原題は「THE SEARCH」(検索)
邦題は杜甫の「春望」の最初の一句、”国破れて山河在り”
(敗戦で破壊されたが、自然の山や河は昔どおり残っているの意)
からと思われますが、映画の内容とはあっていません(笑)
中盤までは、記録映画ではないかしら?と思うくらい
米英軍の空襲によって荒廃した街でロケをした映像に
子どもたちの姿はかなりリアルで
当時のハリウッドでは、ジンネマンにしか
撮れなかった作品だと思います
またウィーン生まれのジンネマンは
アウシュビッツで両親を亡くした過去があり
終盤はハリウッド好みの”アメリカだけが正義”的な
お約束の展開になっていくのは違和感がありますが
たった一枚のダチョウの写真に映っている鉄条網が
アウシュビッツ収容所を想起させるなど、簡潔な演出は見事で
センチメンタルだけで終わらせない力量はさすがなもの
第二次世界大戦直後、米国占領下のドイツ
国連の児童保護収容所に送られてくる戦争孤児たち
収容所から救出されたり、浮浪児だったり、その状況はさまざま
そのなかにひとり、口の利けない少年がいました
唯一話せる言葉はドイツ語の「わからない」だけ
健康診断のため救急車に乗せられる保護収容所の子どもたち
だけれど戦時中、救急車はナチのガス室に使われていたため
子どもたちはパニックになり救急車から逃げだします
カレルと親友は追っ手を逃れて川に飛び込み、親友は溺死
カレルの帽子は流されてしまいました
一方で、チェコスロヴァキア人の女性が
アウシュビッツではぐれた息子、カレルを探しています
手掛かりはお気に入りの手編みの帽子
ついに、ある保護収容所で
カレルと名乗るユダヤ人の少年を見つけますが、別人でした
少年は「口の利けない子」カレルの代わりに返事をしてなりすまし
(生きるためカトリック教徒を装い)聖歌隊に入っていたのです
そして「口の利けない子」の記録から、カレルは溺死し
母親は遺品として帽子で帽子を受け取ります
ショックを受けている母親に保護収容所の職員は
元気になるまでここで働くように薦めます
月日が経っても、やっぱりカレルが死んだと諦めきれない
母親は再び息子を探す旅に出でるのです
ここらへん、日本人にはかなりドツボな展開で(笑)
高畑勲×宮崎駿のテレビアニメ「世界名作シリーズ」も
かなりこの作品の影響を受けているような気がします
瓦礫の山に空腹で隠れていたカレルは
若いアメリカ兵のスティーヴンスン(モンゴメリー・クリフト)に保護され
英語を教わりながら徐々に心を開いていきます
そこでスティーヴンスンはカレルをアメリカに連れて行こうと考えます
ここでヨーロッパ映画なら離れ離れになったまま
母親が野垂れ死ぬくらい不幸に終わるところですが(笑)
もちろんそうはなりません
記憶を取り戻したカレルは、無事母親と再会します
スティーヴンスンとの別れのシーンや、お涙頂戴のクサイ演出はなく
あっさりしたラストは、せめてものジンネマンの反抗だったのかな
(それでも泣けるんだけどね 笑)
しかし、少年カレルを演じたイワン・ヤンドル(チェコの子役)は
高く演技を評価されたものの、そのため当時のチェコでは迫害され
アル中で40歳で死亡したそうです
ジンネマンは自伝の中で彼の起用を後悔したそうです
(アメリカ人の子役を使えばよかった、ということでしょうか)
”戦い”がひとつも出てこないけれど、これも戦争映画
このような名作が忘れ去られてしまわないよう
もっと見る機会ができることを願います
【解説とあらすじ】KINENOTEより
スイス、チューリッヒのプレゼンス・フィルムがMGMに提供した1947年作品で、製作は「ジープの4人」のラザール・ベクスラー。事実に基づいてリヒアルト・シュヴァイツァ(ジープの4人)とダフィット・ヴェヒスラァが脚本を書き下ろし(48年アカデミー賞)、「地上より永遠に」のフレッド・ジンネマンが監督した。撮影のエミル・ベルナ、作曲のロバート・ブランは「ジープの4人」と同じスタフ。出演者は「地上より永遠に」のモンゴメリー・クリフト、舞台出のアリーン・マクマホン、「北の狼」のウェンデル・コーリー、メトロポリタン・オペラのスタア、ヤルミラ・ノヴォトナ、この映画のために発見されたチェコの少年イファン・ヤンドル(48年・アカデミー特別賞)、メァリイ・パットンらである。
第2次大戦直後、アメリカ占領下のドイツ。この地の国連救済所にナチの収容所から救い出された一群の子供たちが送られて来た。かれらの中に何を聞かれてもドイツ語で「知らない」と答えるだけの少年がいた。彼はカレル・マリク(イファン・ヤンドル)といい、チェッコの幸福な家庭に育った。だがナチ占領下に家族は離散し、カレルも母のハンナ(ヤルミラ・ノヴォトナ)から無理やりに引きはなされた。カレルはその悲しみに心はうつろとなり、ついに喋ることも忘れてしまったのだ。特に休養を要するカレルらは、赤十字の病院車で特別収容所へ送られることになった。だがかれらは病院車に乗れば毒ガスで殺されるというナチ時代の経験で、恐怖にかられ途中脱走を計った。カレルはラオウルという少年と河に逃れ、ラオウルは溺死したが、カレルは帽子を流しただけで無事身をかくした。その頃、カレルの母ハンナは愛児をたずねてあてどもない旅を7ヶ月もつづけていた。夫も娘もナチに殺され、のこされた希望はカレルだけであった。一方、ひとり放浪するカレルは、アメリカ兵ラルフ・スティーヴンスン(モンゴメリー・クリフト)に拾われた。初めカレルは激しく抵抗したが、ラルフの温い世話で次第になついていった。愛児を探しあぐんだハンナは国連救済所を訪れ、そこの世話係マレイ夫人(アリーン・マクマホン)から河で発見されたというカレンの帽子を見せられ、気を失って倒れてしまった。カレルは次第に正常さをとり戻しラルフが根気よく英語を教えたので簡単な会話もできるようになった。そこへラルフと同居している兵隊フィッシャーの妻子が米国からやって来た。カレルはフィッシャー一家のむつまじい様子を見て、自分にも母がいたことを想い出し、一途におもいつめて母を探しに家をとび出した。だが翌日、探しに出たラルフはカレルを見つけ、母親は死んだのだといいふくめ、米国へ一緒に連れ帰る約束をした。ハンナはマレイ夫人たちの親切な介抱で元気をとり戻し、そこの子供たちの世話をしていたが、殆どのぞみがないと知りつつも再び愛児を探す旅に上らずにはいられなかった。ハンナが停車場へ向ったすぐ後に、カレルがラルフに伴われて救済所へやって来た。ラルフは明日帰国するので、カレルに渡米許可がおりるまで預ってもらうためだった。マレイ夫人はカレルを見て、ハンナの愛児であることを知り、停車場へ駆けつけた。列車は丁度出発した後だったが、大ぜい降り立った子供たちの列の中にハンナの姿があった。ハンナは悲惨な子供たちの姿を見て救済所に止まる決心をしたのだ。カレルが母親と無事再会できたことはいうまでもない。