人生模様(1952)

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原題は「O.HENRY'S FULL HOUSE」(O・ヘンリー劇場)
アメリカの短編小説家、O・ヘンリーの作品から代表作5作を選び
オムニバス形式で映画化したもの

各話をつなぐナレーションに迎えたのは
ノーベル賞(1962)作家のジョン・スタインベック

各話ともコンパクトなので、とにかく見やすい、わかりやすい
そして見終えたあとには「自分も善人になろう」と
誓ってしまいます(達成はしないがな 笑)

 

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第1話 「警官と聖歌」監督:ヘンリー・コスター

紳士気取りのホームレス、ソーピイ(チャールズ・ロートン)は
酷寒の冬を留置場で過ごしたいため、ケチな泥棒に無銭飲食
若い女性につきまとい・・するにも関わらずなかなか逮捕されない

ブレイク前のマリリン・モンローを拝めるのは、お得感いっぱい

 

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第2話 「クラリオン・コール新聞」監督:ヘンリー・ハサウェイ

刑事のバーニイは、殺人事件の犯人が
幼なじみのジョニー(リチャード・ウィドマーク)だと知り
逮捕しようとしますが、過去に多額の借金を
立て替えてもらった借りがありました

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手塚治虫の漫画でお馴染みの悪役「スカンク草井」は
このリチャード・ウィドマークがモデルなんだそうです(笑)

 

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第3話 「最後の一葉」監督:ジーン・ネグレスコ

ジョアンナ(アン・バクスター)は、男に捨てられ
冬の極寒を彷徨って肺炎を患い、生きる希望を失っていました
そして窓の外の蔦の葉がすべて落ちたら自分も死ぬと思い込んでいます

しかし嵐の夜が明けても最後の一葉は残っていました
それは、いつか傑作を書いてみせると豪語していた
売れない老画家のベアマンが書いたものでした
姉のスーザンはベアマンを「偉大な画家」と称えます

 

第4話 「赤い酋長の身代金」監督:ハワード・ホークス

泥棒サム(フレッド・アレン)と相棒のビル(オスカー・レバント)は
金持ちの子ども誘拐して、身代金で稼ごうと計画します

これ絶対「ホームアローン」の元ネタですよね(笑)
間抜けな泥棒が、とんでもない悪ガキに振り回されて四苦八苦
身代金どころか、親元に帰ってくれて助かったというお話

ちなみにお人好し顔の誘拐犯のひとり、オスカー・レバントは
実は人気クラシックピアニストなんだそうで(笑)
「巴里のアメリカ人」(1951)や「バンド・ワゴン」(1953)に
主演して腕前を披露しています

 

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第5話「賢者の贈り物」監督:ヘンリー・キング

新婚のデラ(ジーン・クレイン)と、ジム(ファーリー・グレンジャー)は
クリスマスイブにお互いのプレゼントを交換しようと考えます

そして夫は、妻の長くて美しい髪が映える髪飾りを
妻は夫の家に受け継がれている大切な時計のバンドを選びます
だけど自由になるお金は、お互い小銭だけ

 

やはり「賢者の贈り物」がラストを飾るのに相応しい
使いつくされた古いテーマだけど
本当に大切なのは”モノ”ではない
”心”なんだと何度でも教えてくれます

 

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プレゼントは無用になったけど、笑い出して抱き合う夫婦
ふたりはこのことを永遠の思い出として語り合うことでしょう

そしてこの5つの作品に共通することは
貧しい人々を扱っているということ
どうしようもない貧困の中、人生の選択を迫られる

そんな苦しい時こそ大事なのは、思いやりであり
ユーモアであり、”粋なはからい”
決して貧困や不幸を、誰かのせいにはしないのです

しかも豪華なキャスト、豪華なスタッフ
こんな名作があったとは!

お薦めです

 


【解説】allcinemaより
短編小説の神様O・ヘンリーの代表作5篇を当時のFOXの一線級がオムニバスで映画化。第1話「警官と讚美歌」は、気位高い浮浪者が避寒対策に無銭飲食などをして留置所入りを目指すも、ことごとく失敗するという話で最後に皮肉な落ちがある。H・コスター演出で、主演のロートンがさすがにうまい。第2話「クラリオン・コール新聞」は刑事とギャング(ウィドマーク)の旧友同士の義理人情を描く、H・ハサウェイ作品で出来は凡庸。第3話、御存知「最後の一葉」は監督ネグレスコの美術センスが効いて乃第点。ヒロインにA・バクスター。4話目は「赤酋長の身代金」。大地主の息子を誘拐したら手のつけられぬイタズラ坊主でのしをつけて返す破目に……というホークス的ドタバタは空回り。で、第5話、言わずもがなの「賢者の贈り物」。貧しい若夫婦にF・グレンジャーとJ・クレインが扮し、やっぱり泣かせます。監督はH・キング。情話ものを得意とする人がまず結果を出した感がある(当たり前だよね)。