明日に向って撃て! (1969)

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♪Raindrops Keep Falling On My Head♪

 

原題は「BUTCH CASSIDY AND THE SUNDANCE KID」
ブッチ・キャシディサンダンス・キッド
同じアウトローの逃避行を描いた1967年の
「BONNIE AND CLYDE」(ボニーとクライド)と
邦題もラストも似ているけど

ボニーとクライドが仲間に裏切られ
嵐のような銃弾を浴びて無残に死んでいったのに比べ

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ロイ・ヒルは中年に差し掛かった伝説の列車強盗の
時代の移り変わりに追いつこうとするノスタルジー
少年のような瑞々さで青春映画のように描くことに成功
持ち前のセンスのよさで、オープニングのレッドフォードの登場から
ラストの騎兵隊の待つ広場に飛び出すストップモーションまでかっこいい

同じくブッチとサンダンスの強盗団を描いた
サム・ペキンパーの「ワイルドバンチ」(1969)は
強盗だろうが善人だろうが子どもだろうが
死んだらおしまいという残酷

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なんでも、ペキンパーが「ボニーとクライド」のラストシーンを作り上げた
アーサー・ペンに相当な対抗意識を燃やしてしまったせいで
あんな殺戮西部劇になったそうです(笑)

私は「明日に向って撃て!」「ワイルドバンチ」どちらのアプローチも好きですが
その年のアカデミー賞の対抗馬が「真夜中のカーボーイ」「勇気ある追跡
イージーライダー」そして「Z」(笑)

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だけどバカラックが音楽賞なのは納得だけど
歌曲賞に「うわさの男」(真夜中のカーボーイ)と
「ワイルドで行こう」(イージーライダー)が
ノミネートもされていないのはおかしい

こんなふうに1本映画を見るたび、ウィキペディアとか読んで
あれこれ屁理屈こねるからレビュー書くのが遅くなるのね(笑)

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サンダンスは早撃ちの有名人で
ブッチは盗賊団の仲間たちに裏切られそうな落ち目のリーダー

往復列車の強盗計画で行きは成功したものの
帰りは爆弾を使い過ぎて札束まで吹っ飛ばしてしまいました
頭にきた鉄道会社の若社長は、最強の殺し屋軍団を雇い
徹底的にふたりを追わせることにします

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ふたりはサンダンスの恋人で女教師のエッタの家に逃げ込み
追っ手から逃れるため、ニューヨークで豪遊してから
ボリビアに向かうことにしました

自転車って時代の移り変わりの、象徴のひとつ
このポール・ニューマンキャサリン・ロス
B.J.トーマスの歌う「雨にぬれても」をBGMに自転車のふたり乗りも
映画史に残る名シーンのひとつ

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エッタはサンダンスの女だけど、どう見てもブッチのとのほうが親しい
それにサンダンスが嫉妬する様子もなく、「くれてやる」とまでほざく(笑)
この不思議な三角関係は、それだけサンダンスはブッチのことを信頼していて
ふたりの友情がたったひとりの女で揺るぐことはないことを
表現したかったと思います

しかしやってきた新天地は家畜しかいないド田舎でした
結局、ブッチとサンダンスは銀行強盗に戻るのですが
「強運」がそう長く続くはずがない

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そして強盗としてしか生きれないふたりといても
幸せになれないと感じたエッタはさっさとアメリカに帰ります
こういうときの女の決断は早い(笑)

そしてアルパコ鉱山の給料袋を奪ったあと寄った宿で
その宿の少年が鉱山の焼き印のついたラバに気づいてしまいます
警察隊と騎兵隊が駆け付け完全に包囲されてしまうブッチとサンダンス

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建物の中に逃げ込んだものの、絶望的な状況
そんな中でもブッチはサンダンスに次の計画を打ち明けます

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明日に向って撃て!」もだけど「ワイルドバンチ」だけど
真夜中のカーボーイ」もだけどこういう記憶に残る
印象的なラストシーンで、余韻に浸れる映画は本当になくなったな

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ブッチとサンダンスはオーストラリアの生活の夢を見ながら
銃弾が待ち受ける中、飛び込んで行ったのでしょう

 


【解説】allcinemaより
19世紀末の西部史に名高い、二人組の強盗ブッチとサンダンスの逃避行を、哀愁とユーモアをこめて描く。列車強盗としてならしたブッチとサンダンス。しかし、近代化に向かう時代に、彼らの生き方はあまりにも旧弊だった。新たな夢を求めて、二人は南米ボリビアへと旅立つが……。世が世だっただけに当時“アメリカン・ニュー・シネマ”の傑作と謳われたが、この作品は断じてそうではあるまい。ストーリーの展開としてはそうかもしれないが、あらかじめ失速する事が約束されている他の“ニュー・シネマ”たちとはあまりにも違いすぎる。ロマンティックすぎる、美しすぎるのだ。B・バカラックのメロディに乗せて、懐古趣味すれすれで描かれる在りし日の西部。純然たる青春映画であり、ウェスタンなのだ。レッドフォード、ニューマン、ロス、この三人の輝きと、ジョージ・ロイ・ヒルの斬新な映像。まぶしいばかりの傑作だ。その後のエッタをキャサリン・ロスが再び演じるTVムービー「続・明日に向って撃て!」と、若き日のブッチとサンダンスを描いた「新・明日に向って撃て!」の2本の姉妹編が存在する。