潮騒(1975 昭和50)

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「少女の目に矜(きょう)がうかんだ

 自分の写真が新治を守ったと考えたのである

 しかしそのとき若者は眉をそびやかした

 彼はあの冒険を切り抜けたのが自分の力であることを知っていた」

 

 

吉永小百合浜田光夫 1964 昭和39)版は見ています

どちらも昭和を代表する超アイドルのセミヌードがウリですが(笑)

私はこちらの百恵ちゃん版のほうが

島”という閉塞感がよりわかりやすく、よかったかも

 

誰にでも「地元愛」はあるけれど

島”で生まれ育った人間の「島愛」にはかなわない

困ったときには助け合い、誰もが家族のような付き合い

そのかわりプライバシーはありません

 

お家のお財布状況も、怪我や病気も、子どもの成績も丸わかり

話題といったら結婚や法事という冠婚葬祭

そしてなにより、みんなを騒がすのは男と女のスキャンダル

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伊勢湾に浮かぶ小さな島

水道はなく、湧水を汲むのが女たちの仕事

そこに桶でうまく水を運べない見知らぬ娘

初江(山口百恵)がいました

 

新治(三浦友和)は、母親と小学生の弟を養う貧しい漁師

桶を倒してしまった初江を助けたのをきっかけに

お互い心惹かれてしまいます

 

初江のことはすでに島中の男の話題になっていました

島一番の有力者宮田の娘で、跡継ぎの息子が死んでしまったので

宮田が養子先から呼び戻したそうです

独身男たちは初江を狙いますが

すぐに宮田に継ぐ名家の息子安夫と、初江の縁談が持ち上がります

そして時を同じくして灯台長の娘、千代子が東京の女子大から帰ってきます

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若い頃の三浦友和さん、可愛いですね(笑)

千代子はライターをプレゼントしようとしたり、新治の気を引こうとしますが

嵐の夜、監的哨から出てきた新治と初江の姿を見かけたことを宮田に告げ口します

そのことは一瞬で島中の噂になってしまいます

小学生まで「おめこ」「おめこ」と連発する始末(笑)

 

宮田親父は怒り、新治の母は息子の汚名を晴らすため宮田に直談判に行き

灯台守の嫁も、あらぬ噂は娘が流したものだと宮田に直談判に行き

 

新治と初江の夫候補である安夫は大型漁船で島を出ることになります

一方初江は海女として働き始めますが、新治の母とはぎくしゃくした関係のまま

そこで海女のボスが、「おっぱい見せ比べをするぜよ」と提案します


おっぱいを見ただけで処女かどうか判るのが海女のボスの能力なのか(笑)

ついでに収穫争いの景品のバックを初江が新治の母にプレゼント

めでたくふたりは仲直り

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そしてある大しけの夜、新治が命綱を巻いて荒海に飛び込み

船の遭難から救ったことから宮田親父は新治と初江の結婚を許します

宮田親父は新治と安夫どちらが初江の夫にふさわしいか選ぶために

ふたりを同じ船に乗せたと告白します

娘の婿に相応しいのはお金でも、家柄でもない、男気なんだと

親父、本当はいい奴じゃん(笑)

 

晴れて結婚したふたりは、新治がはじめて初江を見た時神社をお参りしたように

ふたりで揃って神社にお参りしました

愛を信じる女と、自分の力を信じる男

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田舎の暮らしって、いくら封建的でも

人間関係や男女の関係でモメたとしても

妥協してうまくやっていかなきゃいけないもの

それがDNAにも刻み込まれている

 

百恵ちゃんの演技はまだまだ未熟でしたが(笑)

単なるアイドル映画では終わらないものがありました

 

 

【解説とあらすじ】KINENOTEより

三島由紀夫の同名小説の4度目の映画化。美しい海の大自然を背景に、若い男女の愛を描いた青春映画。脚本は須崎勝弥、監督は「伊豆の踊子(1974)」の西河克己、脚本も同作の萩原憲治がそれぞれ担当

伊勢湾の湾口にある歌島は人口千四百、その殆んどが漁師と海女である。新治はまだ18歳。彼は一昨年、中学を出るとすぐ十吉の船に乗り込み、母と弟の生計を助けていた。彼がその見知らぬ少女と会ったのは夕暮の浜でだった。額は汗ばみ、頬は燃え、寒い西風に髪をなびかせながら、少女は暮れていく西の海の空を見つめていた。だが、新治はその顔に見覚えがなかった。翌日、新治は十吉から、昨日の少女は、村の金持、宮田照吉の娘で初江といい、照吉は一人息子に死なれたために他所に預けておいた初江を呼び戻し、島で婿を取らせるらしい、という事を知らされた。四、五日後、強風のために休漁した新治は、山の観的哨跡で道に迷っている初江に会った。若い二人はすぐに意気投合して、噂好きの村人から避けるために、この観的哨跡を二人の秘密の場所とした。給料が出た日、新治は初江の入婿に安夫がなる、という噂を聞いた。暗い心を抱いて家へ帰った彼は、給料袋を落とした事に気づき、浜へ探しに行くと、初江がその給料袋を拾って持っていた。新治は安夫との噂の事を初江に問い正すが、初江は笑うばかり。新治は、自分の唇をそっと初江の唇に触れさせた。二人が会えるのは、休漁の日、観的哨跡でだった。ひどい嵐の日、新治は観的哨跡で初江を待っているうちに眠ってしまった。やがて、フッと目をさました新治の前に固い小さな乳房の初江が立っていた。お互いに裸になる事で、二人は羞恥心を消そうとした……。寄りそいながら石段を下りる二人の姿を、新治に好意を寄せている千代子が見ていた。やがて村中に広がった噂は、二人の仲を引きさいた。新治と安夫は、島の青年の憧れの的である日の出丸に乗り込み訓練を受ける事になった。初江の事で対立しあう二人の青年を乗せて、日の出丸の航海が終りに近づいた頃、暴風雨にあい船は大海にのまれそうになった。命綱を身体に巻きつけた新治は、浮標めがけて、真暗な荒海に飛び込み、見事、災難を防いだ。この事が初江の父・照吉の気持を軟化させ、二人の交際を認めるようになった。灯台で寄りそう二人は幸福だった……。