年イライジャくん誕生
2014年、デービッド・ファーニッシュさんと同性婚
現在は家族4人、幸せに暮らしている

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この映画は音楽的な感動を訴えるというより
「最も偉大なシンガー」エルトンの成功の影にもこんな苦悩があり
「普通と違うことに悩んでいる」「生きづらくて苦しんでいる」
LGBTの人々にも「いつか幸せになるチャンスがくる」という
エールなのだと思います
大切なのは「自分で自分を愛すること」に気が付くこと

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それにしてもエルトンを演じたタロン・エガートン
「sing」のゴリラでもエルトンの「I'm Still Standing」を歌っていましたが
本当に歌も演技も上手いですね、アカデミー男優賞モノだと思います

そしてエルトンの幼年期を演じた子役がびっくりするくらい激似(笑)
エンドロール後の、本人と劇中の姿の比較写真が楽しめました

 

 

【解説】KINENOTEより
グラミー賞を5度受賞したミュージシャン、エルトン・ジョンの半生を綴った音楽伝記映画。両親から満足な愛情を得られずに少年時代を過ごしたエルトン・ジョンは、やがて人並外れた音楽の才能を開花させ、伝説的ロックミュージシャンへの道を駆け上がる。出演は「キングスマン」のタロン・エガートン、「リヴァプール、最後の恋」のジェイミー・ベル、「ジュラシック・ワールド/炎の王国」のブライス・ダラス・ハワード。監督は「ボヘミアン・ラプソディ」で製作総指揮を務めたデクスター・フレッチャー。